ネットと愛国 在特会の「闇」を追いかけて [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • あまり関心のあるテーマではないんだけど、Kindle版が250円だったので購読。

    在特会の面々の「素顔」にはあまり意外な印象を受けなかった。想定の範囲内というか。
    だいたい話題をさらっている割にはメール会員1万人って果たして多いのか?全員集まったって東京ドームがガラガラ。

    それよりも著者もその不気味さを指摘しているように、組織化されないままに盛り上がった反フジテレビデモのほうに本質が隠れているように思う。
    レイシズムとか離れて、あの異様な韓流推しには自分ですら違和感と不快感を憶えたからね。あれは間違いなく実感を伴ったムーブメントだったと思うし、それがなんかのタイミングで暴発する危険性というのはある。

    だからといって「支配されてる」なんて信じこんじゃうのは情弱に過ぎるけど。結局恐れている対象が違うだけで、在特会の人も放射脳の人も実は同類という感じがする。

    在特会自体は時が経てば忘れ去られる存在だと思うけど、今の日本の底流に流れる鬱屈感の一端を実感するにはよいノンフィクション。

  • 街頭に日の丸を持った集団が現れる。
    「死ね!」
    「日本から出て行け!」
    彼らは韓国、北朝鮮、中国などの外国人に向け
    聞くに堪えない怒声をあげながらデモ行進を続け、
    道行く人が疑問を呈すと集団で取り囲み罵声を浴びせかけるのだった。
    在特会に迫ったルポルタージュ。


    少しはこの人達の言ってる事が理解できるかなと読んでみたけど、
    主張に理屈もなく、根拠も結論ありきで後から拾ってきたような怪しげなものばかりで、意味不明感が増すばかりだった。

    一般的に考えれば、こういった人達の考えの根底にあるのは異文化や違う考えの人達への拒絶感なのだろうと思っていたが、
    読んでいって思ったのは、異文化="朝鮮人"、違う考えの人="反日"で、
    彼らにとっては、実際に何人か、思想や意見がどうかといった事はどうでもよく、
    これらのレッテルを貼った相手は集団で叩いてもOKというフラグのつもりなのだろうとも感じた。

    "あいつはおかしい奴だから"と自分達の"正義"をかざして行われる学校のイジメと構図が似ている。
    あと近いのは中国の反日暴動かな。反日にかこつけて不満を解消するために暴れているのと、やっている事は変わらない。
    何にでも不満をもって誰かを叩きたい層というのは昔からいて、かつては政府を批判していたものだが、今は政府が弱っているので、
    マスコミや自分達よりさらに弱者であるマイノリティや生活保護受給者に不満の捌け口が向かっているのだろうなと思う。

    数々の事件で逮捕者を出し、裁判で負けて社会から拒絶されて内向きになり、
    大人の支援者達が失望して見放され、内部で意見の違う人を叩きはじめる様子は
    過去の色々な組織との類似性を感じて先が心配になった。
    退会した人の話も幾つか載っているが、
    きっかけが逮捕されて洗脳がとけるのでは、日本社会に対する被害が大きすぎる。
    読み終わって、「我々社会が彼らに届く言葉を探し続けなければ」という事を何かで筆者が話していたのを思い出した。

    他にも色々思うところがあるので、たぶん後で色々書き足します。

  •  「在特会」、その言葉を最初に聞いたときは世の中にはおかしなことを言う人がいるものだなぁとあまり気に留めなかった。しかし、それが運動として眼前に現れたときはひどく戸惑った。
    この運動はこの先どうなるのだろうと思い、この本を購入した。
     在特会の中に、読む以前は想定していなかった意外な人が結構いるんだなぁ感じた。文の中に何度か書かれているが、そのものよりそれを支えている姿なき人々のほうに恐ろしさを感じるのは同感だ。あと読み進めて思ったのたけど学校内でのいじめの構造によく似ている気がする。
     左翼的思想は現在守りで若者などは改革(に見える)ほうが支持を集めやすいのではとの指摘には納得。
     人々の自覚なき偏見や差別心がこのような排外運動を生み出す原動力となっているとするなら僕らはどうそれと対峙していけばよいのだろう。

  • 一言でまとめれば、在特会って何?っていう内容。それはそれでいろいろ発見が多かったし、その会長の桜井誠という男の生い立ちについて思いを馳せたりはできた。けど、評価はあまり高くない。なんでかっていうと、最初と最後で在特会に関する印象が全然変わんないんだもの。
    なるほど、在特会という市民団体があって、こんな人たちがいて、こんな活動をしているのかー。ふむふむ……って、これずっとおんなじこと書いてない!?って印象。個人的に、優れたノンフィクションっていうのは、取材対象に対する印象が最初と最後で全然別物になるもの、だと思っている。今はこういう人物(に限らなくてもいいけど)だけど、実は、こういう生い立ちや挫折があって、こういう影響を受けていて……みたいなのが取材を経て明らかになっていく。なるほど、こういう人だったのか!!っていうのが分かる。それが読んでいて楽しいノンフィクションだと思うんだけどなー。

    それで、本書はっていうと、まぁ、最初の章と第5章だけ読めば充分、とまではいかないけど、どれだけ読んでも在特会の印象はほとんど変わらないかなー、っていう、感想でした。すみません、偉そうに。

  • ツイッターを初めた2年ぐらい前から「ネトウヨ」という存在は聞きかじっていたが、最近のUstで新大久保の在日朝鮮人を罵る姿を見て、「なんだこいつらは?」と嫌悪を超えて興味を持ち、Kindleで即購入したこの書籍。
    なるほど、新大久保や鶴橋で「朝鮮人を叩き出せ!」とシュプレッヒコールをあげるウヨクたちは、60年代の安田講堂で「安保反対~」を叫んだ団塊の世代や、70年代のロンドンのパブで「No Future~」と歌ったパンクスと何ら変わりない。若いエネルギーのやり場に困り、また仲間との一体感に飢えているだけ、ということがよくわかる。
    しかし青春のやり場のないエネルギーをぶつけるだけにしては、他者を傷つけ過ぎてるし、なにより自身が失うものが多すぎないか?
    そして、安倍内閣支持者にネトウヨが多いと聞くが、10年前の自民党の小泉竹中構造改革路線が派遣法を改正し非正規従業員を認めたことで多くの失業者を生み出し、ネトウヨの温床となったというマッチポンプに、彼らは気づいているのだろうか?

  • 在特会(在日特権を許さない市民の会)を追ったドキュメンタリーです。読み進めていくとあまりの当人たちの口汚さに読中気分が悪くなりますが、内容としてはとても興味深いものでした。行動する保守というポジションで、今までの右翼・保守とは一線を画して頻繁にデモ活動を行っているのが在特会という集団です。知っている方もいるかと思いますが、彼らの特性は主に在日韓国・朝鮮人に対して“殺せ” “死ね”といった過激な発言で、運動というカテゴリから逸脱しているレイシストだと保守の側からも多く批判を集めています。所謂ネトウヨ出身の人々が現実世界に移行してきた、所謂ナショナリストとは全く異なる集団との見方が多いですが、そんな活動をする彼らは実際にどういう人間なのか、どういった経緯でこの集団が出来ていったのか、といった内容が当人たちのインタビューなども含め詳細に描かれています。時折著者の主観で書かれているような言動もありますが、全体として非常に読み応えのある内容となっています。

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著者プロフィール

1964年生まれ。産湯は伊東温泉(静岡県)。週刊誌記者を経てノンフィクションライターに。『ネットと愛国』(講談社+α文庫)で講談社ノンフィクション賞、「ルポ 外国人『隷属』労働者」(月刊「G2」記事)で大宅壮一ノンフィクション賞雑誌部門受賞。『ルポ 差別と貧困の外国人労働者』(光文社新書)、『ヘイトスピーチ』(文春新書)、『学校では教えてくれない差別と排除の話』(皓星社) 、『「右翼」の戦後史』(講談社現代新書)、 『団地と移民』(KADOKAWA)、『沖縄の新聞は本当に「偏向」しているのか』(朝日文庫)他、著書多数。
取材の合間にひとっ風呂、が基本動作。お気に入りは炭酸泉。

「2021年 『戦争とバスタオル』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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