猫町 [Kindle]

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  • 2012年9月27日発売
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感想・レビュー・書評

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  • 私も結構な方向音痴。
    確信を持って向かっているのに、全く逆方向に進んでいたり、向きが変わると判らなくなってしまうタイプ。

    何となく、注文の多い料理店をイメージした。
    あと、千と千尋の神隠し?
    でもこれは怖い話ではなかったけど。

    自分の気持ち次第で見える景色の印象は変わる、そんな単純な話ではないだろうけど。

    もうずいぶんと旅行なんて行っていないけど、旅先で、目新しく見える世界も、そこで暮らしている人々がいて、その人たちにはそれが日常で現実。
    そういう気持ちはなったことがあるなぁ。

  • 見る方向を変えると別の世界に見える。そんなことってたしかにある。本書は哲学的でちょっと難しいですが、ラストの猫の精霊がいる町を想像して、そんな街に迷い込みたくなりました。

  • 方向音痴がこんなロマンに繋がるとは。夢のような美しい町の違和感に気付き、突然恐ろしくなるところでゾワゾワした。

  • 油絵の裏側にはどんな景色があるのだろう。この疑問は大人になった今も解けていない。
    猫のシーンは少ないですが、強烈です。題名からどんなファンタジーかと想像しましたが、そうではなくて、ここまで極端ではなくても同じような体験をしたことは誰にもあると思う。特に私は方向音痴なので、分かるなあ。

  • 薬物服用中に書いたのかな?
    けど、最初と最後は正気のときに書いた感じ?

  • 迷い込んだところは猫ばかりいる町。夢か現実か。
    文章が綺麗で、ファンタジー感のある世界とマッチしてて良い。

  • 思ったより猫度が低かったのが残念です。

  • 私自身、方向音痴の気があるので、いつもと反対側から町を眺めると全然違った場所に見える…という感覚はよくわかる。
    その日常の感覚を、これほど幻想的かつ不気味に描き出すことができるなんて、詩人の筆というのは凄い

  • 多頭飼育崩壊という言葉がある。はじめはたった一匹や二匹の猫を飼っていたに過ぎなかったのだが、猫の強すぎる繁殖力のために次第に飼い猫が増え、遂には飼い主が生活を乗っ取られることさえあるという、最近巷で話題になっている事象だ。猫は一回あたり2~3匹の子猫を生むが、この子猫は1か月半もするともう母体として子供が産めるような体になる。そして猫には発情期が年に3回ほどある。これだけで一匹の猫がどこかで子を孕んでくれば1年で約6から9匹程度の増殖であり、その子供がさらに1年で6~9匹の子供を産むわけで、どんどんその数は増えていく。まさにねずみ算ならぬ猫算。買い始めてからわずか一年半程度で家を乗っ取られる飼い主もいるという。なんとも恐ろしい事象だ。
    この作品の猫町、というタイトルを見たとき、私はうっかりその多頭飼育崩壊を思い出した。そして萩原朔太郎のことだから単純に猫がかわいいとかそういう話を書くのではないだろうな、と予感をしていたがそのまさかが的中した形である。書き表されるのは方向感覚の狂いと、何かが起こるのではないかという予感、そして唐突に表れる猫の大群だ。旅にすっかり興をなくしてしまった主人公が歩いてみているのは極彩色の幻想の町であり、どこかにあるかもしれない猫の群れの町。何でもない床屋の看板や家々の屋根さえもどこか不気味に感じるような、生物的で寂れた風景がひたすらに描写されている。ただ歩いているだけなのにこの子細な街の表情を写し取っていく様は何というか、萩原朔太郎という不思議なフィルターを通してこそなせる技、という気がした。冒頭に「まったくありのまま書く」と言っているがありのまま書いたにしてはあまりに抒情的で、見ることが難しい世界を描き、読むものを引き付けて離さないところがある。
    私はあまり詩を嗜まないのだが萩原朔太郎の詩には異常に惹きつけられるものがあり、彼の詩を読んで初めてその鑑賞方法が分かったような気になっているのだがこの話を読んでみて改めて彼は天才だと思った。というか、小説が嫌いという割には小説家に読ませても大体理解してもらえそうな、ちゃんと引き付けてくるような文章を書いているのである。何を書かせても面白いのだからやはり天才なのだろう…という結論しか言えないのだが、この猫町、という散文には何かわびしさの中の冒険心を感じて少しわくわくした。
    ところで最初のあたりでお薬の話が出てきたのもそういう嗜みがあったということなのだろうか…

  • 薬物中毒の過去を持つ主人公は、とんでもない方向音痴。
    ちょっと半時間の散歩に出ただけでも近所で迷子になる始末。しかも本人は「旅に出たような新鮮な気分だ」とのほほんとしている。そんな主人公はある日不思議な街に迷い込むが、その街は住民がみんな猫のようで…。

    迷子になったら心細くて探検気分なんて味わっていられないと思いますが、ここまで開き直って楽しめたらいいですよね。

    「自分は絶対に帰れる」という自信が必要なんだろうなぁ。

    猫の街、行ってみたいです。

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著者プロフィール

萩原朔太郎
1886(明治19)年11月1日群馬県前橋市生まれ。父は開業医。旧制前橋中学時代より短歌で活躍。旧制第五、第六高等学校いずれも中退。上京し慶応大学予科に入学するが半年で退学。マンドリン、ギターを愛好し音楽家を志ざす。挫折し前橋に帰郷した1913年、北原白秋主宰の詩歌誌『朱欒』で詩壇デビュー。同誌の新進詩人・室生犀星と生涯にわたる親交を結ぶ。山村暮鳥を加え人魚詩社を結成、機関誌『卓上噴水』を発行。1916年、犀星と詩誌『感情』を創刊。1917年第1詩集『月に吠える』を刊行し、詩壇における地位を確立する。1925年上京し、東京に定住。詩作のみならずアフォリズム、詩論、古典詩歌論、エッセイ、文明評論、小説など多方面で活躍し、詩人批評家の先駆者となった。1942年5月11日没。

「2022年 『詩人はすべて宿命である』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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