羅生門 [Kindle]

著者 :
  • 2012年9月27日発売
3.76
  • (32)
  • (54)
  • (47)
  • (8)
  • (1)
本棚登録 : 515
レビュー : 50
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (8ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 人はたった一人で生きている訳ではなく、他者との比較、交わりにおいて生かされているのだということをつくづく思い知る。

    人々の怨念渦巻く羅生門。
    そこには世の不条理をひたすら怨み死に至った者達の死骸が人知れず集まってくる。
    そんな真っ暗な死の闇の中に一筋の光を見た。
    生きる。
    他人を蹴落としてでも、生きる。
    僅かばかりの生の炎を灯す痩せ細った老婆でさえも。
    ただ己が生きるために。
    羅生門の下に着いた時は行き場もなく途方にくれていた下人であったけれど、羅生門の上へと上り詰めた先の下人の感情の変化に、生にすがり付く人間の生き様を見た。

    芥川の筆力には改めて感動した。

  • おぞましい情景描写と、二転三転する下人の心理描写。このふたつの描写と、その絡まりあいがあまりに絶妙で、妙な現実感を醸し出している。

    たった10分程度でさらりと読めてしまう作品に、ここまでのものを盛り込める芥川龍之介の手腕は、やはりすごいと感嘆せずにはいられない。

    天変地異続きで、荒れ果てた京の都の羅生門。ここには、引き取り手のない死体が多数放置されている。この門下で雨宿りをする下人。主人に解雇されたばかりの彼に、行き場などない。いっそ、盗賊にでもなろうかとも思うが、そんな勇気も出ない。そのうち、雨足が強くなり、門の軒下では雨を凌げなくなった彼は、死体だらけの上階に寝床を求めようとするけど…。

    無情にも打ちつける雨。
    追い詰められている下人。
    醜く腐り、泥のようになった無数の死体。
    猿のような老婆。
    彼女がしている行為。
    下人と老婆の問答。

    そういった情景描写の中に、それらを受けて刻一刻と変化する下男の内面描写が挟まれる。

    最終的には吹っ切れたように悪に手を染める下男の姿は、その追い詰められている途中経過の情景・心理描写の見事さゆえに、責めるよりも、自分も同じ立場になればそうなんだろうな、と思わずにはいられない。

    初めて読んだのは、中学の時の国語の教科書でした。
    けれど、大人になって社会を知った今だからこそ、善悪なんて単純明快なものではなく、状況を理解してしまう、という複雑さで読むことができたと感じる作品でした。

  • 「最後の良心が、はじける音をきく。」

     天災と飢餓に喘ぐ京の都。雨に煙る羅生門で、糧を失った一人の下人を決意させた出来事とは…。

     「羅生門」との出会いは中学の現国の教科書だった。教科書は学生自身が選べるものではないから、その中にある文芸作品との出会いは宿命的ともいえる。電子書籍購入にともなって芥川の作品をぼちぼち読んでいるのだが、数多あるその作品にはやはり万人向けとそうでないものがあるように感じている。

     そういう意味では、この分量の中に一人の人間がエゴイズムに走る心境の変化というものを的確に描いた「羅生門」は確かに人口に膾炙する名短編であり、人生の初期に出会う文芸作品として教科書に収録されていたことに今さらながら膝を打った。

     人として最小限の良心を持っていた下人が職を失い路頭に迷ったところで、続く天災で生きるか死ぬかという選択を迫られその良心の箍が外れるまでが劇的に描かれていく。その箍をはずさせたのが、羅生門の楼上で行き倒れとなった人々の遺体から髪を抜き取ろうとしていた老婆の論理であった。

     教科書でこれを指導された当時は、「自分さえ良ければ」という人間のエゴイズムを描いた作品、というようなことだったと思う。なるほど今読み返すと、羅生門を舞台としてここには、蛇を干魚と言って売っていた女、その女の遺体から髪を抜いて鬘を作ろうとした老婆、そんな老婆から着物を剥ぎ取る下人の「己が生きるために」というエゴイズムの連鎖が繰り広げられているのだ。

     同時に下人の心境の変化にも注目したい。冒頭、門の脚元でぼんやりと雨を眺めていた下人が、老婆の論理に負の勇気を得て闇に消えるまでのそれの、なんと克明に描かれていることか。読者はこのわずかな時間に下人の最後の良心がはじけるのを目の当たりにすることになる。

    「きっと、そうか。」

     老婆の論理を聞いた下人が老婆に向かって放ったこの一言に、良心のはじける音をきく。中学生当時の自分には決してきこえることのなかった音だ。そうして、はじけて粉々になった下人の良心は「黒洞々たる」闇に溶けて無くなった。

  • 今更言うまでもないが、下人の感情の機微の描き方はすごい。

  • 人のえぐみが描かれてて面白かったなあ

  • いつ以来読み返したんでしょうか。あらすじはもういいですよね、これだけの有名作品ですし・・・

    全体から漂う陰鬱な雰囲気と人間の心情の移り変わり。非常にミステリアス。そして最初に読んだときも感じたなんともいえない恐怖感。

    これだけ短い作品で、日本のミステリーホラーの全てが凝縮されてる。やっぱり語り継がれる作品は違う・・・

  • 生々しい腐りかけの果実のようなグロテスクな描写とミステリアスな展開に引き込まれてしまった。これを読み、己に何らかの得はないが、まるでドイツの湿っぽい映画のような後味の悪さが有り、見事だと感じた。
    まるで砂利を食わされるような小説、気持ちの悪さが癖になる

  • 中高生の頃以来の再読。
    当時より善悪を突き放して読めた。

    開き直った後の方が男がいきいきしてるのがなんとも皮肉。

  • 平安末期が舞台。鬱々とした気味の悪い情景が浮かんでくる。
    餓死するか、盗人になるかの選択を迫られる下人。人を悪にするのは、環境なのか、他人との比較なのか。自分の行為を正当化できる理由があれば、悪になってしまう人間の弱いところが書かれている。そして、自分のしたことは、また自分に返ってくる。そんな負の連鎖を感じさせる。
    外には、ただ、黒洞々たる夜があるばかりである。下人の行方は、誰も知らない。
    最後の2文が下人の今後を想像させる。下人は黒洞々たる夜に飲み込まれてしまった。

  • 何回読んでも引き込まれる。

  • 学生の時以来の再読。

  • 国語の授業で読んで衝撃的だった
    暗い
    臭い
    屈辱感
    嫌悪感
    目を背けたくなるような世界

  • 内容完全に忘れてました。‬許さない!とはじめは言いながら、都合の良い理由が見つかれば、自身の行動を正当化して同じ行為をしてしまう。彼の心の揺れ動きが肌感覚でわかる気がします。

  • 電子辞書

  • 今、再びの芥川龍之介。
    高校の時はふーんという感じだったけど、今読むと圧倒的な臨場感を感じ、もはや小説というより映画。

  • なんでしょう、読みきった後の胸の痞えは?

  • 【読了メモ】中学の国語の授業以来でしょうか。胸糞悪くもなく、痛快な心持ちも齎さず、そうか、そういうものか、と思わせる物語であります。

  • この本を何度か読み返して思った事は、人は環境により、生きるために悪を犯す事があるという事。
    この本では、人が持つ弱い心の動き、悪事を働く過程、負の連鎖、偽の勇気を読むことができる。

    ◆迷い
    “「盗人になるよりほかに仕方がない」と云う事を、積極的に肯定するだけの、勇気が出ずにいたのである。”

    ◆恐怖と好奇心
    “ある強い感情が、ほとんどことごとくこの男の嗅覚を奪ってしまったからだ”
    “六分の恐怖と四分の好奇心とに動かされて、暫時は呼吸をするのさえ忘れていた。”

    ◆怒り
    “恐怖が少しずつ消えて行った。そうして、それと同時に、この老婆に対するはげしい憎悪が、少しずつ動いて来た。──いや、この老婆に対すると云っては、語弊があるかも知れない。むしろ、あらゆる悪に対する反感が、一分毎に強さを増して来たのである。この時、誰かがこの下人に、さっき門の下でこの男が考えていた、饑死をするか盗人になるかと云う問題を、改めて持出したら、恐らく下人は、何の未練もなく、饑死を選んだ事であろう。それほど、この男の悪を憎む心は、老婆の床に挿した松の木片のように、勢いよく燃え上り出していたのである。”

    ◆優越感・満足感
    “下人は始めて明白にこの老婆の生死が、全然、自分の意志に支配されていると云う事を意識した。そうしてこの意識は、今までけわしく燃えていた憎悪の心を、いつの間にか冷ましてしまった。後に残ったのは、ただ、ある仕事をして、それが円満に成就した時の、安らかな得意と満足とがあるばかりである”


  • 青空文庫で読了。「饑死をするか盗人になるか」究極の選択です。そして状況や情報が変化する毎に揺れ動く心境、わかる気がします。全ての人の心は、こんな感じに揺れ動き、ちょっとした縁で結論が変わったりするんでしょうね。なにより羅生門で繰り広げられた一連の描写が見事で、リアルにイメージする事ができました。

  • 多分、だいたいのあらすじは知っているけどちゃんと読むのは初めての羅生門
    下人の豹変が印象深いな

  • 2017/11/15

  •  読書メモのアプリを見ていて、青空文庫のアプリに出会いました。のどが痛くて病院へ行ったのですが、薬局が混んでいた退屈だった時間に読みました。
     小学校の教科書の題材になった物語。芥川龍之介の代表作です。
     短いお話なのであっという間に読めました。
     読後の率直な感想としては、「想像力を掻き立てられるお話だな」と思いました。
     きっと小学校や中学校でも「この後下人はどうなったでしょうか?」という問題が出されたのではないでしょうか。その印象に残る一文はこれです。

     <以下引用>
     下人の行方は、誰も知らない。(p.30)

     私も色々想像しました。老婆は実は殺されていて、幽霊となって下人を追って行ったのでは?下人はそのまま京を出て、別の場所で老婆と同じ目にあわされているのでは?
     答えがないからこそこんな楽しみ方ができる物語でした。

  • 「羅生門的アプローチ」を説明するために。「羅生門的アプローチ」は映画「羅生門」に基づいた概念でした。

  • 京都にある羅生門の話。ここ二、三年地震、家事、辻風などの災害により京の都はひどく寂れている。主人公の下人も生活に窮しており、盗みや犯罪を犯さなければ生きていけないと覚悟を決めていた。
    羅生門とは盗人が住み着いたり、死体の捨て場になるような場所である。下人は雨宿りのため羅生門を訪れる。
    羅生門の上は死体捨て場になっている。下人が上をのぞいてみると老婆が焚き火をしていた。
    老婆は死体から髪の毛をはいでカツラにしていた。下人はその行為に強い嫌悪感を抱く。『あらゆる惡に對する反感が 、一分毎に強さを増して來たのである。』とあるように老婆が許せなくなりその行為をやめさせる。さらにその後老婆の衣服を剥ぎ取り羅生門から逃走する。
    冒頭では盗みや犯罪を犯してでも生きていかなくてはならないと覚悟を決めているのに、老婆の行為に対しては悪を憎む正義とも思える感情が芽生えている。しかし結局のところ老婆から衣服を奪い逃走していることから正義も何もなく、ただ弱肉強食のことわりだけが残る。

    人間は常に善と悪両方の感情を備えている。同時に善と悪は状況により揺れ動き、ひっくり返る表裏一体のものであると気付かされた。
    正義とは悪とは何なのかその基準はおもう以上に複雑で難しい問題であると感じた。
    これから生きていく中でその基準を自分が納得できるようしっかりと考えていきたい。

  • 久し振りに読んだが、これを中学生の国語の教科書に載っけるなんてスゲーな。ほんのちょっと残った正義感を完全に捨て去るシーンの衝撃。中学生は点数を取る為じゃなくて、この心の機微に感動して欲しい。

  • なんか学生の時、国語の教科書に載っていたのは覚えてるけど
    内容とか全然覚えてなかったので
    改めて読み直してみる。
    なんだかもう一言で言えばカオス!
    カオスだよ!
    人間極限状態になったら、こんなエキセントリックな感じなのかもしれない
    死ぬか生きるか散々迷って
    あーやっぱり死のうかなーと。
    そこで、いや!ここはどんなことをしても生きる!
    みたいな。
    もっと硬い内容だったかと思いきや、案外そうでもなかった。
    好き嫌いははっきりするかと。

  • 飢餓に苦しむ一人の若者。餓えてなお、善人で居続ける彼が”最後の一線”を破るにいたった出来事とは?

    次々おこる天災のため、人々は盗み、餓死し、死人は捨てられ、鴉が死肉をあさって飛び交う。
    暗鬱な京都の羅生門の情景からはじまって、その夕刻から真の闇の刻になるまでに、若者は”ある種の勇気”を手に入れてしまう。

    人間の極限の状態を書いている。

  • 正義と悪の間で自問し、悪に落ちるしかないという考えに至るも決心がつかず。その後、地獄のような外道に憤激し、問い詰めた老婆にどうしようもないことをするのは仕方ないからするのだと言われ、途端憤激し自らさえも忘れ、いとも容易く老婆から服を剥ぎ取る。悪の憑依。分別の表裏の紙一重。

  • Kindle無料版にて。
    相変わらず芥川竜之介は普通だな。
    誰かが言っていた
    「芥川は1行で書けるような何でもないことを長い文章にする」
    というのがわかるな。
    しかし芥川ってこんなに読みやすかったっけ?
    昔は読みづらくて敬遠してたんだけどな。
    逆に高校生ぐらいの時に面白くて何度も何度も読み返すほどハマった森鴎外の「舞姫」が今は全然読めない。
    夏目漱石は今も昔も読めない。
    太宰は今も昔も面白い。
    これはなんだ?
    歳を重ねてなにが変わったのだろう?
    せっかくだから今のうちに芥川を出来るだけ読んでおこう。

  • 国語の授業でもやったはずがうろ覚えだった。
    昔はいくらか老婆に同情した気がする。
    今回はそんなこと微塵も思わず、自分の中のある種の純粋さは朽ち果てたのだな、と思った。

    下人は結局盗賊になるが、むしろ最初の正義感が強いと感じる。
    悪の種類にもよるだろうが、餓死を選ぶってすごいことだ。

    引剥をしようと決心がついた時の感情が気になる。
    純粋に老婆の話を真に受けて、「じゃあ俺も同じ事するけど恨みっこなしな!」なのか。
    それとも気味悪老婆に、仕返しをする意味も含まれていたのか?
    それによってキャラクターがちょっと変わってくるよなー。

    しかし他の人の感想を見ようと検索してみると、「読書感想文のテンプレ」ってのがわんさかひっかかって苦笑する。
    こんだけあれば、あちこちからピックアップしてそれなりに自分の言葉に変えて、たぶん先生にはバレずに済むだろう、煩わしい宿題のひとつは片付くわけだ。
    テンプレを用意する側も合わせて、それもなかなか興味深い人間心理。

    ブログ:
    http://haiiro-canvas.blogspot.jp/2015/08/blog-post_1.html

全50件中 1 - 30件を表示

羅生門のその他の作品

羅生門の詳細を見る 羅生門 芥川竜之介
羅生門 羅生門 芥川竜之介

芥川竜之介の作品

外部サイトの商品情報・レビュー

羅生門を本棚に登録しているひと

ツイートする