一九八四年 (ハヤカワepi文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • デストピア小説、というジャンルを意識し始めたのはいつ頃からだったか。かつての「ユートピア」はどこへいったのだろう。極限の管理社会を描いたこの小説は、あまりにも生々しくリアルだ。加えて今、ウクライナ侵攻に関して事実無根の捏造をためらいなく主張する国の狂気と妄想を目の当たりにして、背筋が凍る思いがする。

  • “ビッグブラザーがあなたを見ている“

    『過去をコントロールするものは未来をコントロールし、
    現在をコントロールするものは過去をコントロールする』

    <二重思考> <2分間憎悪> <記憶穴>

    トマス・ピンチョンが解説。

    ずっと積読だったけど、やっぱり面白かった。
    思考停止を強いる拷問のところはちょっと辛い。

  • 独裁専制国家に生きるウィンストンはその体制に疑問を抱きながらもそれに従って生きていたが、ジュリアとの出会いをきっかけに国家叛逆に進もうとする。

    世界に名だたるディストピアSFの金字塔です。ようやくといった感じで読んでみましたが、これは心折れますね。もう少しほら、救いというか、明るい未来を見せて欲しかったと言うか。おかげでこの本に引きずられたようなひどい夢を何回か見ました。
    さて、この本でとても読み応えがあったのはそのストーリーもそうなのですが、戦争や権力を再定義したパートで、あまたの独裁者や専制国家が権力を権力として保持したいがあまり貧困や憎しみ、そして戦争を道具としてきたのか、実にわかりやすく描けていたし、共産主義的な体制と富の占有、独裁がなぜ相性が良いのかなどが理解できてすごく勉強になりました。最後はもうこちらも泣きそうな展開で終わるのですが、解説を読むとストーリーが終わった後に実は展開があったことが示唆されているらしいことなど、読み方が難しい本だなあ、という感想も持ちました。
    市民を抑圧し、富を収奪するような独裁国家というものは民衆の力によっていずれ倒されるのである。それは歴史が経験してきたことであって、一定の普遍性はありそうです。しかし本当にそうなのか、ということは、実は証明できることでもないのかもしれない。お隣の国では3代にわたって独裁が続いているけど、民衆の中にどれだけの革命機運があるのかわからないし、むしろ無さそうにも見える。また別の隣国では今のところ一党独裁が支持されているようだ。北の大国は戦争などやらかしてしまったので怪しいけど、プロパガンダが効いているのか国民の支持は高いらしい。まあ、かといって民主主義が安定かといえば全然そんなことはないので人間が安心して自由に平和を謳歌できる世界線というのは依然として見えないのだなあ。などと考えたりしました。今の世界とこれからの世界をどう捉えていくのか、重い課題をつきつける本で、やはり読み継がれる良書だと思いました。

  • ■この本の評価
    4.5/5(マイベストブック)

    ■この本の感想
    言わずとしれたディストピアSFのベストセラー。
    冷戦という歴史的バックボーンを持ち、行き過ぎた全体主義の危うさを描いた教科書的な作品です。

    本書は3部に分かれていますが、抑圧、解放、そして洗脳と非常に起承転結のはっきりしている展開で読みやすいです。
    また「全体主義」を、本書特有の「二重思考」「イングソック」などといった造語をもって、その本質を具体化している点で、とても難解ながらも、それが分かった時のスッキリ感と徐々に感じる後味の悪さが評価ポイントだと思います。

    本書の本来の意図するところからは離れますが、
    発想を発展させて。。。
    例えば現代のソーシャルネットワークの発展というのが、個人の自由を解放するものなのか、あるいはアイデンティティを広げるものなのか、それとも「バズっている」という全大主義の波に取り込むのかという点で考えてみると面白いですね。

    さらにサイエンスフィクションという観点でみると、ヒトの判断を超える人工知能や、膨大な情報を処理できる量子コンピュータの進歩は、本書内の監視社会を実現しうることから、「これら技術をどう使うか」という倫理面が浮き彫りになってくるのも面白いですね。

  • 第一部の監視による窮屈さ、第二部の恋による解放、第三部のキャラクターの心境の変わり方がとてもよく表現されています。
    またオーストリアのスローガン:”戦争は平和なり”、”自由は隷従なり”、”無知は力なり”の三つの矛盾を解き、その意味の説明がとても興味深く、面白いです。

  • 隷属は自由。ディストピアは実はユートピア。
    常に監視され管理され、従うこと、考えないことを強いられる社会。
    身体的に不自由や不満を感じることはあるものの、精神的には隷属することでむしろ自由を感じ満ち足りる。
    自分の周囲を眺めると、所属する何か(社会とか、会社とか)に精神的に依存することで、思考停止し安穏と過ごしていると感じることがある。このような他者の状態を批判している自分自身はどうなのか。

  • 言葉は思考を広げる武器にもなるし
    また思考を縛る鎖にもなる。
    管理者側に都合の良い言語を民衆に使わせることによる支配は、とても怖い考えだなーとぞっとしました。

  • 1Q84しかり、伊藤計劃しかり、沢山の作家やアーティストに影響を与えている事だけはよく知っていた本作をようやく積読から解放できた。※時同じくしてサピエンス全史を読んでいたがこちらにも頻出

    ビッグブラザー、テレスクリーン、監視社会といったキーワードだけは知っていて、いわゆるディストピア作品と聞いていたが正直作品の半分くらい拷問されっぱなしで読むのが相当しんどかった。

    設定の細かさやフィクションでありながらリアリティのある社会構造、綿密に構想設定されているニュースピークという概念など、1948年に書かれたことを考えると驚異的かつ時代背景も踏まえて内容にも納得がいく。

    読むのはしんどいが、次の展開が気になってしょうがなくなるグイグイ惹きこまれる作品だった。

  • 1949年の有名なディストピアSF小説。
    冷戦期ということもあり、オセアニアの政治体制はスターリン体制への批判ととらえることができ、冷戦期には反共のバイブル化した。
    しかしながら冷戦戦が終わってもなお、歴史改竄や二十思考などこの日本でも謎に身近なことに思えるような出来事に驚かされる。トマス・ピンチョンの解説で、ジョージ・オーウェルがイギリス労働党にもファシズムを見出している点を指摘しているが、民主主義がある程度成熟したといえる現代だからこその響くものがある。
    ウィンストン・スミスが母親と娘を見殺しにしたと告白するシーンと、最後の拷問シーンはかなり辛い。
    トマス・ピンチョンの解説はさすがで、この解説を読むために本文を読んでもいいくらい。
    特に、本編の最後がニュースピークスの附録で終わる点について、これの附録は過去形で客観的に記されていることから、このディストピアが永くは続かないというかすかな希望を見抜いている点が、鋭すぎて鳥肌がたった。

  • 正直、後半は難解すぎて何度も折れそうになった。今後、もっと政治体制などの理解を深めることで、いつか今とは違った感想が書けるだろうか。

    ただ率直かな思ったことを書くと、

    ・ニュースピークと呼ばれる、思考が言葉に依存しているという観点から、思考を縮小させるために作られた新たな言語

    ・想像していた、党撃破が最後まで叶わなかったどころか、最後の最後まで徹底的に屈服させらる最後

    ・ウィンストンが悪ガキすぎる点

    が印象に残った

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著者プロフィール

1903-50 インド・ベンガル生まれ。インド高等文官である父は、アヘンの栽培と販売に従事していた。1歳のときにイギリスに帰国。18歳で今度はビルマに渡る。37年、スペイン内戦に義勇兵として参加。その体験を基に『カタロニア讃歌』を記す。45年『動物農場』を発表。その後、全体主義的ディストピアの世界を描いた『1984年』の執筆に取り掛かる。50年、ロンドンにて死去。

「2018年 『アニマル・ファーム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ジョージ・オーウェルの作品

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