高野聖 [Kindle]

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  • 2012年9月27日発売
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レビュー : 30
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (69ページ)

感想・レビュー・書評

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  • 予想外だったりスピーディーな展開の小説は面白い。けれど、たとえそれらを欠いていたとしても、徹底的に選び抜いた美しい言葉と巧みな構造で独自の世界観を築き上げれば人を惹きつけることはできる。
    泉鏡花を読むたびにそれを実感している気がします。

    敦賀に向かう汽車の中で言葉を交わし、同じ宿の同じ部屋に泊まることになった若者と中年の僧侶。眠れない若者は、僧侶に諸国を歩いて体験したおもしろい話を所望する。
    そこで僧侶は、若い時分に飛騨の山越えをした折の不思議な体験を話す…。

    ストーリー自体は正直、読んでいる途中で結末がわかってしまう、日本昔話にあるようなお決まりの怪談というか怪綺談です。

    それなのに、いかにも鏡花らしい、絶妙に配置した言葉によるリズミカルな文章の美しさと、目の前に映像が浮かびあがるようなきめ細やかな情景描写、そして、幻想と現実を絶妙なタイミングで行き来する「語り物」の構造の見事さがあわさって生まれる妖艶な世界観に引きつけられて、グイグイと最後まで読んでしまいました。

    百物語のお決まりの一編を、言葉選びと雰囲気づくりが上手な噺家さんにしてもらえる、ぐらいの気持ちで楽しむといい作品。

  • 若狭に帰省する私は、同じ汽車で永平寺に向かう修行僧(宗朝)と敦賀の旅籠に同宿することなりました。その夜寝付かれぬ私は、諸国行脚をしている宋朝に何か面白い話をねだりますと、飛騨の山越えで信州へ向かっていた折の怪奇な体験を語り始めるのでした。歯切れのよい研ぎ澄まされた文体での語り口は、めくるめく幻想の世界へといつしか読む者を惑わしていきます。【泉鏡花】による明治33年の短編小説です。

  • 現在は冬、回想は夏。蛇や蛭の描写や女の艶めかしさなど非常に映像的。
    体言止めもリズミカルで独特の雰囲気がいい。
    リアリティラインも絶妙。

  • お嬢さんのパワーが圧倒的で、でもそれにしても坊さまったら思い詰めるのが早すぎでしょう。「女の色香の魔力」の話なんだと思うけど、お嬢さんの境遇が気の毒で。せっかくの特殊能力なんだから使ったらいいよ!って思った。

    蛭のシーンは実に気持ち悪くてよかった。

  • 話の流れがよく見えず、最後になるほど〜となった。

  • 回想の形で語られる物語は、どこまでも幻想的で非現実的。
    なのに蛇や蛭の気味悪さや女の艶めかしさは妙にリアリティがあって光景が想像できるようで、夢と現実の境界線をぼんやり溶かされていくような感覚を覚えた。
    ただの怪談で終わらない、さすがの名著。

  • 僧侶の体験談で出来上がっているお話。各章は僧侶の語りで始まります。流れるような文体で蛇や蛭の話が語られるとほんとうにゾクゾクしてきます。そして艶めかしい女の誘惑…。僧侶だからいろに負けてはならぬ、と思いながらも泥沼にズブズブはまっていく様子が恐ろしい。

    途中、音読してみたらとても気持ちよく、文章の美しさが身に沁みました。初めての、しかも慣れない文語調なのにつっかえずに読めるのは、文章の秀逸さによるのでしょうね。私ごときが言うのもおこがましいのですけどね。

    僧侶が今こうして若者に語っているので無事逃げ帰れたのだと安心。でも待てよ、まさかこの僧侶…と若者が心配になったのは私だけ?

  • 2020/03/16

    昔話の雪女にどこか似ている幻想的な短編でした。

    高僧が若い頃に体験した奇妙な話を汽車にたまたま同乗した若者に語って聞かせるのですが、
    険しい山道に蛇や山蛭が出てくるところから、まず非常に気味が悪い。
    特に大量の山蛭が身体に食いつき、血を吸い太っていく様子が印象的でした。

    ようやくたどり着いた山小屋で美しい女に出迎えられるのですが、この女は関係を持った男を獣に変える魔力を持っていました。
    滝で背中を流されながら女に誘惑される場面は艶っぽいですが、女の傍に妙にコウモリや猿が集ってくるな思うと、少し背筋が寒くなります。

    泉鏡花自身、師匠の反対を押し切って芸妓と結婚しているのですが、
    男を狂わす魅力的な女に対して男が抱える普遍的な葛藤を作品に昇華したように感じました。

  • 電子書籍、無料でこういうの軽く読めるのはいいわ。ちょっとした空き時間でなんとなく読んでしまった。昔の日本文学も、いいねぇ。薫りが良い。

  • ある男性が、列車に乗り合わせた高僧に昔の話を聞く…というていで話が始まる。

    若い修行僧だった宗朝は、飛騨から信州へ山越えをしていた。
    休憩したふもとの茶屋で富山の薬売りに出会うが、薬売りは一足先に山へ踏み込む。
    地元の人間からその道は危ないと聞いた僧は、そのことを伝えに薬売りを追いかけるが、蛇やヒルなどがうじゃうじゃ。
    何とかそこを抜けると一件の家に辿り着く。
    そこには年増だが美しい女と、どこか抜けた様子の男が住んでおり、別の男に馬を売りに行くように頼んでいた。

    女は宗朝を泊めてくれるという。その厚意を受けることにした宗朝。女に連れられて川へ体を流しに行く。
    女はそこで素肌を晒し、宗朝を惑わせる。女の肢体にはコウモリやヒルが纏わりつくが、家に着いてからも色香に酔う宗朝。
    水浴びから帰ってきた宗朝を見て、馬売りの男は「もとの体で帰ったのか」と不思議な事をいう。

    その夜、宗朝は家の周りを鳥や獣が二十も三十も取り囲んでいるような異様な気配を感じ、女の怪しい声も聞く。
    宗朝が一心不乱に経を唱えるとやがて気配は静まり、女も静かになった。

    翌朝、宗朝は一夜の礼を言ってその家を発ったが、女の色香が忘れられず、引き返そうとする。
    しかし、そこで馬売りの男と出会う。男の口から、女の正体が語られる。
    女はもともと医者の娘だったが、不思議な力を持ち、あそこに住むようになった。色狂いで、水浴びしながら男を弄び、やがてその姿を獣へ変えてしまうという。
    昨日連れていった馬は女の魔力によって姿を変えられた薬売りの男。女にまとわりついた動物たちも姿を変えられた男たちの成れの果てだった。
    それを聞いた宗朝は、女への想いを捨て去り、山から抜け出す。

    僧侶であるはずの宗朝が、女の色香にすっかりやられている。
    全体的に不思議な感じなのに、私的にはどこかコミカルさが感じられた。
    宗朝の煩悩(食事が粗末だったとか、女と一緒にいる男が莫迦すぎるとか)が割とあけすけに書かれているせいかも。

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著者プロフィール

1873-1939年。小説家。代表作に「高野聖」「草迷宮」「歌行燈」ほか。

「2020年 『雨談集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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