- 本 ・電子書籍 (450ページ)
感想・レビュー・書評
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デストピア小説、というジャンルを意識し始めたのはいつ頃からだったか。かつての「ユートピア」はどこへいったのだろう。極限の管理社会を描いたこの小説は、あまりにも生々しくリアルだ。加えて今、ウクライナ侵攻に関して事実無根の捏造をためらいなく主張する国の狂気と妄想を目の当たりにして、背筋が凍る思いがする。
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“ビッグブラザーがあなたを見ている“
『過去をコントロールするものは未来をコントロールし、
現在をコントロールするものは過去をコントロールする』
<二重思考> <2分間憎悪> <記憶穴>
トマス・ピンチョンが解説。
ずっと積読だったけど、やっぱり面白かった。
思考停止を強いる拷問のところはちょっと辛い。 -
独裁専制国家に生きるウィンストンはその体制に疑問を抱きながらもそれに従って生きていたが、ジュリアとの出会いをきっかけに国家叛逆に進もうとする。
世界に名だたるディストピアSFの金字塔です。ようやくといった感じで読んでみましたが、これは心折れますね。もう少しほら、救いというか、明るい未来を見せて欲しかったと言うか。おかげでこの本に引きずられたようなひどい夢を何回か見ました。
さて、この本でとても読み応えがあったのはそのストーリーもそうなのですが、戦争や権力を再定義したパートで、あまたの独裁者や専制国家が権力を権力として保持したいがあまり貧困や憎しみ、そして戦争を道具としてきたのか、実にわかりやすく描けていたし、共産主義的な体制と富の占有、独裁がなぜ相性が良いのかなどが理解できてすごく勉強になりました。最後はもうこちらも泣きそうな展開で終わるのですが、解説を読むとストーリーが終わった後に実は展開があったことが示唆されているらしいことなど、読み方が難しい本だなあ、という感想も持ちました。
市民を抑圧し、富を収奪するような独裁国家というものは民衆の力によっていずれ倒されるのである。それは歴史が経験してきたことであって、一定の普遍性はありそうです。しかし本当にそうなのか、ということは、実は証明できることでもないのかもしれない。お隣の国では3代にわたって独裁が続いているけど、民衆の中にどれだけの革命機運があるのかわからないし、むしろ無さそうにも見える。また別の隣国では今のところ一党独裁が支持されているようだ。北の大国は戦争などやらかしてしまったので怪しいけど、プロパガンダが効いているのか国民の支持は高いらしい。まあ、かといって民主主義が安定かといえば全然そんなことはないので人間が安心して自由に平和を謳歌できる世界線というのは依然として見えないのだなあ。などと考えたりしました。今の世界とこれからの世界をどう捉えていくのか、重い課題をつきつける本で、やはり読み継がれる良書だと思いました。 -
■この本の評価
4.5/5(マイベストブック)
■この本の感想
言わずとしれたディストピアSFのベストセラー。
冷戦という歴史的バックボーンを持ち、行き過ぎた全体主義の危うさを描いた教科書的な作品です。
本書は3部に分かれていますが、抑圧、解放、そして洗脳と非常に起承転結のはっきりしている展開で読みやすいです。
また「全体主義」を、本書特有の「二重思考」「イングソック」などといった造語をもって、その本質を具体化している点で、とても難解ながらも、それが分かった時のスッキリ感と徐々に感じる後味の悪さが評価ポイントだと思います。
本書の本来の意図するところからは離れますが、
発想を発展させて。。。
例えば現代のソーシャルネットワークの発展というのが、個人の自由を解放するものなのか、あるいはアイデンティティを広げるものなのか、それとも「バズっている」という全大主義の波に取り込むのかという点で考えてみると面白いですね。
さらにサイエンスフィクションという観点でみると、ヒトの判断を超える人工知能や、膨大な情報を処理できる量子コンピュータの進歩は、本書内の監視社会を実現しうることから、「これら技術をどう使うか」という倫理面が浮き彫りになってくるのも面白いですね。 -
隷属は自由。ディストピアは実はユートピア。
常に監視され管理され、従うこと、考えないことを強いられる社会。
身体的に不自由や不満を感じることはあるものの、精神的には隷属することでむしろ自由を感じ満ち足りる。
自分の周囲を眺めると、所属する何か(社会とか、会社とか)に精神的に依存することで、思考停止し安穏と過ごしていると感じることがある。このような他者の状態を批判している自分自身はどうなのか。 -
1Q84しかり、伊藤計劃しかり、沢山の作家やアーティストに影響を与えている事だけはよく知っていた本作をようやく積読から解放できた。※時同じくしてサピエンス全史を読んでいたがこちらにも頻出
ビッグブラザー、テレスクリーン、監視社会といったキーワードだけは知っていて、いわゆるディストピア作品と聞いていたが正直作品の半分くらい拷問されっぱなしで読むのが相当しんどかった。
設定の細かさやフィクションでありながらリアリティのある社会構造、綿密に構想設定されているニュースピークという概念など、1948年に書かれたことを考えると驚異的かつ時代背景も踏まえて内容にも納得がいく。
読むのはしんどいが、次の展開が気になってしょうがなくなるグイグイ惹きこまれる作品だった。
著者プロフィール
ジョージ・オーウェルの作品





