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感想・レビュー・書評
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再読。
ボスフォラス以東唯一つと称される、壮麗かつ閉鎖的な城館での連続殺人を追うは、ホームズ由来の苗字を持つシリーズ探偵・法水麟太郎。
オーソドックスな筋書きながら、過剰な衒学趣味の大伽藍により遂に三大奇書の一を占めるに至った驚愕の大長編探偵小説。
〈第一容疑者が結局真犯人〉という最大級の肩透かしは、常に意外な犯人を求められるミステリの宿命への挑発か、はたまた単なるプロットの要請か。
ミステリ的なものの長所と短所を詰めに詰め込んだその饒舌ぶりは、閉幕後も熱狂的ファンとアンチを生み続けている。
再読で印象が変わったのが当主旗太郎の憐れさ。
真犯人の緊張と警戒を取り去るためだけに、法水にお座なりの捏造をぶつけられた当主旗太郎。
嫌疑の論拠として弓と提琴の持ち替えを指摘され、結局無実ではあったが作者にすらその行動の真意を忘れられた(無視された?)当主旗太郎。
当主なのに実は先代と血縁関係のなかった旗太郎。
旗太郎よどこへ行く。
閉幕。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
知識不足で挫折
現時点では歯が立たなかった -
豪壮なケルト・ルネッサンス式の黒死館といわれる邸宅。
そのお屋敷で怪奇な死の連鎖を思わせる動機不明の変死事件が起こる。
主に捜査にあたるのは、探偵の法水麟太郎を中心に、支倉検事と熊城捜査局長の三人。
博学多才な法水のトリック解明が、ひじょーに難しすぎて、ほぼ彼の独壇場に二人がついて行く感じ。
あーだこーだと、やりあっているうちに、次の変死体が発見され、またもや法水の難しすぎる解明が始まる。
「もうちょっと解りやすい言葉でお願いします!!」と、叫びたくなる私でした。
本当は支倉さんも熊城さんもわかってないんじゃないの??と、つっこんでみたくなったが、そんなことはないか...。
読んでいてやたらとルビが多く使われていて、それがこの作品を重くしてしまっているように思った。
読みはじめてすぐに出てくる、『臼杵耶蘇会神学林(うすきジェスイットセミナリオ)』とか『弦楽四重奏団(ストリングカルテット)』とか。
他にも、『指人形(ギニョール)』『飛行絨毯(フライングカーペット)』『鐘鳴器(カリルロン)』『超頂点(ウルトラクライマックス)』などは、ルビ要らず漢字だけで事足りるのでは。
このお屋敷の特殊な構造(庭には踏むと噴き出す噴水)、豪飾な造り(玄関入口あたり)は、まるでアミューズメント。
そして、そこに住んでいる不健全なキャラクターたちが登場し楽しい。
難解小説を読解しきれないながらも、黒死館の世界にどっぷり浸り、入り込めたことが充足感ですかね。-
ふた昔くらい前に読んだので、内容は忘れてしまいましたが、
>このお屋敷の特殊な構造
昔は、奇怪で大きな家が、ありませんでしたか?...ふた昔くらい前に読んだので、内容は忘れてしまいましたが、
>このお屋敷の特殊な構造
昔は、奇怪で大きな家が、ありませんでしたか?こっそり入ると、出口が分からなくなっちゃうんです。2016/01/31 -
コメントありがとうございます。
だいさんも、『黒死館~』読んだんですね!!
昔の家は防犯上、構造を複雑にすれば悪人が入り込めないとの考え...コメントありがとうございます。
だいさんも、『黒死館~』読んだんですね!!
昔の家は防犯上、構造を複雑にすれば悪人が入り込めないとの考えがあったのでしょうかね?
現代の家は、いかに居心地が良いかどうかで造られているように思います。
2016/02/08
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「それは、一口に云えば遊戯的感情――
一種の生理的洗滌(カタルシス)さ」
《世のお子ちゃま厨二病患者に告ぐ》
元祖厨二病・衒学の鬼。
明治のオーパーツ。
小栗唯一神を君は体感したか?
死屍累々が呼んでるぜ。
「サア、これから黒死館に行こう」 -
日本3大奇書の1冊ですが、既読の「ドグラ・マグラ」「虚無への供物」が面白かったのに、なぜかこの1冊だけが未読状態になっていました。(ちなみに4大奇書という場合には「ハコの中の失楽」が入り、購入済みですが未読)
私もたまに、何ページか読んで途中で放棄する本もありますが、今回は序章を読んで挫折し、新保博久氏の解説を読んで読んだ気になったという状況です。曰く、本書は推理小説というよりも作者の中世趣味嗜好のペダントリーの発露であって、「ペダントリー自体は、探偵小説にとってみれば大きすぎる邪魔物である(江戸川乱歩)」と評されれば、時間と体力のある時にチャレンジし直そうと考えても仕方がないでしょう。ってことで、読み直す時が来るまで評価は保留といたします。 -
読み辛さは「ドグラ・マグラ」を上回るが、
登場人物が魅力的で読み進めることができた。
法水が登場する別作品も読んでみようかと。 -
積年の積読本でした。
細部の描写が難しく、6割ぐらいは何を言ってるのかわかりませんでしたし、人物像も洋書みたいで感情移入はできませんでした。
ですが、論証メインでしかも容疑者の発言や心理という拠り所のないものをベースに理論展開すると言う方式は初めてで、衝撃的な内容でした。
また、二転三転するストーリーは読み応えもあり、細部はわからないものの大枠の情勢はわかりますので楽しむことが出来ました。 -
いやー、ついに読みました。
若い時分から一度は読もうと思いつつ延ばし延ばしして来た2冊、『ドグラ・マグラ』とこちら、立て続けに。
まあ、疲れました。探偵役の法水倫太郎氏のセリフの殆どが何を言っているのかさっぱり分からないのですから、ほんと疲れます。ただ、1934年という当然ながらインターネットなど無い時代に書かれたものであることを考えると驚異的です、作者の蘊蓄…衒学趣味は。
奇書…まさに奇書でしょう。個人的にはミステリーのオールタイムのベストとかには入れませんねぇ…(笑 -
分量といい、出てくる難解な専門知識といい、読後のやりきった感がスゴイ。とはいえ、いちいち注釈を入れて説明をしてくれるので、個人的には特に中世の歴史関連の説明が興味深かった。ユダヤ人虐殺というとヒトラーやナチスドイツばかりに目がいくようだけど、もっと昔から東欧でもあったみたいだし、大体何事も最後に怒った事ばかりが注目を浴びてしまうのよねぇ、と。こうやってwikiとかで昔のよく知らない歴史を辿るのってけっこう楽しい。
とまぁ全く別方面に知識が膨らむという効果はあったものの、この本自体が面白かったかと言われると、ちょい微妙で。いろんなウンチクやら科学実験みたなのの説明やら解説やらを詳細に説明され続けるので、もう半分教科書を読んでるみたいで、少なくともぼんやり読んでどうにかなる内容ではなく。
てか最終的に何がどうなってこういう結末になったのやら、半分も理解できてない気がする。そこは読者が想像を膨らませて色んな解釈をするのかなぁ、と昔の小説を読んでて思うところ。