お伽草紙 [Kindle]

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  • 2012年9月27日発売
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レビュー : 21
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (75ページ)

感想・レビュー・書評

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  • 瘤とりじいさん、浦島太郎、カチカチ山、舌切り雀、の太宰解釈版。
    *瘤とり。
    「この物語には所謂「不正」の事件は、一つも無かつたのに、それでも不幸な人が出てしまつたのである」
    これを説明するのは、日常倫理ではなく、
    「性格の悲喜劇といふものです。人間生活の底には、いつも、この問題が流れてゐます」

    *浦島。
    気取りやで自意識過剰な浦島太郎が太宰らしくて面白い。お土産の玉手箱に託された乙姫の真意(太宰解釈による)に納得。竜宮城そして乙姫の、美しいけど空虚で退屈な描写。

    *カチカチ山。
    これはなかなか面白い。兎の、狸に対する仕打ちを、「美しく高ぶつた処女の残忍性」が、殊に「醜悪な魯鈍なもの」に対して容赦なく炸裂する様として描く。

    *舌切り雀。
    お爺さんの言い分もわかるけどお婆さんもまあ可哀想だよなあ。
    舌切り雀の冒頭で、桃太郎をなぜ書かなかったのか、ということが延々と語られる。これが面白い。こんな感じ↓である。

    1945年、言論統制の厳しいなか発表された本作品を、太宰は「日本の国難打開のために敢闘してゐる人々の寸暇に於ける慰労のささやかな玩具として恰好のものたらしむべく」書き進めているのであるが、桃太郎というのはいやしくも「日本一といふ旗を持つてゐる男である」。「かりそめにもこの貴い国で第一と言ふ事になると、いくらお伽噺だからと言つても、出鱈目な書き方は許されまい」。だから俺はここではっきり念を押しておくが、ここに出てくる老人や太郎や動物たちなんか、日本一でも二でもなんでもない、代表的人物でもない、日本一は俺はここに書かなかったのだ、「日本一なんか、もしお前の眼前に現はれたら、お前の両眼はまぶしさのためにつぶれるかも知れない」。

    これは文字通り読めば確かに言論統制的にOKそうだけど、相当皮肉ってるというか、笑えちゃうよねえ、と現代の私は思いました。逆手にとってるとしか思えない。

    • koba-aさん
      これも、その内いつか貸してくださ―い。
      これも、その内いつか貸してくださ―い。
      2014/03/10
  • 民話のキャラクターをこんなに生々しく「人間」に改変できるのか、と脱帽。特に、「カチカチ山」の醜い狸の愚かさと純情に感じ入った。太宰治は、相反するものが同居する人間の、一言で言えない感じを生き生きと表現するのが特に上手な人だと思っているのだけれど、その好例の短編集。

    「浦島太郎」の竜宮城と「舌切り雀」のお宿のシーンは、幻想小説として読んでも美しくて面白い。「桜桃の花びら」を口に含むといい感じに酔ってくるって、すてきである。

  • 空襲が始まると、5歳の娘を抱きかかえ防空壕へ入る。むずがる子供をなだめるために、絵本を読み聞かせる。

    ムカシ ムカシノ オ話ヨ

    瘤取りじいさん
    浦島太郎
    カチカチ山
    舌切雀

    子供に読み聞かせるお話とは別のお話が、心の中に湧き上がってくる。
    これがブラックユーモア満載。

    芥川龍之介の『猿蟹合戦』もブラック満載だったけど、これも、なかなかのもんですよ。
    お伽噺は、読み方によっては怖~いお話なのです。

  • おとぎ話のパロディ。
    瘤取り、浦島さん、かちかち山、舌切り雀。

    単純に面白かった。
    桃太郎を省いた理由(言い訳)がまた面白い。

    「走れメロス」と「津軽」しか読んだことがない私には、
    太宰治のイメージが大きく変わった。

  • 電車の中などスキマ時間に少しずつ読んだ。思わず吹き出してしまうようなところもあり、楽しめた。

  • 「ラブライブ!サンシャイン!!」の第4話で国木田花丸が読んでたから…というしょうもない契機で手にとったものの、そりゃあまあ面白いですよね。軽妙な語り口と抜群のユーモアセンスに夢中になりました。「瘤取りじいさん」「浦島太郎」「カチカチ山」「舌切雀」を収録。土地勘もあったことも手伝って「カチカチ山」が一番好きです。

  • 太宰らしくてとてもいい
    きちんと感想をまとめられたらいいけど保留

  • お伽話とは辞書をひいてみると「現実にしばられない想像・子供たちをよろこばせようとして話されるお話」とある。
    そんなお伽話を何重にもひねりを効かせて再構築された、現代版(といっても大正、昭和初期)御伽草子。

    御伽草子には教訓、啓蒙的、空想的内容のものが多い。太宰治が書くところの御伽草子も多分に教訓的であるのだが、内容がうがっている。

    例えば「浦島さん」。海辺で助けられた、例の亀の種類の考察から始まって、なぜ浦島太郎は海辺に頻繁に出掛けていたのか、乙姫とはどういう人物だったのかなどということをやたら理屈っぽく書いている。
    亀と浦島太郎の会話はまるで漫才のような掛け合いで可笑しさもある。

    各話の最終何行かで太宰の言いたかった事がわかる。それは救いであったり、どうしようもない程のせつなさであったりする。

  • 太宰治の面白さがぎゅっとつまった作品だと思う。カチカチ山は今の世の中にも見られる話になっていて面白かった。

  • 大いに滑稽で、少し皮肉な、太宰版お伽話。太宰さんのことが好きになってしまった一冊でした。
    特に、竜宮城の饒舌な亀が、つらつらと浦島太郎に文句をつけるところがたまらん。カチカチ山も良かった!兎は16歳の美しくも残酷な乙女で、そんな彼女に恋するのは、鈍重で汚らしいけど憎めない狸。最高だ〜

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著者プロフィール

1909年6月、青森県生れ。学生時代から小説の創作を始める。東大仏文科入学を機に上京。在学中に非合法運動に従事するもやがて転向し、以降、本格的な執筆活動を開始する。1935年に「逆行」が第1回芥川賞の次席となり、翌年、第一創作集『晩年』を刊行。1939年に結婚し、「富嶽百景」や「女生徒」、「走れメロス」などを発表。戦後には『斜陽』がベストセラーとなり、流行作家となる。「人間失格」を発表した1948年の6月に、玉川上水で入水自殺。織田作之助、坂口安吾らと共に「新戯作派」「無頼派」と呼ばれた。

「2019年 『太宰治 女性小説セレクション 誰も知らぬ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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