わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫) [Kindle]

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  • イギリスのヘールシャム地方で友人たちと青春時代を過ごした女性キャシー。彼女が語る過去は、ちょっと訳アリっぽい。

    「介護人」、「提供者」、「保護者」と呼ばれる人々が何人も登場するが、どんな職業なのか、詳しい説明はない。また、キャシーたち学生は寮で集団生活をしているのだが、その学生生活もなにか妙だ。彼らはどこから来たのか、卒業してどこへ去っていくのか。やたらとセックスと死が身近なのも気にかかる。

    なんとなく不穏で違和感だらけ。そんな感想を持ちながら、読み進めていけば、隠されたテーマにはなんとなく想像がつく。

    が、本作品のジャンルをSFミステリーとするにはちょっと違う。また、人類の未来と奢りを描いた社会派小説でもないし、もちろん若者の友情と恋愛を描いた青春小説でもない。

    作品ごとに全く違うジャンルに挑み続けるノーベル賞作家の新しい作品としか説明できない。これこそがカズオ・イシグロっぽさだ。

  • 「表現を記録として残すこと」が人間らしさだと思われてたのかしら。

    サッカーでゴールを決めて得意になること、マグカップにお茶を入れて夜中に2人で話すことは人間らしさではなかったのかな。

    動物の身体の一部が金属になっている絵を描くことは、主人公たちの境遇を表現しているようだった。
    金属は取替えできるし、人間らしさから遠いもののはずだけど。

    テレビ番組でAIが大喜利を作っているのを見たけれど、AIは人間じゃないんだよね。

  • 元々ドラマを見たことがあって大まかな内容は知っていたが、小説で読んでみるとあの独特な雰囲気が蘇ってきた。生徒たちは悲しむわけでもなく、ショックを受けるわけでもなくなんとなく自分の将来を知っていて、彼らを同情するには違うと思った。先生が生徒に対して恐怖心を持っていながら育てるのも胸が痛んだ。

  • 主人公キャシーによって、なんでもない学校の日常が淡々と語られていく。ただそれだけで、起伏が無いなあ、と思っていたら突然出てくる「提供者」「ポシブル」という耳慣れない言葉。気になりながらも、なかなか全体像が現れて来ず、ようやく最終章で、ヘールシャムの生徒たちは臓器を提供するためのクローン人間であることが(そうだと明示されてはいないけど)理解できる。
    途中、じれったく思いながら読み進めたが、この物語は主人公がヘールシャムの出身者で語られ、最後の最後まで全体像を語らないことに意味があるのだ、と感想を抱いた。ヘールシャムの生徒達は結局は臓器を提供する提供者であり、結婚をして家庭を持ったり、提供者・介護者以外の仕事に就くといったことはない。生まれた時から可能性は閉ざされており、だからこそキャシーはその事実を嘆くこともない。そしてヘールシャムの教師たちは、時に生徒たちに向き合うことができず去っていく。こう書くと閉塞感しか見えないが、作中の登場人物は感情豊かに活動し、笑い、怒り、悲しむ。将来は提供者しかないが、その運命も彼らにとっては人生の一部で、いたずらに嘆かないといけないものではない。

    もしクローンができて、作中の提供者というシステムができたらどうなるのか、という思考実験にも見える。しかし私は、この物語は現在進行形で起こっていると考えている。例えば、チョコレートを食べるためにはカカオが必要だけど、そのカカオは児童労働によって栽培・収穫されていること、携帯電話を作るために、アフリカで紛争が起きていること。
    作中には提供を受ける人々がどんな様子なのか、どんな考えを持っているのかは書かれていないが、今、私達がチョコレートを食べて携帯電話を利用しながら、児童労働や紛争についてどれくらい意識的か考えると、だいたい想像はついてしまう。問題意識を持っている人は居るけど、大半は意識をしていない。意識しないで済むような仕組みが構築されてしまっている。

    本書は2回読むことを勧める。全てがわかった後で見えるキャシーの語り口は、何かどうしても悲しいものを感じてしまい、1回目と同様に読めなかった。

  • 少年少女のエピソード自体は自分の少女期にも心当たりがあるような他愛もない出来事が続く。しかし散りばめられた疑問がどういう意味なのか、どんな環境でどんな未来が待ち受けているのかドキドキしながら読む。途中、ああそういうことなのかという部分では悲しいような納得するような不思議な気持ちになる。

  • タイトルからは想像できない遺伝子工学がらみの未来的なストーリー。
    ちょっと日本語訳がぎこちなくてもったいない。

  • ずしり。作品が纏う緊張感がたまらなく魅力的。

    もし、、、彼がこの国の言葉で書く作家になっていたらどんな日本語を綴ったのか。。。

    一方で、この作品の翻訳は素晴らしいかった。

  • 映画のアイランドのような物を想像してたけど、もっと静かで心の物語でした。思っていたよりいい意味で裏切られたという感じ。突然の事実をそらされるより、残酷ではあるけど。

  • とても面白かった。登場人物たちが子供の頃は無意識に、大きくなってからは自らの役割として淡々と己の境遇を受け入れているという世界たリアル。これ少年漫画だったら自己主張を声高に叫び自由を求め制度と戦うとこだよ。あと生殖ってやはり生物としての骨幹だなと感じました。

  • 人間関係の描写が巧みなため、没入感が序盤から強い。物語の世界線もあって、読了ごも世のあり方の是非に思いを巡らされる。

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著者プロフィール

カズオ・イシグロ
1954年11月8日、長崎県長崎市生まれ。5歳のときに父の仕事の関係で日本を離れて帰化、現在は日系イギリス人としてロンドンに住む(日本語は聴き取ることはある程度可能だが、ほとんど話すことができない)。
ケント大学卒業後、イースト・アングリア大学大学院創作学科に進学。批評家・作家のマルカム・ブラッドリの指導を受ける。
1982年のデビュー作『遠い山なみの光』で王立文学協会賞を、1986年『浮世の画家』でウィットブレッド賞、1989年『日の名残り』でブッカー賞を受賞し、これが代表作に挙げられる。映画化もされたもう一つの代表作、2005年『わたしを離さないで』は、Time誌において文学史上のオールタイムベスト100に選ばれ、日本では「キノベス!」1位を受賞。2015年発行の『忘れられた巨人』が最新作。
2017年、ノーベル文学賞を受賞。受賞理由は、「偉大な感情の力をもつ諸小説作において、世界と繋がっているわたしたちの感覚が幻想的なものでしかないという、その奥底を明らかにした」。

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