地獄変 [Kindle]

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  • 2012年9月27日発売
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  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (29ページ)

感想・レビュー・書評

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  • 良秀が如何に人であったか。器量のある者、それを取り巻く者、讃える者が如何なるものか。良秀が作品を創るにあたっての振る舞いは、決して天才ではなく真摯で努力家で。人は、理解のできないもの、不気味なものに、恐れを感じるもの。目に見える良秀の風貌出立や振舞いのそれらや噂話、それに似つかわしくないその力量に恐れを抱いている。それを受け留めることのできない人の浅さ。業火の中、焼死にゆく愛娘を如何ともできないその生き地獄。戻ることのできない愛娘の命の絶えゆく道を覚えゆけばゆく程、生き地獄は良秀の血肉となり、愛娘の死を悟ったとき、そうして愛娘を生かすことを覚えたのだろうか。良秀は受け止めた。そして生かした。良秀は受け止めた。そして、自ら死んだ。人の心を持つ良秀だった。愛娘とともに地獄変の中で生きることを選んだかのように感じる。醜く不気味で得体の知れないものを人は恐れ奇人変人扱いをするが、それは不覚なる者であることも多い。わかりやすいもの、人が安楽的に依るところのものを人は讃え易いが、その実は如何に。大腹中の御器量のあるお方というのはそのようなものなのだろうな。この物語を語る者はそれを自覚していながらもまだそのように振る舞う。或いは、それを読む人もまたそうかもしれない。平安も大正も今も、それは変わらないのだろうな。

  • 小説はストーリー重視なのだが、これは文章がうまいというのか面白かった。

  • 短い作品だが、娘を襲ったのは誰なんだ?など、残った謎を考えるのが面白い。解釈も人によって色々で、ブログや感想を見るのも楽しかった。
    自分の解釈だと、こんな感じ:

    ◆大殿はなぜ地獄變を描かせたか?
    娘がなかなか思い通りにならないので、「親元に返せ!」とうるさい良秀に仕事を与えて、追い払った?
    その隙に自分のものにしようと考えたのかもしれない。

    ◆夜、娘を襲ったのは何者か?
    大殿。しかし失敗。失敗だと思ったのは、猿が頭を下げたので。
    未遂で終わったことに対し、礼をしたのだと思う。
    娘は相手の名を言わず、口惜しそうに唇を噛みながら首をふるだけ。「口に出して言えない人物」だったのかもしれない。
    そして大殿は、プライドが傷ついたか、もうこの女は望みなしと思ったのか、良秀の申し出にかこつけて娘を消そうと考える。

    ◆良秀も娘を殺すつもりだったのか?
    「傲慢なあの男が屏風の畫が思ふやうに描けない位の事で、子供らしく泣き出すなどと申すのは隨分異なものでございませんか」
    どうしても牛車と女が燃える部分が描けず、描くには大殿に頼むしか無い。だが頼めば、中に入るのは娘だろう。
    その葛藤があって涙していたのだろうか。

    このシーンは娘が襲われる前なので、もし良秀が「娘が死ぬだろう」と考えているなら、大殿の夜の失態以前に相応の理由があることになる。

    自分が大殿の心象を大きく損ねていること。
    でもだからといって娘を殺すかというと、情がある常人ならやらないだろう、と思う。
    ということは、やはり大殿は常人ではない。
    嫌いな人間に嫌がらせをするためなら、その娘の命をも弄びかねない人物だということ。
    そしてそれを踏まえた上で、良秀は大殿に「火をかけて頂きたい」と申し出た。

    たしかに「焼かれる女」を娘にしようと決めたのは大殿だが、そもそもその図を考えたのも良秀なら、燃えているところが見たいと申し出たのも良秀だ。

    そして「娘が犠牲になるかもしれない、しかしそうするしかない」と、涙を流したあの時、感じていたに違いないのだ。娘の命は、良秀次第だった。
    絵への執念と、大事な娘を犠牲にすることの、葛藤の話だ。

    詳細はブログへ:
    http://haiiro-canvas.blogspot.jp/2015/07/blog-post_28.html

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