鬼の跫音 (角川文庫) [Kindle]

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 41
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感想・レビュー・書評

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  • 短編集。
    不穏な読み心地で後味がやや悪めだった。

    犭(ケモノ)という作品が二重に後味が悪くて印象的だった。

  •  どちらかというとホラー寄りの短編集。

    「鈴虫」:主人公の妻は、行方不明となった友人の恋人。ある秘密を抱えながらも幸せな家庭を築いたはずだった。しかし、息子が鈴虫をもらってきてから、幸福な生活にわずかな軋みが……。
    「犭(ケモノ)」:椅子の脚に彫られていた短い文章。それは、殺人罪で服役していた男の残したものだった。服役囚の意図を知るため、主人公は事件の起きた土地へ向かう。
    「よいぎつね」:友人にけしかけられ、主人公は祭の晩、良からぬ行為に出る羽目になる。実行せずにうまく誤魔化そうと思っていたものの、次第に黒い情動が沸き上がり……。
    「箱詰めの文字」:主人公のもとに、泥棒に入ったことを詫びる青年が現れる。真偽のほどを確かめるべく自宅内を検証していると、押入れの中に見覚えのないものが。
    「冬の鬼」:どんどや(左義長)の炎に達磨を投じる女性。成就した彼女の願いとは?
    「悪意の顔」:ある同級生から陰湿ないじめを受けている主人公。偶然知り合った女性から、悩みの解決に繋がるという奇妙な絵を見せられるが……。

     ホラーといってもサイコホラー的な方。サダコが出てきてコンバンワ~的な怖さとは違います。
     が、正直、うわぁ……としか。まあ道尾作品ですからね、そういうのもあるかとは思っていたんだけど、甘かった。なんでここまで露悪的というか、エグくしなきゃならんのだろう。それが持ち味ではあるのだけど……。個人的には「向日葵の咲かない夏」の方がまだマシ。(やってることは「向日葵~」の方がヤバげなんだけども)
     6編を通してちょっとした仕掛けがあるのだが、意味はあるのだろうか?行きつ戻りつしながら確認してみたけど、わからない。何度も読むしかないのか……。

  • 「よいぎつね」が好きです。
    胸糞悪いお話のはずなのに、夏祭りの妖気漂う雰囲気が相まって“ひと夏のおもひで”味を醸し出しています。

    短編だからか、つい先日読んだばかりなのに他のお話の内容は忘れてしまいました。インパクトが薄かったです。

  • 最後の『悪意の顔』が上げたり下げたり秀逸です。
    そしてまさか良い感じで終わるのか思った所で突き落とす!
    短編6つ、どれも大きくハズレのない作品でした。安定して面白かったです。

  • 今回は6話からなる短編集。
    全てのお話にSという人物が登場するが、それぞれの話に繋がりは無い。
    小説を書く側にとって、名前を考えるのって結構骨が折れる作業なので、こうやって統一しちゃうのもアリだなと思った。
    全話に共通したモチーフがあると読んでる方でもなんか関連あるのかなって注目するし。

    以下、各話と簡単なあらすじ。

    「鈴虫」  鈴虫が嫌いな主人公。恋敵を亡き者にした現場には鈴虫がいたから。しかし、息子が夏に鈴虫を拾ってきて飼い始める。
         鈴虫のメスはオスを食べる。オスは食べられると知っていて近づく。そんな鈴虫の生態とリンクしているお話。

    「ケモノ」  家族と馴染めない青年Sが、刑務所作業製品の木製の椅子に彫られた文字から猟奇事件があった村へ誘われる。椅子には「父は死体。母は犬、我が妹よ後悔はしていない」との文章。結局、文章の意味には納得したけど少年の問題は何も解決していない。

    「よいぎつね」 過去に神社で犯した罪、稲荷神社に埋めたのは何だったのか。

    「箱詰めの文字」 デビュー作を盗作した作家の物語、いきなり家から盗み出した招き猫を返しにくる泥棒。その心中は……。

    「冬の鬼」  過去に火事にあった女性とその女を愛する男の物語。達磨に目を入れるということを拡大解釈するとこうなるのか。現代の春琴抄的な耽美なお話。

    「悪意の顔」 奇妙な物語調。キャンバスの中に人間や感情を閉じ込められる元画家女がいじめられっ子に声を掛ける。怖いいじめっ子なんて絵の中に閉じ込めてしまえばいいという。


    6作中星がついている3作品はきっかけやアイディアは面白かったと思うけど、ちょっと短編では内容が煮詰まっていないかと思う節もあった。特に「悪意の顔」は最後の床下から多分殺された女性の遺体が見つかってるけど、その前にいじめっ子だったSが主人公と親友になるほどに穏やかな性格になった理由がわからないので、ちょっと勿体無いと思う。
    「信用できない語り手」の物語はどんでん返しというより戦慄、その一文を読んだだけでいきなり作品の温度がー20度くらい下がる感じがいい。そういう表現が上手い作家さんだと思う。


  • 2023.04.26
    いろいろ怖かったが、週刊誌のような略称の使い方に違和感を感じた。

  • 全編に「S」という男が登場する不気味で恐ろしい短編集。
    特に「冬の鬼」が好き。美しく残酷な、完璧に閉じられた、でも崩壊が近いと感じられる二人の世界。あぁ、こういうの大好き…

  • 中々サスペンスフルな物語が詰まっていて、この方の得意とする作風をなんとなく理解できてきた。ダークな雰囲気であったり、名前を徹底的に伏せているのも良い演出かなと思います。今後もこの作家を追ってみたいと思います。

  • この作家さんのことは初めて知った。友人に教えてもラットところちょうどkindle unlimitedの対象になってる作品があった。短編集。なかなかに凶悪な話が多くて不気味だった。直接に残虐な描写は特にないのだが,それを想起させるような形で物語が語られる。凶悪なモノは人間の狂気で,それがタイトルに含まれる「鬼」なのかしらん。

著者プロフィール

1975年生まれ。2004年『背の眼』で「ホラーサスペンス大賞特別賞」を受賞し、作家デビュー。同年刊行の『向日葵の咲かない夏』が100万部超えのベストセラーとなる。07年『シャドウ』で「本格ミステリー大賞」、09年『カラスの親指』で「日本推理作家協会賞」、10年『龍神の雨』で「大藪春彦賞」、同年『光媒の花』で「山本周五郎賞」を受賞する。11年『月と蟹』が、史上初の5連続候補を経ての「直木賞」を受賞した。その他著書に、『鬼の跫音』『球体の蛇』『スタフ』『サーモン・キャッチャー the Novel』『満月の泥枕』『風神の手』『N』『カエルの小指』『いけない』『きこえる』等がある。

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