一九八四年 (ハヤカワepi文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  •  新庄哲夫訳『1984年』を2010年に読んでいるが、電子書籍のセールになっていたため、新訳で再読。読みやすくなっていたと思う。訳者の後書きにあるように、長い間著者の意図と異なって空欄だった数式には答が入れられている。
     どれほどのディストピアで主人公が最後にどうなるかを知った上で改めて読んでみると、ごく少数の人間が安定して大多数を支配し続ける理論として興味深かった。なるほど「戦争は平和、自由は隷従、無知は力」なわけである。初読の際はテレスクリーンによる監視が印象的すぎたが、思考を言葉から制御していくニュースピークや、矛盾から無縁になれる二重思考、反逆者の存在を許さず人間を作り替える拷問など、細部まで決定的に異なる世界であることに興味を惹かれた。
     再度読んでもオブライエンは謎の人物で、彼がウィンストンを罠にかけるようなまどろっこしい近づき方をした理由がわからないし、ウィンストンが最後まで彼を友人と思い続けている理由もわからなかった。党は思考犯罪者を全員変革するほど暇なのか、それともウィンストンは特別だったのか。
     電子書籍版ではない紙本の方にはトマス・ピンチョンによる立派な解説が載っているようなので、ちょっとそれに目を通してみたくなった。
     後書きによると、この本は英国における「読んだふりナンバーワン」らしく、やはり一度は読んでおいて損はない小説なのだろう。もう一度くらい読んでみたい。今度はまた旧訳で?

  • 自由を享受することは、ある意味苦しいし、常に精神的な不安定さを伴うものだ。そうであっても、自由を希求し享受し続けなければならないのだ。

    面白い小説だ。先日読んだノンフィクション、エドワード・スノーデンの「暴露」に紹介されていていたのがきっかけで読み始めた。
    個人の行動が逐一監視され、可視化されてしまう社会を突き詰めていくと、このような世界になってしまうのだろう。最初自分が期待していた話の筋とは少し違うが、それでも面白い。全体主義社会の怖さがよく描かれている。「性的不自由はヒステリーを引き起こすのであり、ヒステリーは戦争熱と指導者崇拝へと変換できる。」なるほどその通りかもしれない。
    人間は言葉を使って思考する。ということは、使う言葉を統制する(作品中ではニュースピークへの移行が試みられている)ことで、思考を統制することもできるのか。現実的ではないのかもしれないが、たかが言葉、されど言葉である。

    多様性を受け入れる。これが現代社会の基本的な、そして目指すべき価値観であると考える。しかしながら社会に閉塞感が増してくると、そして人々の心に余裕がなくなってくると、マイノリティを排除する方向に向かいがちである。このことへの警鐘ともいえる作品であると感じた。

    話は変わるが、電子書籍での読書に少し限界を感じてしまった。軽く読み飛ばす場合は問題ないが、いい作品だと、途中でページを繰って読み返したくなることも多い。このような場合に電子書籍は不向きだ。
    硬い作品に少し疲れたので、いわゆるライトノベルに手を出したくなった。これは電子書籍で読みたい。それ以外は紙書籍に回帰しそうだ。

  • 現代は半分くらい、この小説のような世界になっていて悲しい。

  • ジョージ・オーウェルの代表作。『動物農場』でスターリンの社会主義独裁体制を風刺したオーウェルが、1948年に近未来の超統治国家を描いた作品。
    主人公のウィンストン・スミスは、オセアニアの真理省(ミニトゥルー)で働く39歳の記録官。日々、党の歴史を改ざんする業務を行っていた。
    世界はオセアニア、ユーラシア、イースタシアの三国に分かれており、それぞれが似たようなイデオロギーによる一党独裁体制を築いていた。
    オセアニアはビッグ・ブラザーを頂点としたイングソック(English Societyのモジリ=IngSoc)体制で、思想・言語などのあらゆる市民生活が党によって監視・管理されていた。
    この世界では、思考警察(ThinkPol)が双方向の映像・音声送受信機であるテレスクリーンによって市民の生活が監視されており、さらにニュースピークという言語によって、思考すら操作される。
    ウィンストンは、日々の仕事の中で党に対する疑念を抱き始め、真理省創作局の黒髪の女性ジュリアと出会い、思考犯罪行為を重ねていく。やがてウィンストンは党の高級官僚であるオブライエンと接触を持ち、反党組織である「ブラザー同盟」の禁書を手にすることになる。
    「思考」という人間的な自由すら奪われ、統治されるがままの人々の中にあって、ウィンストンは「人間」であることを貫こうとするのだが……。
    社会風刺・体制批判という枠にとらわれない骨太の社会小説。

  • ラストの付録まで読んで少しだけ救われた気がするが、人間の権力欲と従属欲はこんなにも恐ろしいのかと思った。
    と同時に現代社会はこの小説の世界といったいどれほどの差があるのかと疑問にも思う。

  • 設定は面白いし、現実になってる部分もあって面白い。1940代の作品ってのも凄い。ただ、エンタメ性無いかな。

  • 漫画も映画も見たし話を知っているのに衝撃的な面白さだった。どんどん面白くなり止まらずノンストップで隙間時間目一杯使って一気に読み終えた。結末を知ってるからこそなおさら一文一文がズシリと響く。
    映画や漫画は筋だけ見れば完全再現しているが小説のこの一人語りと会話は小説でしか味わえない。これこそがこの作品の魅力であり価値なんだ。ディストピアの全体主義が有名な作品だけど目に浮かぶような、今まさにこの話の中の世界にいるのではないかと思わされるような生々しくも恐ろしい独裁世界を完璧に作り上げた上で描かれる対話が凄い。

  • 「過去とは実体を持つものではなく記録と記憶の中にのみ存在する。故に、その2つを修正する力があれば過去は修正可能である」…作中で展開されるこの理論に明確な反論が思いつかず空恐ろしさを感じる。たまに自分の記憶と事実が食い違ってる時ってありますよね。「覚え違いかなぁ」なんて思ってしまいますが、意外と事実、もとい記録の方が修正されてるんだったりして…。などという陰謀論的発想が脳裏をかすめる。

    イデオロギー的な部分が取り上げられがちな印象ですが、小説としてもドラマチックな展開で読み進める手が止まらない。隠れ家のテレスクリーンが露わになるシーンなど非常に劇的。

  • 本編を読んでいるときは、良くこんな世界を考えつくことができるな、すごいなって思って読んでた。自分の存在が過去からも現在からも引き剥がされてしまって、自分がいてもいなくても関係ないとか、余計なことを考えさせないように語彙を減らし続けるニュースピークとか、戦争は人間の正気を保つことができるとか、今まで自分になかった視点が沢山あった。

    解説の文章は結構難解で、久しぶりに理解するのに苦労を要した文章で、結構文章読めるようになったと思ってたけどまだまだだなと思った。解説を読んでいて驚いたのは、非現実的だと思っていた本作の設定が現実にも当てはまると気づいたことだった。確かに、私も都合の悪いことを認識しつつも、それと矛盾する都合のいいことを信じようとする覚えがある。つまり私も二重思考を既に習得しているではないか!(しかも、本書を読んで二重思考の存在を認識したことで、私の二重思考は真に完成したのではないか!笑)
    あとは、ニュースピークについて過去形で語る附録が最後に来ることで、最終的に人間性が勝利する未来を予期させてくれるという解釈も好き。

  • ドラえもんの小宇宙戦争のギルモアのモデルのような描写あって面白くなりそうだったけど、そこから進まなくて飽きた。オーディオブルしたけど集中できず脱落

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著者プロフィール

1903-50 インド・ベンガル生まれ。インド高等文官である父は、アヘンの栽培と販売に従事していた。1歳のときにイギリスに帰国。18歳で今度はビルマに渡る。37年、スペイン内戦に義勇兵として参加。その体験を基に『カタロニア讃歌』を記す。45年『動物農場』を発表。その後、全体主義的ディストピアの世界を描いた『1984年』の執筆に取り掛かる。50年、ロンドンにて死去。

「2018年 『アニマル・ファーム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ジョージ・オーウェルの作品

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