金魚撩乱 [Kindle]

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  • 2012年9月27日発売
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  • 表題『金魚撩乱』から引っ掛かる。
    金魚が撩乱?

    撩乱:りょうらん 入り乱れること。花の咲き乱れる様。
    繚乱とも表記。

    大正・昭和初期の歌人・小説家 岡本かの子さんの作品。
    岡本太郎さんの実母でもある。
    瀬戸内寂聴(晴美)さんの『かの子撩乱』が彼女の代表作とされ、岡本かの子さんの道徳や常識を越え意のままに複数の男性との生活を営む姿を描かれている。こちらも是非読みたいところ。

    本作はありがたいことにkindleで青空文庫として無料でダウンロード可。

    日本語の極め細やかさに触れる一冊。
    表題の「撩乱」もしかり、辞書を駆使しながら、漢字表記により意味を想像しながらも読み進められる。面白いところ。

    金魚の新種開発に魅了されていく一人の男性が主人公。
    事業を成功させるため、資金提供を名乗り出た近所の富豪の娘が本作のカギとなる。

    幼少期から気になる存在だった少女への気持ちの微細な変容が見事な日本語によって浮きだってくる。
    好きか、嫌いか、好意なのか、恋愛なのか。自らの想いを図る様な行動とのアンバランスな心の動き。絶妙かつ奇妙。

    女性への想いがいつしか金魚の新種開発への耽溺や執着に重なる。
    周囲の人間関係を投げ捨てて金魚に溺惑し、生きることに憂う日常の狂気。
    「普通」と一線を画す様にあっけにとられながら、終盤の意表を突く一文が現実に引き戻してくれる。
    本文より:
    「意識して求める方向に求めるものを得ず、思い捨てて放擲した過去や思わぬ岐路から、突兀(とっこつ:高く突き出ている様。高くそびえる様)として与えられる人生の不思議さ」

    正気と狂気の狭間すれすれのところを巧みな筆で表する1冊。
    尾鰭を優雅に水面に閃かせる金魚が入り乱れる様が最後に映像で浮き上がる。お見事!

  • 崖の下に住む金魚家の倅、復一。
    復一は崖の上に住む資産家の娘 真佐子になにかと、ちょっかいを出す。
    なぜ男の子は好きな女の子をいじめて泣かせてしまうのだろうか。
    少女の頃は無口でおとなしい真佐子だったが、成長するにつれ令嬢の風格を漂わせるようになり、いつしか復一に対して上から目線。

    「生意気なことを云うようだけど、人間に一ばん自由に美しい生きものが造れるのは金魚じゃなくて」

    真佐子は人生の価値に関係して、批評めく精神的言葉を復一に投げ掛ける。

    この二人は家柄の違いから、結ばれることなどないと承知の上なのだが、金魚という生き物を通じて恋愛成就に結び付けようとの意志があったのではないかと、私は思う。

    真佐子は別の男と結婚し身ごもった時に、自分の子よりも復一の生み出す新種の金魚のほうが楽しみだと期待する。

    復一は一時期、関西の水産試験所の研究員となるが、関東大震災を機に東京へ帰郷し、金魚家の主人に落ち着く。

    自分のものにできない真佐子に似た撩乱の金魚を、わが池でわが腕で一匹でもいいから創り出して凱歌を奏でたいと...。

    一途に女を愛し生涯の事業として耽美に生きる。
    実は幸せなんじゃないかな。

  • 手に入らなかった想い人の影を追い求めるように金魚を作り続ける姿が、狂気的で美しい。
    煌びやかで鮮やかな金魚の描写とコントラストをつけるように差し込まれる主人公の描写は哀れなくらい「老け」や「疲れ」を感じさせて、まるで美しい金魚たちに生気を吸われてるみたいだなぁと。
    最後に理想の金魚を見つけたときの気持ちとか無限に考察できちゃう

  • 金魚の表現に岡本太郎の芸術に似たものを感じました。さすが親子。

  • 1937年の小説。
    物語の構成はシンプルだ。
    金持ちの娘真佐子、金魚屋の息子復一。ふたりは幼馴染であった。最初、復一は真佐子をいじめていたのだが、ある日、ちょっとした復讐をされ、怖れに似た感情を抱くようになる。その後、ふたりは成長し、復一は金魚の研究に没頭するようになる。真佐子は他の男と結婚して子どもを産む。
    崖の上に暮らす真佐子と、崖の下で暮らす復一。
    復一は真佐子に恋焦がれて、真佐子以上の金魚を開発しようとする。

    こじらせた男の変質的な人生を描いた作品、といってしまえばそれまでなのだが、非常に味わい深い作品となっている。

  • 母に「あなたが好きそう」と勧められた岡本かの子。主人公は、崖の上に住む幼馴染であり身分違いの真佐子へのかなわぬ恋をこじらせ、その執着は彼女のように美しい金魚の新種を自ら作り出すことへ行き先を変える。結婚も友人付き合いもなく、長年彼女と金魚にひたすら執着した結末はすっきりして読みごたえがあった。
    作中の金魚がきらびやかな尾びれを振りまくように、文体も美しく耽美な感じ。装飾過剰なようでしっかりまとまっていて、文章の持つ力強さがすごいなと思った。金魚に見立てられる真佐子が性格自体は非常にあっさりしているのと、主人公の焦燥、嫉妬、どろどろした恋心が対比されるのが良い!

  • たまたまハンドルを握っていた夜、ラジオで始まった朗読が思いのほか心に留まり、珍しいことに青空文庫で読み直してみた。

    敢えてそのように描いているのだろうが、不器用そうで、そうでもない。なんとなく分かるような分からないような。そんな復一と真佐子のやり取りであるが、日本語表現がなんとも見事である。

    紆余曲折あり美しい金魚を交配することを目指すことになる復一がその努力が水泡に帰すと思しき事態を目の当たりにした刹那、ふと美しい金魚を見出す。
    その金魚は何を象徴しているのか。

    「意識して求める方向に求めるものを得ず、思い捨てて放擲した過去や思わぬ岐路から、突兀として与えられる人生の不思議さ」

  • 「金魚繚乱」金魚が好きで、金魚の小説は「田紳有楽」「蜜のあわれ」等読んで来たが、これはいかにも王道の金魚。短編。Kindleで無料。


    金魚の小説は「田紳有楽」「蜜のあわれ」等読んで来たが、タイトルにまんま金魚とあるのに存在を知らなかった。ガビーン。しかも「ん?『かの子繚乱(瀬戸内寂聴)』って昔読んだぞ。つまりこの金魚繚乱と掛けたタイトルだったのか-!」って二度びっくり。

  • 文章が美しい。

  • 「自分の愛人を自分の手で創造する」
    愛を通り越した狂気を向けられた真佐子をちょっと羨ましいと思った笑

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著者プロフィール

おかもと・かのこ
1889年に生まれ、
1953年に没した、日本の小説家。
代表作に
『母子叙情』
『老妓抄』
『生々流転』など多数。



「2019年 『美少年 岡本かの子 アムール幻想傑作集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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