恩讐の彼方に

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  • ALLVD (2012年9月27日発売)
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感想・レビュー・書評

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  • 寛忌 1919年 大正8年
    菊池寛を読むなら「恩讐の彼方に」のつもりでしたので、「本性」からの、仇討繋がりではないのですが。
    江戸時代、主人の妾と密通した事から、手討されそうになったところを、思わず反撃してしまい主人を殺めてしまった男。妾と共に逃亡暮らし。美人局から追い剥ぎなど悪事を重ねて生活する。しかし、本来悪人では無かった男は、女に嫌気がさして、出家する。その後は、罪と向き合い、危険な峡谷に洞門を掘り上げる事で、人命を助けようと一人ノミを振い続ける。その苦行の様子は村人の心も揺さぶる。
    殺した主人の息子は、十年もの間仇討ちを果たすため、諸国を巡っていた。遂に、見つけた仇は、懺悔の道をいく老僧となっていた。洞門の開通を見て仇討ちを果たすため、息子も、ノミを持ち、掘り進める。いよいよ、開通の光を見た時、共に喜び合う。
    大分の青の洞門を開拓した禅海の話が元になっているようですが、仇討ち等は創作。そうすると、ほぼ創作になりそうです。
    初読は、中学生だったと思う。その時は、懺悔の行為や、許す心情に感動したんだろうと思います。
    今となっては、この主人公は、最初の主人殺害以外も、生活の為に旅人を殺しているところが、ひっかっかる。
    苦役で償い、その洞門が、これから何人もの命を守るだろうということで納得いたします。

    • ひろさん
      おびさん(*´˘`*)
      ちょうど読んだ小説に菊池寛が登場して気になっていました!
      仇討ちのお話なのですね。
      中学生の頃と今とで感じることが違...
      おびさん(*´˘`*)
      ちょうど読んだ小説に菊池寛が登場して気になっていました!
      仇討ちのお話なのですね。
      中学生の頃と今とで感じることが違うのもおもしろい発見ですね。
      難しそうですが、挫折覚悟で読んでみようと思います( ¯ᵕ¯ )♪
      2023/03/07
    • おびのりさん
      ひろさん、ご無沙汰です♪
      最近、ひろさんも読むペース上がってますよね。
      忙しいでしょうにね。
      この小説は、真っ直ぐなストーリーだから、読めち...
      ひろさん、ご無沙汰です♪
      最近、ひろさんも読むペース上がってますよね。
      忙しいでしょうにね。
      この小説は、真っ直ぐなストーリーだから、読めちゃいますよ。私も菊池寛は、父帰ると2作しか読んでないんです。
      文学忌にその方の小説を読もう!個人的シリーズでした。
      2023/03/07
    • ひろさん
      最近は、読む読書 < 聴く読書な感じで楽しんでます♪
      文学忌にその方の小説を読もう!シリーズ
      いいですね~(*>ω<)b
      ありがとうございま...
      最近は、読む読書 < 聴く読書な感じで楽しんでます♪
      文学忌にその方の小説を読もう!シリーズ
      いいですね~(*>ω<)b
      ありがとうございます♪私でも読める気がしてきました!挑戦してみますね~!
      2023/03/08
  • 柚木麻子さんの『ついでにジェントルメン』に登場した菊池寛。
    とても魅力溢れるキャラクターとして描かれており、菊池寛の作品を読んでみたいなぁと思っていたところで、おびさんのレビューを読みこの作品に決めました!
    難しくて挫折しそう…と構えていましたが、おびさんのおっしゃるように真っ直ぐな話で読みやすかったです。
    40頁弱と短い話のなかに物語の真髄がギュッと詰め込まれていました。

    前半は、市九郎の話。
    主君殺しの大罪を犯した市九郎。
    次々と悪行を重ねる市九郎に同情の余地もない。
    しかし市九郎にも良心が残っていた。
    人々を救おうと僧侶となり、生涯をかけての難工事に邁進する。
    生涯をかけても償いきれないほどの大罪。
    はたして善行を積むことは罪を償うことになるのか。

    後半は、実之助の話。
    殺された主君の子である実之助。
    仇討ちをすべく旅に出る。
    そしてついに市九郎を洞窟で発見する。
    しかし大切な人を殺した憎き相手は善人の僧侶となっていた。
    さて復讐の機会がやってきたとき、実之助はどうするのか。

    あのとき、市九郎は実之助に仇討ちされたかったのではないか。
    罪を背負いながら生き続けることは苦しい。
    楽になりたいと思った瞬間もあったに違いない。
    決して赦されることがない罪。一生背負って生きていくという覚悟。
    市九郎のことをなんて酷いヤツなんだと思っていたのに、後半にはもう勘弁してあげてと思わずにはいられなかった。
    市九郎を受け入れた実之助も含めた二人の決断と覚悟。
    罪、償い、復讐、赦し。
    加害者と被害者という立場でありながら、それをも超越した境地。
    人間の愚かさと偉大さとが見事に描かれていた。
    この作品に出会えてよかった。

    • おびのりさん
      ひろさん、こんばんは♪
      本質をついた素敵なレビューです。
      さあ、古典の世界へ。
      ひろさん、こんばんは♪
      本質をついた素敵なレビューです。
      さあ、古典の世界へ。
      2023/03/10
    • ひろさん
      おびさん♪
      この本を教えていただきありがとうございました(*´˘`*)
      時代は違えど人間の心を描いたお話って胸を打たれますね!
      さすがにスラ...
      おびさん♪
      この本を教えていただきありがとうございました(*´˘`*)
      時代は違えど人間の心を描いたお話って胸を打たれますね!
      さすがにスラスラは読めなかったですが( ˊᵕˋ ;)
      また他の古典作品も教えてください~♪
      2023/03/11
  • 難しそうな文学作品を漫画で簡単に知るのではなく、原作を読もうかなとブクログで発言してしまった一冊。
    さっそく青空文庫で読んでみた。
    良かった…"読むよ読むよ詐欺"をせずに済んだ^^;

    市九郎が自らの罪業において良心の呵責に苛まれる描写が見事であった。
    また美濃国大垣にある浄願寺に辿り着き出家するのだが、寺の上人の言葉が良かった。
    「重ね重ねの悪業を重ねた汝じゃから、〜(略)〜現在の報いを自ら受くるのも一法じゃが、それでは未来永劫、焦熱地獄の苦艱を受けておらねばならぬぞよ。それよりも、仏道に帰依し、〜(略)〜身命を捨てて人々を救うと共に、汝自身を救うのが肝心じゃ」。
    人々を救う事で、己をも救う…なるほど。

    関係ないかもしれないけど、「一日一善」という言葉を思い出す。
    難しい言葉や四字熟語を知ったり、仏教の教えを考えたり、勉強になって良い読後感を持てた。

    • ポプラ並木さん
      なおなおさん、共読!嬉しいです。
      おっしゃる通り、<良心の呵責に苛まれる描写>ですよね。
      自分はそれにもまして、赦しとは何か?復讐心を凌駕す...
      なおなおさん、共読!嬉しいです。
      おっしゃる通り、<良心の呵責に苛まれる描写>ですよね。
      自分はそれにもまして、赦しとは何か?復讐心を凌駕する自戒、色んな意味合いを感じました。今の世界情勢、このような心が重要なのかもしれませんね。なおなおさんの感想、素直で心地よくて素晴らしいと思います!
      2022/05/25
    • なおなおさん
      ポプラ並木さん、こんばんは。

      赦しとは何か、復讐心を凌駕する自戒…そうそう、私もそれを言いたい!私のレベルではこんな言葉は出てこない。
      ポ...
      ポプラ並木さん、こんばんは。

      赦しとは何か、復讐心を凌駕する自戒…そうそう、私もそれを言いたい!私のレベルではこんな言葉は出てこない。
      ポプラ並木さん、ありがとうございます(^_^)
      2022/05/25
  • オーディブルで聴了。
    槌とノミだけで洞窟を掘りすすみ30年かけ完成させた「青の洞門」。来年は禅海和尚の没後250年とのこと。数年前観光で訪れたときの美しさは覚えているが、菊池寛の記念碑があったことはおぼろげな記憶。読了してからの訪問であればもっと感動したのではと後悔。
    命を守ること、奪うこと、罪を償うこと、罪を憎むこと、赦すこと。罪を重ねた市九郎と復讐心に燃える実之助が、一緒に洞窟を掘り進める共同作業で生まれた感情、達成感。朗読は読書と違った趣で、臨場感、没頭感が持てた。
    若い夫婦を殺めたときのことはかなりの衝撃で、その無念さを想うと、彼らの人生を奪ったことに対する罪滅ぼしとしてはどうなのかと考えてしまう。赦すことの難しさを考えさせられる。

  • 読友さんと有名な古典の不定期読書1回目。「菊池寛・恩讐の彼方に」推薦される本だけあって素晴らしい内容だった。市九郎は武士であり主人の中川三郎兵衛に切りつけ、女中(お弓)と逃亡する。生きていくためには道中で恐喝、窃盗、殺人をしないといけない。市九郎はとある夫婦をふいに襲って殺害、罪悪感とその恐怖でお弓の下を離れる。九州に出家した市九郎(了海と名乗る)。崖で亡くなる人が多いことを聞き、トンネルを21年間掘り続け、罪滅ぼしをする。赦す、赦されるの意味、罪の荷を下ろした時の市九郎のホッとした心情が伝わってきた。⑤

    • なおなおさん
      ポプラ並木さん、こんばんは。

      私も読んでみました。
      きっかけは最近読んだあの漫画です。
      感想書くのは私のレベルでは難しいので短めにしました...
      ポプラ並木さん、こんばんは。

      私も読んでみました。
      きっかけは最近読んだあの漫画です。
      感想書くのは私のレベルでは難しいので短めにしましたが^^;
      2022/05/24
  • こちらも「青空朗読」で聴読。
    小学生くらいのころに、何かのマンガで「青の洞門」を読んだ記憶がある。
    この小説は、その「青の洞門」(大分)を掘った禅海和尚の実話をモデルとして創作された作品とのことである。

    小説では、主殺しや人斬り強盗を働いてしまった罪に苛まれ続けた主人公・市九郎(のちに出家して了海)が、その罪滅ぼしに、人々が命を落とす難所にトンネルを掘ることに自分の残りの人生をすべて費やし続け、完遂するまでのドラマが描かれていた。そこには、市九郎に殺された父の仇討を願い続けてきた実之助との絡みも描かれている。

    了海は小説上では20年超をかけて、ノミと槌だけで掘り進んだ。
    実際の禅海和尚は約30年かけて彫りぬいたとのこと。

    ネットでその長さを調べてみたところ、「ノミと槌だけで掘り抜いた長さは約342メートル、そのうちトンネルの部分は約144メートル」と記されていた。

    仮に330メートル30年とすれば、1年に11メートル、そうすると月に1メートルほどということになる。とてつもない地味な作業である。その間、それを見ていた周囲の者から狂人扱いされたというのもわからないでもない。

    そしてまた、その地味な作業を何年もやり続けることにより、周囲の心が協力の心へと変化したり、そしてまた離れて行ったりというようなことが小説の中でも描写されている。

    仇討をトンネルの開通まで待ってくれと石工に頼まれた実之助は、仇討の時期を早めるために、穴掘りの作業に協力する。そして、トンネルが貫通したとき、了海の成し遂げた姿を目の当たりにして、その仇討の心は浄化されて消えてしまうのである。

    人の心の移り変わりをとらえた作品であるなと感じた。

  • 中学生の時に少し触れたくらいで、何も知らずに大分の「青の洞門」に行った際に「ほんとにあったのか」と驚いた記憶がある。
    ディティールもよく分かっていなかったので、今回読んでみてなるほどと思う部分も多かった。
    知らない単語がたびたび出てきたので調べながら読んだけれど、文章は完結でリズム感もよく、情景も目に浮かびやすかった。
    これくらい少し昔(明治から昭和初期)の名作と言われるものは、総じて文章が読みやすい傾向にあるのかもしれない。

  • 主人公が洞窟を掘るにあたり、人々の変化が描かれている所が印象に残った。逆に、おかした犯罪や仇討ち者の心境の変化をもう少し詳しく書いてあったらなと感じた。
    ちょっと物足りない。短編だから仕方ないか。
    贖罪のためにのみをふるう。でも果たして贖罪だったのだろうか?単なる罪悪感から逃げていただけではないだろうか?そこまでは書かれていない。仇討ち者が登場し、仇討ちされても仕方ないと前に出る主人公。多くの罪を背負ったうえで、殺されるという選択肢を受け入れることで多くの犯罪への後悔から逃げたかった、安心したかったのではないか?もちろんそこまで書いていない。(2回目)
    一心不乱にのみをふるうシーンが書かれているが、一振り一振りにどんな思いを込めていたのか?それを想像するのが読者の仕事だろうなと感じた

    贖罪:善行を積んだり金品を出したりするなどの実際の行動によって、自分の犯した罪や過失を償うこと。罪滅ぼし。
    「贖」はもともと「刑罰を免れる代わりに金品を差し出すこと」を意味する漢字

    犯罪という言葉を調べてみて、法律に触れない罪をなんと表現するのか、言葉を検索したが出てこなかった。類義語では反則、侵害、悪業、悪行、違背、違犯、違反が挙がったが、全部規律があっての違反だった。マナー違反では薄い気がする、日本語って難しい。

  • 罪を反省し、罪を償う事とはどうであるか考えさせられた

    刑務所に入れられるのは自分が受けること
    償う事は自ら行うこと

    これらは本当は別である事
    どうも刑期を終えたらそれで終わりとなっているようで
    そうすると再犯も可能性が高くなる

    償うという事は自分と向き合う大変な行為だと思う

  • 市九郎は妾を奪うために主人を殺害して逃亡、強盗殺人を繰り返す。
    ゲス過ぎてしょうがないが、猛省し仏門に入る。
    九州に渡り、通行の難所で何人もが命を落としている場所があり、そこでトンネルを掘ろうと決意する。
    犯した罪は消えないが償うため周囲の嘲笑を受けても止めない。
    次第にその懸命さに人々は心を動かされる。
    もちろん罪は犯すべきではない。
    罪を犯した人は更生できるのか、そして社会でも認められることができるのか、考えさせられる。

    主人の息子が仇討ちに来る。
    息子には大義名分がある。当然の報いだ。
    しかしラストは、ほぉぉっと感心させられ
    拍手したくなる。

    この物語に出てくる九州の手掘りトンネルは大分県中津市本耶馬渓町に実在する「青の洞門」がモデルらしい。手掘り…気の遠くなるような作業だっただろう。

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著者プロフィール

1888年生まれ、1948年没。小説家、劇作家、ジャーナリスト。実業家としても文藝春秋社を興し、芥川賞、直木賞、菊池寛賞の創設に携わる。戯曲『父帰る』が舞台化をきっかけに絶賛され、本作は菊池を代表する作品となった。その後、面白さと平易さを重視した新聞小説『真珠夫人』などが成功をおさめる一方、鋭いジャーナリスト感覚から「文藝春秋」を創刊。文芸家協会会長等を務め、文壇の大御所と呼ばれた。

「2023年 『芥川龍之介・菊池寛共訳 完全版 アリス物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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