野菊の墓 [Kindle]

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  • 2012年9月27日発売
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感想・レビュー・書評

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  • 木下恵介の映像化を見ると無性に原作が読みたくなりました。映画の舞台は信州ですが、原作では矢切。里見家の末裔という設定です。この方が旧家としての気風が伝わりますね。政夫と民子は自らの恋情に対して能動的な行動は一切とりません。家長制のもと母が強い権力を持っているからです。夏目漱石は「自然で淡白で可愛そうで美しくて野趣があって」いいと言っていますが、その通りですね。彼女のお墓の周りに野菊を植えたことは大切で、映画でカットしたのは惜しい。老人が出てきて回想し、お墓を詣でる設定に難があると思いました。

  • 青空文庫にて読了。

    とても綺麗な風景描写や冒頭からの2人の関係を微笑ましく思いながら読み進めていたが、途中で題名に気づいてからは、切なくて胸が痛み続けた。
    たった2歳の差がこんなにも苦しい時代があったのだと驚く。

    古い作品ながら、その古さをあまり感じさせない、普遍的で純粋な恋愛小説だった。

  • 切ない物語。二人の悲恋以上に、主人公の母親の悲しみが胸に迫る。自分が若いころなら若い二人に心に沿うのだろうが、今の私は母親の強い後悔が刺さってくる。

    前半は二人の初恋のういういしさがぎこちない会話と共に描かれる。野菊とりんどうという可憐な花を題材に、甘酸っぱさを漂わせる。

    この物語が悲劇となることはタイトルから推察できる。周囲の悲嘆が本人以上のインパクトで描かれ、だからこそよけいに読者の心に響いてくるのだと思う。

    しみじみとした文体と、草いきれと、青春のはかなさが、いつまでも残っている。

  • 千葉の風景や季節ごとの風習、結婚についての考え方は時代を感じますが、民さんとの関係や主人公の心境には時代を感じず、そのまま感情輸入できます。
    もどかしくも幸せな時間の描写が上手く、読み終えて悲しくもあり楽しくもありと表現された心境がよくわかります。

  • 映画の主題歌だった、松田聖子さんの『花一色~野菊のささやき』を聞いて読んでみた。
    二人の細やかな恋とあっけない終わり。

  • 眩しいですね。無邪気ないとこ同士が、互いへの恋心を意識し出してから、叶わぬ恋の喪失に至るまでが、瑞々しい筆致で描き出されています。

    千葉県矢切村の旧家・斎藤家の息子政夫(13)と、そのいとこ民子(15)の純粋な恋の悲しい物語。民子は政夫の病弱な母の手伝いに斎藤家に来て、幼少時から政夫と睦まじく過ごしてきた。
    「恋の卵」ともいうべき淡い心を芽生えさせた政夫と民子だったが、世間体や立場が優先される社会のなかで、長じるにつれ、極まりの悪さから互いに距離を置きがちになる。
    やがて、二人は引き剥がされるように離れ離れになる。政夫は中学に入り、民子に会うことがなくなった。民子は嫁に行ったらしいが、詳細は掴めない。そんなある日、「スグカエレ」との電報を受け取った政夫が斎藤家に急ぎ帰ると、民子が死んだと聞かされる。民子は、妊娠6か月で流産をし、その後の経過が悪く亡くなってしまったという。政夫は万斛の涙に暮れる。

    社会的に許されない、あるいは憚られる恋や、叶わなかった恋の喪失感は、古今東西、無数の作品で描かれてきたテーマで、別段珍しくはありません。
    けれども、100年以上前に書かれたこの作品が出色なのは「何か」がちがうわけで。「それ」は、擦れていない、純粋な二人の間柄か。13歳と15歳という、異性を意識し出す時期の、プラトニックな恋愛か。女性が亡くなってしまう悲しさか。しかし、たとえ「それ」が分かったとしても、伊藤左千夫にしか描きえないものがあるからこそ、この作品が古びないのでしょう。

  • NDC 913.6

  • 細部の文章や描写はやや甘いが、全体としての清冽な抒情は疑うよしもない。(長塚節)

  • 病院の待合室で読みました。漱石が絶賛した、なんとも素朴で初々しい純愛小説。当時、この本を読んでどれほど多くの若者が涙したのでしょう。いまのこの国がなくしてしまった、純粋で美しい日本が感じられます。ただしそれは、安倍晋三が目指しているものとは全く正反対の姿です。

  • 民さんは野菊のようなひとだ」あまりにも有名なので、ちゃんと読んだことがなかった。ところでたみさんはどうして亡くなったんだっけ?と思って読んだ。哀しいお話だけど、ラストは読んでいて腹が立ってならない。まぁ明治期だから仕方ないかもしれないけど、亡くなってからあんなに謝ったってしょうがないものを。自然描写が美しくてきれいな空気に触れたような気持ちになる。思っていたよりも、たみさんは明るくてかわいい女の子だった。

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