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感想・レビュー・書評
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木下恵介の映像化を見ると無性に原作が読みたくなりました。映画の舞台は信州ですが、原作では矢切。里見家の末裔という設定です。この方が旧家としての気風が伝わりますね。政夫と民子は自らの恋情に対して能動的な行動は一切とりません。家長制のもと母が強い権力を持っているからです。夏目漱石は「自然で淡白で可愛そうで美しくて野趣があって」いいと言っていますが、その通りですね。彼女のお墓の周りに野菊を植えたことは大切で、映画でカットしたのは惜しい。老人が出てきて回想し、お墓を詣でる設定に難があると思いました。
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切ない物語。二人の悲恋以上に、主人公の母親の悲しみが胸に迫る。自分が若いころなら若い二人に心に沿うのだろうが、今の私は母親の強い後悔が刺さってくる。
前半は二人の初恋のういういしさがぎこちない会話と共に描かれる。野菊とりんどうという可憐な花を題材に、甘酸っぱさを漂わせる。
この物語が悲劇となることはタイトルから推察できる。周囲の悲嘆が本人以上のインパクトで描かれ、だからこそよけいに読者の心に響いてくるのだと思う。
しみじみとした文体と、草いきれと、青春のはかなさが、いつまでも残っている。 -
千葉の風景や季節ごとの風習、結婚についての考え方は時代を感じますが、民さんとの関係や主人公の心境には時代を感じず、そのまま感情輸入できます。
もどかしくも幸せな時間の描写が上手く、読み終えて悲しくもあり楽しくもありと表現された心境がよくわかります。 -
映画の主題歌だった、松田聖子さんの『花一色~野菊のささやき』を聞いて読んでみた。
二人の細やかな恋とあっけない終わり。 -
NDC 913.6
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細部の文章や描写はやや甘いが、全体としての清冽な抒情は疑うよしもない。(長塚節)
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病院の待合室で読みました。漱石が絶賛した、なんとも素朴で初々しい純愛小説。当時、この本を読んでどれほど多くの若者が涙したのでしょう。いまのこの国がなくしてしまった、純粋で美しい日本が感じられます。ただしそれは、安倍晋三が目指しているものとは全く正反対の姿です。
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民さんは野菊のようなひとだ」あまりにも有名なので、ちゃんと読んだことがなかった。ところでたみさんはどうして亡くなったんだっけ?と思って読んだ。哀しいお話だけど、ラストは読んでいて腹が立ってならない。まぁ明治期だから仕方ないかもしれないけど、亡くなってからあんなに謝ったってしょうがないものを。自然描写が美しくてきれいな空気に触れたような気持ちになる。思っていたよりも、たみさんは明るくてかわいい女の子だった。