本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
Amazon.co.jp ・電子書籍 (450ページ)
感想・レビュー・書評
-
科学発展の裏側にある日陰の世界を表現した書として。
SFとしてでているが、公害やら、今のリチウム電池の取得で水不足が生じた世界等、科学の発展の裏で虐げられる人は現実社会でもある話。
だからこそのビジネスと人権だし、エシカルという概念が大切なのだと思う詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
何も事前情報なしで読み始めて、途中で何言ってるかわからなくなり、再度最初から読み直した。笑
そして、ネットで調べて情報を入れて再スタートしたという。。それくらい、衝撃的な内容であった。
ネタバレしたくないので、何も知らずに読んで欲しい一冊。とてつもなく、深く広く辛く考えさせられた。
でも、こんな世界が、近づいているのかもしれないと、薄寒くなった。 -
イギリスのヘールシャム地方で友人たちと青春時代を過ごした女性キャシー。彼女が語る過去は、ちょっと訳アリっぽい。
「介護人」、「提供者」、「保護者」と呼ばれる人々が何人も登場するが、どんな職業なのか、詳しい説明はない。また、キャシーたち学生は寮で集団生活をしているのだが、その学生生活もなにか妙だ。彼らはどこから来たのか、卒業してどこへ去っていくのか。やたらとセックスと死が身近なのも気にかかる。
なんとなく不穏で違和感だらけ。そんな感想を持ちながら、読み進めていけば、隠されたテーマにはなんとなく想像がつく。
が、本作品のジャンルをSFミステリーとするにはちょっと違う。また、人類の未来と奢りを描いた社会派小説でもないし、もちろん若者の友情と恋愛を描いた青春小説でもない。
作品ごとに全く違うジャンルに挑み続けるノーベル賞作家の新しい作品としか説明できない。これこそがカズオ・イシグロっぽさだ。 -
登場人物の誰にも、私の声は届かない。どうして、と問い掛けつづけても、誰も答えを教えてはくれない。届いたとしても、なぜそんなことを疑問に思うのかと聞き返されてしまう気もする。
トミーは純粋でまっすぐな質問をキャシーにぶつける。
「なあ、介護人にくたびれないか?おれたちはとっくに提供者だ。なのに、君はずっと介護人のままでいる。いいかげんにしてくれって思わないか。」
キャシーが介護人で居続けることを選ぶのは、提供者になることを恐れているからでも、なるべく長く生きたいからでもない。トミーにもキャシーにも、そんなことはそもそも思いつきもしない発想なのである。
介護人で居続けることは孤独で居続けること。提供者になることは使命を果たすこと。そんなはずない、と思う。やり方次第では、孤独から抜け出して、ふつうの人みたいに、友達と楽しく暮らせるはずだと。提供者にならないで済むのなら当然そのほうがいいと。しかし、彼らはそうしない。
わたしたちが寿命を自然の摂理として受け入れ(あるいは諦めて)、死への恐怖からなんとか自らを切り離して生活しているのと同じように、彼らにとってもまた提供者になること、そして、使命を果たして命を失うことは、拒む理由のない当たり前の未来なのである。だとしたら、ほんとうに彼らはマダムが言うように'可哀想'なのだろうか?では、100歳かそこらで死んでしまう私たちも誰かから見れば同じように'可哀想'なのだろうか? -
不完全ながらも完結した世界で生きる子供たち。無垢で幼く、それが時に痛々しく思えもした。
そういった純真な少年少女が育っている施設での青春が現実感を持って描かれる。
序盤からそこはかとなく、破滅の色は見えていたけれど、こういった秘密があるとは…。ホラーではないけれど、今まで読んだ本の中で、もしかしたら一番怖い物語かもしれない。
あらかじめ失われることが分かっている世界でどうしてこんなにも淡々と語ることが出来るのか。
主人公の、ひいては作者の精神力に畏敬を抱いた。
ロストコーナーのくだりは読み終えた後も強く心に残る。 -
とても面白かった。登場人物たちが子供の頃は無意識に、大きくなってからは自らの役割として淡々と己の境遇を受け入れているという世界たリアル。これ少年漫画だったら自己主張を声高に叫び自由を求め制度と戦うとこだよ。あと生殖ってやはり生物としての骨幹だなと感じました。
-
「表現を記録として残すこと」が人間らしさだと思われてたのかしら。
サッカーでゴールを決めて得意になること、マグカップにお茶を入れて夜中に2人で話すことは人間らしさではなかったのかな。
動物の身体の一部が金属になっている絵を描くことは、主人公たちの境遇を表現しているようだった。
金属は取替えできるし、人間らしさから遠いもののはずだけど。
テレビ番組でAIが大喜利を作っているのを見たけれど、AIは人間じゃないんだよね。 -
-
読む前は何も見てはいけない。少しでもネタバレがあると、面白さが損なわれる物語だと思う。
白黒の世界で漂って悲しい気分。 -
ミーハーな 私は 受賞した作者だからと
読んで みました。
はじめは なんだろう???
学生? 寮???
(日本ではドラマになっていたそうなので 皆さん周知のお話ですが 見ていないので はてなと 言う感じで 読みました)
読み進めて やっと 主人公たちは クローン人間で いつかは 誰かに その肉体を与えて そして 使命を終える存在であると わかりました。
多分 こういうことは 将来ありえそうですよね。
病気で どうしてもその部分を交換せねばならない けれど 他人から 拒絶反応とかもあるので もらえない、となると 自分の細胞から コピーして 造れば良い。
ひょえ~~ 細胞だけとか 組織だけとかを 作るならまだしも 人間を造っちゃって その人間を あっさりと 使ってしまう。。。
この本がミステリー?って はじめは 疑問でしたけど 読んでいくうちに こういう事って あってはならないけど ありえそうで 怖いなぁと 思いました。
まさに ミステリーでしたね。
登場人物の名前が カタカナなので 最初は 男女がわからず混乱して読みました(笑) -
最初からずっと一抹の物悲しさがあって、それが払拭されることはなかった。
-
久しぶりにこれだけの長編を読み始めたので、読破できるか心配だったが、あっという間に読み切ってしまった。
ものすごく衝撃的なシーンがあるわけでもどんでん返しがあるわけでもないのに、先が気になって仕方なかった。読み終わったときに、何とも言えない気持ちになった。
あえて言葉にするなら、やりきれなさと切なさ。
人間の複雑な心理描写や関係性、登場人物たちが成長していく様子がリアルだと感じた。美化されすぎることがなく、物語にざらつきを感じたところが好きだった。
特殊な環境で特別な存在として生まれてきた主人公たち。設定は興味深く、一種の思考実験のようでもあり、遠くない未来に起きうるかもしれない事象でもあった。そして、その事象に対して巻き込まれた登場人物たちは、各々が考える最善の行動を選んできたように思う。たとえ他人に共感してもらえなかったとしても。誰が正しい正しくない、という話ではないと思った。皆、それぞれに一生懸命に生きていた。だからこそ、やるせなさが残るんだと思う。
風景の描写がどこかのどかで美しいものが多く、それが登場人物たちが置かれた過酷な状況と対比されて、とても切なかった。全編通して曇り空の隙間からあわく光が漏れているような、そんな印象だった。 -
主人公のキャシーが語り手のような書き方をしていて、外界と隔てられた施設で育った少年と少女の生活を振り返る形で淡々と語られていた。
この話で強く印象に残ったのは、出てくる登場人物たちが暮らしていた施設での残酷な真実を知り抵抗をしようとするが、それはわずかな猶予を得るという根本的な解決にはならないことであり、無意識のうちに抗えなくなっているという恐ろしさが存在していた。
読んだ後に単純な満足感だけでなく何か心にのしかかるようなものを感じる作品だった。 -
冒頭から女性の語りで展開されるのだけれど、どういう話か? ってのがなかなかつかめない。読み手にずっと不安感を抱かせるような書きぶりがうまいとは思う。ただ秘密の部分がわかってもすっきりした気分にはなれなかった。
-
カズオ・イシグロ独特の静かな音楽が流れるような感じがする物語。
臓器提供の為に生まれた子どもたちが臓器提供して使命を果たすまでの話。
物語の内容を面白いと思いながらも、登場人物に感情移入できないのは、外国文学(外国人が主人公)だからではないからだと思う。
もし、小説のような世界があったとしたら、臓器提供を受ける側の人間だと思っているからで、する側だと思っていないからだと思う。また、臓器提供する人がいると知りながらエミリ先生やマダムのように何かするのではなく、見て見ぬふりをしてしまう側だからだと思う。
先進国で何不自由なく暮らしている自分がちっぽけに思えてきた。
著者プロフィール
カズオ・イシグロの作品
本棚登録 :
感想 :
