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感想・レビュー・書評
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この作品が当時のプロレタリア文学界に衝撃を与えたのは分かる気がする。
モダンだからだ。
これも想像だが、当時のプロレタリア文学は、残酷な労働と陰鬱な生活を描いた暗く重たく深刻なものばかりで、行き場のない憤怒とともに打倒資本家階級! プロレタリア革命万歳! と絶叫して終わるという、こういってはなんだが、ひどくダサく泥臭いものばかりではなかったか。
そこに外国航路の船から降り立った若者登場である。青年はセーラー服で横浜の夜の街を闊歩する。出だしからカッコいいではないか。
そこで不思議な出来事を経験するのであるが、資本主義の最底辺を象徴する場面の中にも、巧みに性が絡んでくるので、なおさら読者―たぶん男性がほとんどだったろう―は惹きつけられる。
その女性に対する青年の反応は―心理的な意表のつき方も含めて―いちいち納得できるものなので、読者はグウの音も出ない。
ハイセンスなプロレタリア文学の誕生といえるだろう。 -
ショッキングな内容、みずみずしい描写など、とても1925(大正14年)発表とは思えぬほど古びていない。何箇所か判読不能ということで欠損した部分があった。
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初プロレタリア文学。若くてぴちぴちしてて、こんな世界は間違ってる!っていう義憤に溢れてて、なんだか爽快感があった。もちろん女の人はひどいことになってるんだけど、基本的に登場人物に悪いやつがいなかったからかな。
今が舞台だったら「自己責任」とか言われちゃうんだろうか。同調圧力には敏感なのに、連帯する方法は忘れてしまっているのかもしれない。