十八時の音楽浴 [Kindle]

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  • 2012年9月27日発売
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感想・レビュー・書評

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  • 半世紀以上も前の作品とは思えない内容。
    短くまとめられ過ぎているのが少し残念。もっと長編なら、より深い世界観を描けたのではないかと思う。性の改造、人造人間、愛欲、嫉妬、地下世界、人工太陽。
    権力者に抑圧された世界が垣間見える。

    以下、ネタバレ有り(備忘録)。

    ミルキ国家を維持するための音楽浴。一日一回30分、音を浴びることが義務化されている。それは人間を国家に服従させるマインドコートロールの効果があった。しかし、国民は精神を病み、異常行動を起こすなどの問題が起こる。
    科学者コハクは、音楽浴を発明し、国で一番の学者とされていた。独裁者であるミルキ国王からの信頼も厚かった。音楽浴の後の1時間に全ての集中は注がれる。その間は国民の自由は無く、国家の為に働くのである。ある時コハクは、女大臣だるアサリの陰謀により、ミルキ夫人との不倫を疑われ、夫人と共に処刑される。
    残ったアサリは国王を唆し権力を掌握し、より支配を強めるべく、音楽浴を一日24回実施することを決める。しかし数時間で国民は狂い始めた。時を同じくして、火星からの敵の来訪により大混乱が始まる。アサリはコハクの研究室から人造人間を発動すべく、コハクが閉じている、開かずの扉を開くように軍隊に命ずる。兵は音楽浴のダメージで働けずに全て死に絶える。ミルキ国王とアサリ大臣のみが生き残り、扉を開こうとするがあえなく散る。その直後、扉は開かれ、中からコハク率いる人造人間たちが登場し、火星人へ応戦を始める。そして火星人たちは逃げ去る。コハク博士は、アサリの陰謀を知り、自らの人造人間を処刑させ生き残っていたのであった。
    そして国中に人間らしさを賛美する音楽が流れる。それを聞いている人間はただ一人、コハク博士のみだった。

  • 言葉が、表現?が古いため
    なんだか思わずクスッとなるところがある。
    残虐な話なのに、悪者がなんだかおっちょこちょい。
    不思議な小説です。

    そして、読み終えてからふと思った事が一つ。
    影響を受けない仕掛けを思いつき、
    うまく国家からの洗脳を拒んで来れた靴工のポールはどうなったのだろう。
    仕掛けがアサリ女史やミルキに暴かれて処刑された可能性も、
    自分の身体の改造に失敗して死んでしまったのか。

    最後に残ったのは、コハク博士のみと言うのが、
    どうも腑に落ちない。

    人間が博士自身だけの新しい世界、人間賛美の爽やかな音楽。
    火星人をもひとりで撃退してしまう博士は、
    国王や政治家、権力も興味はなくただ地球を愛した人なのか。
    もしくは、神にでもなりたいと思ったマッドサイエンティストか。

  • 地底都市、音楽浴で洗脳される管理社会、突然すぎる火星からの襲撃。
    ポールが何かしでかしてくれるかなと期待したけどしてくれなかったなー。女大臣は政治で科学を支配しているつもりだったけれど、結局国を征服したのは科学だったよね。コハク博士がひたすら不気味だったけれど、どこからどこまでが人造人間だったんだろう。

    (iBooks)

  • これ本当に50年前の作品?
    そう思いながら読み進めました。本当に現代のSFとして十分通じると思います。

    理想化された社会では「効率」を求めるが故に「自己」を殺していく。つまり、この物語の世界ではタイトル通り「18時に音楽浴をする」事で仕事の効率を上げ、欠点や個性を無くし、理想化された人民による理想化された生活が営まれる。

    でもそれって本当に幸せなのかしら?

    最終的には独裁国家は崩壊し、科学者コハクが人造人間達と新たなる国家を作っていく。

    「自分にとって都合のいい他人」って、あくまでも自分本位の関係であって、どこにも存在しないんですよね。

    他人に何かを求めすぎなければ失望する事はないのに。
    ちょっと思った。

  • 短かったのでスルッと読めた。ディストピア社会の管理方法がシンプルで斬新。設定もキャラクターも細かいところまで掘り下げず、ドラマ展開も一本筋なのでサクッと楽しめる。ひとつひとつの要素が立っててコミカルなのも良い。

  • NDC(9版) 913.6 : 小説.物語

  • 独裁国家の大統領ミルキは、自国民を思うがままに操れる、改造人間を製造するため〝十八時の音楽浴〟を義務づけていました。音楽浴による洗脳効果は、重罪人でも模範的人間に改造されますが、時間が経過するほど効果が薄れます。逆に長時間洗脳は脳細胞を異常に刺激し、死に至る恐れがあります。危険を承知で権力を行使する大統領と令夫人、開発研究者のコハク博士、女大臣アサリなど権謀術数渦巻くミルキ王国に、突如火星からの来襲が・・・。今も現存する国家と危機的状況を象徴するかのような【海野十三】昭和12年のSFホラ-小説です。

  • 第8回(古典ビブリオバトル)

  • ド真ん中直球のディストピアSF。
    「ディストピアってどんな?」という人におすすめしてもいいくらい、ディストピア要素全部入りです。
    現代においてもまだまだ発展途上な性転換やLGBTQ、AIネタなどもあったりして
    これ、とても戦前(昭和12年だって!)の作品とは思えない…

    オチはすぐわかってしまうのですが
    わかってても読んでしまう…先を読みたくなる作品です。

  • 青空文庫。音楽によって洗脳される国を描いた、近未来SF短編。芥川龍之介もそうだが、このタイプの小説は深読みして何かしら込められた高尚な意義を見出そうとすると容易に見つかるので、そこまで気合いれずに純粋に読んだのだが、それでも楽しめた。書かれた時代と内容を考えると、賞賛に値する作品。

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著者プロフィール

1897-1949。推理小説家。日本SFの草分け。主な作品に、「電気風呂の怪死事件」「深夜の市長」「赤外線男」「蠅男」「十八時の音楽浴」「地球盗難」「火星兵団」など。

「2018年 『海底大陸』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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