こころ [Kindle]

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  • 2012年9月27日発売
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  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (378ページ)

感想・レビュー・書評

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  • 『こころ』を初めて読んだのは十数年前、高校のときの課題としてだった。こんな話だったかと、いま、思い出した。改めて読んで思ったのは高校生くらいの時分に強制的に読ますのは止めさせたほうがいい。この小説は沢山の駄作良作に触れてこそ真価がわかる。なるべく早く名作に触れさせたいというのは大人のエゴだ。せっかくの作品を嫌いになってしまう。

    『こころ』は淡々と続く独白と終盤の激情、そこに至る登場人物の細やかな挙動と機微を味わう作品といえよう。漱石の文章はしっとりとして柔らかな、いうなればショパンのような文感を持ちつつも、感情を揺さぶる強さを兼ね備える。主人公とともに抱えきれぬ秘密を押し付けられる唐突な終わりの演出と筆力は、エンタメが揃った現代においても決して劣るものではない。とはいえ、そこに至るまでは小説としての古臭さと退屈さに我慢せざるを得ないのも事実だ。そこまでの道は「日本語」という言語の持つ質感を楽しめるかどうかが肝なのである。

    この名作は、たくさんの小説に触れて文章の良し悪しがわかるようになった大人に是非読んでいただきたい。

  • 「先生」とKの間に起きた事件と先生の自殺に至る経緯が、「先生」から私に宛てられた長い遺書の中に語られる。小説は「先生と私」「両親と私」「先生と遺書」の3部に分かれ、前半の2部で先生の人となり、私の環境が詳細に説明される。
    しかし、本小説の最大の事件である「先生」の自殺については、明らかにされず、前半の2つの章と、遺書の中に述べられるKの精神的特質、西南戦争のときに自決を決意したまま明治天皇の崩御まで35年間待った乃木希典の殉死がヒントとして提出されている。Kの自殺が先生の自殺に多大な影響を与えているのは確かだが、①乃木将軍の殉死を持ってきて、先生が「私に乃木さんの死んだ理由がよく解らないように、あなたにも私の自殺する訳が明らかに呑み込めないかも知れません」とあること②「先生」の過去を善悪ともに他の参考に供するつもり」とあることから、過去の自分のエゴイズムからくる、単なる自己嫌悪による自殺ではありえない。
    非常に暗い小説ではあるが、先生がなぜ人間を恨むようになったのかの経緯、奥さんとの関係が生き生きと描かれる。明治時代の手製のアイスクリームというのはどんなものか見てみたい。
    おそらく数年経って読むと先生の自殺の意味が分かるかもしれない。小説そのものが再読を強く要求する稀有な小説である。

  • 15年振りに再読。100年前に書かれた小説であるが現代にも響く名作。
    読み終わった時にタイトルが深く刺さる。
    今回読むにあたって乃木大将と明治天皇のことを調べたら時代背景もよく分かり、さらに深く考察することが出来たと思う。

  • 昔、中学か高校の教科書に一部分が載っていたはずで、しかし、どの部分かは覚えていないのだが、読んでいて、「殉死」と言う部分は記憶がある気がした。

    最近、漱石を数冊読んだが、「こころ」は文章が美しい。そして、最後に息をのみはらはらする心情描写がすばらしく、傑作だと思う。

  • まず前半で主人公に先生が言った「恋は罪悪だ」という言葉に伏線、
    そして後半の遺書の中ではその言葉の意味が語られる。
    恋において、嫉妬や勝敗に捕らわれてしまった先生の苦悩と
    恋というものが、他の何者よりも残酷なものであるような感覚。

    ただ、ネガティヴな印象だけ残すわけではなく
    だからこそ恋は素晴らしく、尊いのだと
    しっかり感じることができる。
    大切な一冊になった。

  • 『私は冷ややかな頭で新しい事を口にするよりも、熱した舌で平凡な説を述べるほうが生きていると信じています。血の力で体が動くからです。言葉が空気に波動を伝えるばかりでなく、もっと強い物にもっと強く働きかけることができるからです。』

    『私はその時の己を顧みて、なぜもっと人が悪く生まれてこなかったかと思うと、正直すぎた自分が悔しくってたまりません。』
    『私は金に対して人類を疑ったけれども、愛に対しては、まだ人類を疑わなかったのです。』
    『しかし私のもっと痛切に感じたのは、最後に墨の余りで書き添えたらしく見える、もっと早く死ぬべきだのになぜ今まで生きていたのだろうという意味の文句でした。』

    人間や罪、利己心などと向き合わされる小説。心にずんとくる表現が多くあり、大好きな小説です。
    中学校の時に国語の教科書で読んだ時の衝撃はいまだに消えません。きっとこの先も読み続ける小説でしょう。

  • 数年にわたって何度も中断しながら、読書会テキストとして採用したことを契機にしてようやくの読了。新聞連載の一話毎に休憩を挟んで読み進めた。先に進めるのが、何となくもったいないと感じていた。作中で頻出する「真面目」って、何なんだろうと思う。考え続けてみたい。

  • 年を跨いで読了。全く完成度の高い作品です。昔読んだ時より深く読み込めたと思います。黒い影と共に生き続けている、程度の差はあれ皆そうなのかもしれません。ただ文豪ものを読めば読むほど、自殺に寛容になってしまう自分がいて怖い気がします。そこには人が避けたがる要素がある一方、引き寄せる何かがあるのでしょう。まさに生と死は表裏一体ですね。明治が終り殉死のように亡くなった先生と実直なKを、平成が終わろうとする今、改めて偲びたい想いです。

  • 10年ぶりくらいに読んだ。流れるような軽やかな文体や先生とKの人間的な脆さを久々に味わえてよかった。恋愛をめぐる微妙な嫉妬や憎しみ、自分のずるさ、それを後悔するところはいつの時代も同じだと思うのと一方で、今なら10秒ですむ手紙のやり取りが昔だとこんなにも時間感覚がゆっくりだったのだなあと体験してみたい気持ちになる。漱石の他の作品あまり読んだことないので読んでみよう。

  • 昔教科書でごく一部を読んだだけの有名作を初めて最後まで読みました。心情中心で物語に起伏があるわけではないですが、面白かったです。
    ああしておけばよかった、こうしておくべきだったということは多々ありますし、実際行動に移しておけば、自分が望むものではないかもしれないけど、結果は違っていたはず。
    Kや先生の人生もこうならないようにはできたと思うんです。ただお嬢さんを巡る恋とその結果は、Kが命を絶つきっかけの一つに過ぎなかったように思いました。彼の死は先生を変え、後の悲劇につながったことは確かでしょうけど、贖罪というより向き合うことのできない逃避ではなかったかと自分は思いました。
    先生の死を今度は妻が背負うんでしょうね。彼女の一言も、明治という時代が終わり乃木大将が自殺したことも、ただのきっかけと思うのですが、残された者が背負う物はあまりにも大きいんじゃないでしょうか。
    長い手紙をもらい、全てを知った”私”は先生の遺言を守れば奥さんが苦しむのを見続けることになり、話してしまえば先生に背くことになるわけで、これは非常に酷な話ですね。

著者プロフィール

夏目漱石(なつめ そうせき)
1867年2月9日 - 1916年12月9日
江戸・牛込馬場下(新宿区)生まれの小説家、評論家。本名は「夏目金之助」(なつめ きんのすけ)。1890年、帝国大学文科大学英文科に入学。1895~96年には『坊っちゃん』の舞台となった松山中学校で教鞭を執る。1900年、イギリスに留学。1905年、『吾輩は猫である』を俳句雑誌「ホトトギス」に連載し始め、作家活動を本格的に開始。1907年、朝日新聞社に入社。以降、朝日新聞紙上に『三四郎』『それから』『こころ』などの代表作を連載。日本の文学史に多大な影響を与えており、作品は多くの人に親しまれている。学校教科書でも多数作品が採用されている。

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