地獄変 [Kindle]

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  • 2012年9月27日発売
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レビュー : 33
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (29ページ)

感想・レビュー・書評

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  • 良秀が如何に人であったか。器量のある者、それを取り巻く者、讃える者が如何なるものか。良秀が作品を創るにあたっての振る舞いは、決して天才ではなく真摯で努力家で。人は、理解のできないもの、不気味なものに、恐れを感じるもの。目に見える良秀の風貌出立や振舞いのそれらや噂話、それに似つかわしくないその力量に恐れを抱いている。それを受け留めることのできない人の浅さ。業火の中、焼死にゆく愛娘を如何ともできないその生き地獄。戻ることのできない愛娘の命の絶えゆく道を覚えゆけばゆく程、生き地獄は良秀の血肉となり、愛娘の死を悟ったとき、そうして愛娘を生かすことを覚えたのだろうか。良秀は受け止めた。そして生かした。良秀は受け止めた。そして、自ら死んだ。人の心を持つ良秀だった。愛娘とともに地獄変の中で生きることを選んだかのように感じる。醜く不気味で得体の知れないものを人は恐れ奇人変人扱いをするが、それは不覚なる者であることも多い。わかりやすいもの、人が安楽的に依るところのものを人は讃え易いが、その実は如何に。大腹中の御器量のあるお方というのはそのようなものなのだろうな。この物語を語る者はそれを自覚していながらもまだそのように振る舞う。或いは、それを読む人もまたそうかもしれない。平安も大正も今も、それは変わらないのだろうな。

  • 狂おしいほどに何かに向かって突き進むことの怖さと美しさが端的に表現された作品

  • ただただ狂気
    娘は可哀想
    猿も可哀想
    親父はどうでも良い

  • 新字旧仮名・旧字旧仮名ともに読了

  • 小説はストーリー重視なのだが、これは文章がうまいというのか面白かった。

  • 平安時代の絵師 良秀が 殿様から「地獄の絵を描くよう」命じられ、地獄の絵を描居ていく話。
    良秀は変わり者で絵のためであればどんなことでもする人物。
    家族を失うほどのことがあっても芸術を優先する良秀の気持ちは理解できないものの、読んでいて惹きこまれた

  • 平安時代、たいへんな人格者である大殿様。その大殿様にお仕えした絵師の良秀、そして女房としてあがった良秀の美しい娘。娘に可愛がられた猿が一匹。

    平安期の装束、文化など知らない身でも一語一語噛みしめるように読むことで、それなりに情景を思い浮かべることができる。

    絵師良秀が地獄変の屏風を完成させる為、この世に地獄を出現させることを望み、その地獄をあくどいまでに演出する大殿様。
    狂気の世界の演出だ。
    芸術を大成させる為、ここまでやる人間。その心はもうすでに地獄に堕ちているのだろう。

  • Kindle無料版にて。
    自分の中でちょっとした芥川ブームが来たので、有名そうなこの作品を読む。
    少し長めでしたが、なかなかに面白かったと思う。
    電車乗り過ごしたし(笑)
    芸術に魅せられ、狂ってしまった男の話か。
    ただしスッキリしないところもかなりある。
    すべての人々に尊敬されているっぽい大殿様もやっぱり狂っているような気がするし、娘もなんだかんだ狂っているような気がするし。
    狂っている人だけが登場していると思えば、納得も出来るか。
    いや、世の中に狂っていない人などいるわけがないのか。

  • 短い作品だが、娘を襲ったのは誰なんだ?など、残った謎を考えるのが面白い。解釈も人によって色々で、ブログや感想を見るのも楽しかった。
    自分の解釈だと、こんな感じ:

    ◆大殿はなぜ地獄變を描かせたか?
    娘がなかなか思い通りにならないので、「親元に返せ!」とうるさい良秀に仕事を与えて、追い払った?
    その隙に自分のものにしようと考えたのかもしれない。

    ◆夜、娘を襲ったのは何者か?
    大殿。しかし失敗。失敗だと思ったのは、猿が頭を下げたので。
    未遂で終わったことに対し、礼をしたのだと思う。
    娘は相手の名を言わず、口惜しそうに唇を噛みながら首をふるだけ。「口に出して言えない人物」だったのかもしれない。
    そして大殿は、プライドが傷ついたか、もうこの女は望みなしと思ったのか、良秀の申し出にかこつけて娘を消そうと考える。

    ◆良秀も娘を殺すつもりだったのか?
    「傲慢なあの男が屏風の畫が思ふやうに描けない位の事で、子供らしく泣き出すなどと申すのは隨分異なものでございませんか」
    どうしても牛車と女が燃える部分が描けず、描くには大殿に頼むしか無い。だが頼めば、中に入るのは娘だろう。
    その葛藤があって涙していたのだろうか。

    このシーンは娘が襲われる前なので、もし良秀が「娘が死ぬだろう」と考えているなら、大殿の夜の失態以前に相応の理由があることになる。

    自分が大殿の心象を大きく損ねていること。
    でもだからといって娘を殺すかというと、情がある常人ならやらないだろう、と思う。
    ということは、やはり大殿は常人ではない。
    嫌いな人間に嫌がらせをするためなら、その娘の命をも弄びかねない人物だということ。
    そしてそれを踏まえた上で、良秀は大殿に「火をかけて頂きたい」と申し出た。

    たしかに「焼かれる女」を娘にしようと決めたのは大殿だが、そもそもその図を考えたのも良秀なら、燃えているところが見たいと申し出たのも良秀だ。

    そして「娘が犠牲になるかもしれない、しかしそうするしかない」と、涙を流したあの時、感じていたに違いないのだ。娘の命は、良秀次第だった。
    絵への執念と、大事な娘を犠牲にすることの、葛藤の話だ。

    詳細はブログへ:
    http://haiiro-canvas.blogspot.jp/2015/07/blog-post_28.html

  • 中学校の必読図書で読んだのがはじめてだと記憶しているが、その時は無理矢理の読書だったので、感想らしい感想が持てなかった。
    ティーンエイジャーの後半になってから、読み直し。
    少しは理解できるようになったかな。

    理不尽な話だとは思うが、芥川龍之介のこのような人間お描き方が好きだ。

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