芋粥 [Kindle]

著者 :
  • 2012年9月27日発売
3.63
  • (15)
  • (20)
  • (29)
  • (6)
  • (0)
本棚登録 : 240
感想 : 30
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (25ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 今年最初の古典名作の感想会。名前は分からないが、主人公の五位(地位の低い役職)。同僚・町の子供たちにも馬鹿にされみじめな生活。お酒に小便を入れられる始末。しかし彼の夢は「芋粥に飽きてみたい」こと。そこで貴族・藤原利仁が五位に芋粥をたらふく御馳走する。五位は利仁の館で庭一面で煮られた大量の芋粥を振舞われる、が、五位は食べる前からげんなりし、お椀半分食べたところで食べるのをやめてしまう。人間の夢は「夢」のままの方が目標をもって生きられるのだ!という解釈かな。うーん。感想会で皆さんの解釈を知りたいです。⑤

    今回の疑問(1)何故、利仁は惨めで取柄もないな五位に「芋粥を飽きるほど食べたがっている」といった理由で、近所中から山芋を集めて屋敷総出で本当に接待したのか?

    疑問(2)五位は惨めなのか?酒を小便にすり替える同僚たちや、犬をいじめる子供たちや、財力をもってとても飲めない量の芋粥を五位につきつける利仁のお節介の方が惨めに見えてくるのは自分だけか?芥川龍之介は、この矛盾を読者に伝えたかったのではないか?

  • 杉本苑子版「今昔物語」を読んでいると「芋粥」の話が出てきたので、中学以来の再読。芋粥を腹一杯食べることが人生最大の喜びと夢見る“五位”が大釜で煮られた大量の芋粥を目にすると… 端正な文体で人間の矮小さをシニカルに描きます。私も海の幸を存分に味わいたいと伊豆で経験したことを思い出しました。次々と供される念願の料理。でも、終盤に出てきた立派な塩釜焼きを前に満腹で箸をつけることも出来ませんでした。その時、ああ人ってなんてちっぽけなんだろうと思ったものです。それにしろ、芥川を十代の文学にしていおくのは勿体無い話です。

  • 1. 好きなものを飽きるほど飲んでみたい、そして飽きたい。そんな願望をもったことはないだろうかと自分に問うてみた。


    2. お酒は20代でこそ浴びるように友と飲んだが、今では量よりも質になり味を嗜む程度になった。しかし飽きていない。


    3. 握り寿司は飽きるほど食べてみたいと思っていた一つだ。20代では高かったのでそんなに機会がなかったが、今では良質の食べ放題が楽しめる。握り寿司も不思議と飽きず、食べ終わってもまた食べにきたいと思う。


    4. こう考えてみると、時代が違うのではないかと感じた。昔は階級制度がありなかなか口に入らない馳走があったに違いない。今はお店に行けば何でも食べることができよう。


    5. 時代が便利になった一方で、好きなものを飽きるほど飲んで飽きてみたいという願望自体は、案外贅沢な願望なのかもしれないと思った。

  • 平安時代の摂政・藤原基経に仕える侍(某小役人)は、四十過ぎの風采のあがらぬ男(背の低い、赤鼻で、目尻の垂れた、口髭のない)である故か、職場ハラスメントの餌食となり、周囲から蔑まされる毎日でした。その某侍の生き甲斐は「芋粥を飽きるほど飲んでみたい」という欲望だけでした。ある年の正月、基経主催の饗宴の席でのこと、某侍の夢を叶えてやろうという上役(藤原利仁)が、好き放題山芋が口に入る敦賀の里へと誘うのでした。某侍は「芋粥」への飽くなき欲求に負け都を後にします。さてさて、有り余る山芋を目の前にした某侍は・・・。

  • 芥川龍之介はどこか苦手意識があったが、これは読みやすかった。芋粥食べてみたい。

    夢が叶えられた瞬間色褪せることってあると思う。しかも、それは必死で掴んだものでもそういった面はあるが、努力しないで得たものは尚更。
    虐げられてきた境遇から、何の努力もせずに何も自身が変わらずに密かに思い続けていた願望があっさり叶ってしまう。五位はこれから何を糧にして生きれば良いのだろう?

    利仁の意図も気になる。五位の夢を叶えてどうしたかったのだろう?五位の唯一の楽しみを打ち砕いてこれから何の希望もない五位を嘲笑うことを目的にしたことなら、かなり陰湿だが…

    焼肉だって、たまに食べるから美味しいんですよ(違)

  • これは分かりやすい。最後に著者自身の解説まである。今の時代だと一つの欲望が叶ったら、それよりも高い次の欲望が生まれる。それを繰り返して、最後には失望を味わう。そんな世の中になっちゃったね。それにしても藤原氏の権力は狐にまで及んでいたとはスゴい。

  • 人はどんなに追い詰められていても小さな希望や夢を持っていれば生きていける。
    その反面その夢を他人の手で簡単に叶えられてしまうと興ざめしてしまう。
    そんな人間の複雑な感情を描いた短編。
    夢を叶えようとしてくれた男は善意からなのか悪意があったのかを語り合いたい。

  • 「鼻」と對を成す作品といはれるのは分かる、納得。
    强引に芋粥を埀らし込み嘲笑ふ仕打ちはアンマリだけど、「シッカリせんかいっ!」と云ひたい。
    莫迦にされるのに慣れてしまへば、それは樂なんでせうけれどもね。

  • 楽しみは取っておく間が楽しいのかもしれないと考えました

  • 夢は夢として残しておく方が幸せなのか
    手に入れると色褪せてしまうのが世の常

全30件中 1 - 10件を表示

芥川竜之介の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×