門 [Kindle]

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  • 2012年9月27日発売
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レビュー : 32
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (150ページ)

感想・レビュー・書評

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  •  とにかく暗い。青春三部作の中で一番暗い作品だと思う。最後は小六も書生になるし、宗助の給金も上がるし、良いことがあって表面上はハッピーエンドである。でも、宗助の持つ悩み(罪の意識?)は禅に救いを求めても一向に解決しない。幸運が降りかかってもその意識が充分に幸運を感じ取るのを妨げる。だから表面は良くても、肝心の内面を見るとバッドエンドだと思う。このままいつまでも悩みは消えそうになく、一生罪の意識を抱えて生きていかなければならない。そんな運命を暗示しているような最後が、全体の暗さを一層際立たせていたように思う。
     好きな部分は寺籠り編だった。俗人と僧侶がこうも違うのかということに気付かされるところ、門の比喩が印象的だったからだ。「自分は門を開けて貰いに来た。けれども門番は扉の向側にいて、敲いてもついに顔さえ出してくれなかった。ただ、「敲いても駄目だ。独りで開けて入れ」と云う声が聞えただけであった。」、「彼は門を通る人ではなかった。また門を通らないで済む人でもなかった。要するに、彼は門の下に立ち竦んで、日の暮れるのを待つべき不幸な人であった。」という文章が、本当に救いようがなさすぎて悲しくなるほどなのだが、それゆえに印象的だった。

  • 夏目漱石なんて学生時代以来読んでないので、久しぶりの域を超えてますが、あまりにもきれいな日本語にうっとりしながら読みました。
    門を読んでつくづく感じましたが、現代に使われている日本語の単語数って減っているよね…
    私も含めですが、さみしい限りです。
    kindle版は辞書がすぐ引けるので、日本語を再々々勉強する意味でも大変良かった1冊です。

  • 極めて内向的な気風な主人公、野口宗助。
    生活のうちに生じる大小様々な悩みを、外部に相談することなく、ただただ妻との間で取り交わし、最終的には禅寺に籠もり座禅に救いを求めようとする。
    しかし、いっこうに答えを得られないうちに自宅に戻ると、いつの間にか問題はあっさりと片付いていた。
    要は、くよくよ悩んでいても仕方がなかったわけである。

    人は社会に関わることで生きており生かされている。
    社会によってもたらされる悩みは、社会を通してしか解決できないのだろうか。
    となると、座禅をはじめとする自己との対話はまったく無駄なのだろうか。

    漱石自身、禅寺で座禅を体験したと聞くが、決して漱石は、自己との対話を無駄だというつもりはなかったのではないか。
    「門」の閂は常に内側にあるのであり、自身から外につながる「門」を開けるのは家中にいる自分自身である。
    ただ、がっちり閉まった「門」を自分から開くのは大変面倒であり、外から来客でもない限り開けることはない。
    しかも、自分自身に来客を招待する気がないと、通用口を開けるだけで済ませてしまい、結局、本当の意味で「門」を開けることはなくなってしまのである。

    作中、宗助は、彼と対局に社交的な人物である家主の坂井の家を訪ねるとき、表門は開いているというのに、何かにつけて裏の勝手口に回っていた。
    そして、終盤で解決したように思える問題も、実は問題の種が遠ざかっただけで、結局、何も解決していないことに気がつかされる。
    「書を捨てよ町に出よう」は寺山修司の言葉であるが、漱石も同じ事を考えていたのではないか。

    本作がかかれたのは明治期ですが、否応なく社会につながらされる現代だからこそ、なお感じ入る作品でした。

  • ブクログも青空文庫、kindleに対応するようになったのね、、、

    それはそうと、この暗い小説は食わず嫌いで未読でしたが、とてもよかったです。暗いのがよいと思うようになった我が身の暗さが自身を小説に近づけたのでしょう。

  • 内容は暗いけど、日本語の美しさにうっとりする。
    救いがなくて辛いけど、そこが良い。罪はいつまで背負わなければならないのだろう。
    現代に生きる私達は、こんなに人知れず思い詰めることがあるだろうか。
    現代はもっと合理的で利己的であり、そのように生きることを推奨されているように思う。
    「三四郎」「それから」に続く三部作とのことで、前の2作を読まないと。

  •  『三四郎』『それから』に続く夏目漱石初期三部作の三作目。親戚や友人に義理を欠く形で結婚し、子供にも恵まれず、ただ静かに穏やかに暮らしている主人公の宗助とその妻御米の日々の物語。

     夫婦の生活のあり方など、現代的な視点で見ると色々言いたくもなるが時代が違うのでそれは野暮だろう。ただ彼らのような夫婦でも当たり前のように家に使用人がいるという点からして、あくまでも上流階級の中での落伍者であって、本当に底辺の庶民ではないということだろう。

     宗助の弟の学業問題や御米の兄の消息、家主との交流などが淡々と描かれるが、最後にそれらが結びつく。最近の映画ならその結びつきを主人公がうまく生かして万事解決するところだろうが、彼は結局自分では何も手を打てず周囲に流されるだけだ。どう楽しんだらいいかよくわからない小説だった。

  • 主人公・宗助が友人の妻・御米を奪っての結婚生活です。
     
    そして『三四郎』『それから』に続く、漱石の前期三部作最後の作品です。実はこの三部作、登場人物を変えてストーリーが続いているのです。『それから』のラストシーンに希望を感じた読者にとっては、まさかの展開です。そして読み終わってやっとタイトル『門』の意味がわかりました。
     
    全体的に暗く陰気で消極的、ただその描写が見事で、彼らの様子が目に浮かぶようです。そして時折、自分にも共通した心境を垣間見てしまいます。自分に起こった事のある感情、隠す訳でなくても、文字や言葉に表現不可能なものってありますよね。それを漱石は軽やかに表現してしまっています。さすがとしか言いようがありません。三部作通して読むのがおススメです。

  • それぞれの過去の中に、逃げられない錨のような悲しみ、あやまちがあって、どう生きてもそれにとらわれてしまう人たちの話。誰でも、ふとしたことで思い出したくないあの日のことを思い出す…それから脱したくて、色々やってみて、ある時何もなかったように春がやってくるのだけど、季節が変わるようにまた人も変わっていく。人はそれぞれに孤独だからこそ、寄り添って生きていくんだなと思う。

  • 三四郎、それから、と続く3部作の3つ目。

    三四郎、代助、と比べれば、
    宗助はまだ一番しっくりくる感じで違和感は少なかった。

  • 鎌倉の禅寺。人の罪深さと弱さ。

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著者プロフィール

夏目漱石(なつめ そうせき)
1867年2月9日 - 1916年12月9日
江戸・牛込馬場下(新宿区)生まれの小説家、評論家。本名は「夏目金之助」(なつめ きんのすけ)。1890年、帝国大学文科大学英文科に入学。1895~96年には『坊っちゃん』の舞台となった松山中学校で教鞭を執る。1900年、イギリスに留学。1905年、『吾輩は猫である』を俳句雑誌「ホトトギス」に連載し始め、作家活動を本格的に開始。1907年、朝日新聞社に入社。以降、朝日新聞紙上に『三四郎』『それから』『こころ』などの代表作を連載。日本の文学史に多大な影響を与えており、作品は多くの人に親しまれている。学校教科書でも多数作品が採用されている。

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