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感想・レビュー・書評
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「こんな夢を見た」で始まる連作掌編集。
久しぶりに読むと気がつくことがある。
いくつかは、もとは漱石が夏の季節に見た夢だろう。ということ。
そんなことがわかるのか?普通はわからない。怖い話が多いからと言って夏とは限らない。
それでも日本人の深いところで「共感」するものがあり、だからこそ、夏目漱石は暑気を避けて涼しい畳の部屋ごろ寝して、ふと見た「白昼夢」を記したのだろう、と思えた。冬ではあり得ない。
そう思ったのは、この夏、似たような体験をしたからである。直後に書いたメモがある。
こんな夢を見た。
父親と兄が、「お母さんもう危ない」と囁き合っていた。見ると、随分のぼろぼろに歳をとっている。「もう90歳だからなあ」あれ、お母さんそんなに長生きしたのかと想う間も無く、車を運転していると、横から入ってきた車が手前で駐車スペースにはいり、そのあとの車がスルスルと横からブレーキかけずに入ってきた。おい!私は手首のハンドルを返したのだろう。当たる直前に目を覚ました。読みかけの本が飛んでいた。
読みかけ、がスマホでなくて良かった。って、そんなことじゃない。父兄の囁きの前段階で、おそらく波瀾万丈、大河ドラマになりそうな長い長い話があったはずなのだけど、飛んだ本と一緒に記憶もすっかり飛んでしまっていた。父も兄も、もう死んでいるはずなのに、もう当たり前のように出て来ているのはいつもの通り。いつもと違うのは、もうヨボヨボのお婆さんになった母が出てきたこと。思えばいつのまにか、母の享年を私は既に越している。もっと見たかった、話をしたかったはずなのに、彼らを乗せた車は事故に遭いそうになる。
「夢十夜」にも、「わたしは100年後に会いに来るから、それまで待っていて」と死に際に迫る妻や、負うた息子からアレコレ指図される怖い話がある。全然似ていないけど、底辺では繋がっている。
白昼夢はそうやって起こる。
これは冬には起こらない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
奇妙な夢の話。一つ一つが短くてあっという間に読めるけど、一つ一つの話を深く理解するには相当な知識と教養がないと難しいだろうね。
1番好きなのは1話。ロマンチックで素敵。 -
夏目漱石って、こんなに綺麗な文章を書く人だったのね…(今までただのめんどくさい文章を書く人だと思っていてごめんなさい)「夢十夜の装丁はこんな感じがいいなあ」みたいなことを思いながら読んでいた
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明治期の文学者、夏目漱石の短編小説。初出は「東京朝日新聞」「大阪朝日新聞」[1908(明治41)年]。「第一夜」から「第十夜」までの夢が幻想的で詩的に構成される。十編のうち四編は「こんな夢を見た」と、目覚めた視点から夢の記憶を語り始める。時代という外界に向きあってきた漱石が「夢」というかたちを借りて、自己の深みにある罪悪感や不安に現実感を与えた小説であり、荒正人は第三夜の夢を父親殺しと解釈した。
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第一夜が幻想的でとても良かったです。「百合」をモチーフにしたロマンティックな話で、一番印象に残りました。
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夏目漱石のイメージがガラリと変わった。
漱石を沢山読んできたわけではないが、やはりこの作品だけは異色のよう。
幻想文学好きにとっては、第一夜からごっそり惹かれてしまった。
美しく陰影のある文章、余韻の残る終わり。
ふわりと残り香を残していくような。
安部公房のような雰囲気もあって一気にお気に入り作品の仲間入りを果たしました。 -
正直難しかった。途中でショートショートだと気づいたが、一瞬ホラーなのかとも思った。最後に全十話がどのような形でつながるのだろうと思い読んでいたが、最後につながらずにふわっと終わってしまった。
読み終わったあとにいろいろな人の解説を読み、奥深さに気づかせれた。張られた伏線、散りばめられたキーワード、対になっている仕組みなど。
勝手な考察だが、このような小説の書き方の手法は当時新しかったのではないだろうか。
過ごし時間を置いてからまたた読んでみたい。 -
幻想的で難解。
第一夜は綺麗で素敵。
第十夜の豚はちょっとシュールだけど、なんか好き。