夜明け前 02 第一部下

著者 :
  • TRkin (2012年9月27日発売)
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感想・レビュー・書評

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  •  NHKの大河ドラマに代表される昨今の歴史小説や映画、ドラマの類は、「実在の人物や団体とは関係ありません」と断り、製作者の自由奔放な空想力を羽ばたかせながら、結果として読者らに何ら得るもののない歴史観を植え付けている。これがいわゆるエンターテインメントというものなのでしょう。
     これに比して島崎藤村は、幕末の黒船到来の「夜明け前」の歴史の流れの総体と真摯に向き合い、その中から今の私自身が学ぶき時代の本質を伝えてくれている。中学や高校で学んだ「日本史」が、単に暗記するための単語の羅列に過ぎなかったのに対して、例えば「助郷制度」がどんな実態だったのか、「例幣使」がいかに酷いことをしていたのか(私の故郷は、例幣使街道の小さな宿場町でした)、「水戸の天狗党」がどのような運命をたどったのか(子供のころ遠足で登った下野の国・太平山がでてきたのは思いかけなかった)などなど、まるで眼前に展開されているような追体験をさせてくれました。
     大政奉還がなって、主人公の青山半蔵とともに、明るい希望を感じていますが、物語は第一部が終わったばかり。第二部はいかに……。

  • 妻籠宿の民が激動の時代の変わり目で何を感じ行動したのか、そこを中心に歴史の転換点を語るとは、素晴らしい。
    片手間な読み方で理解が追いつかないのが、忸怩たるところだが、第二部に読み進めたい。

  • 山深い馬籠の宿で本陣を勤める青山半蔵が街道の行き暮れを見て幕府の行く末を危ぶみ、また古学の志を抱いたものの望むべき思いを描く。第一部は大政奉還までを描く。

  • 大政奉還前の混乱。英雄は出てこない。民を守護する者の苦労。やり過ごすしかない時の流れ。「草叢の中が発起」

  • 幕末の動乱。1巻よりも更に社会の騒がしさが増してくる。それを宿場町の視点から見る。面白い。

    所々に描かれる人物評も面白い。例えば徳川慶喜。学校の教科書では、単に最後の将軍とだけ書かれることが多いが、実は賢くてエラい人だった。幕府内部に反対勢力がいたことも初めて知った。

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著者プロフィール

1872年3月25日、筑摩県馬籠村(現岐阜県中津川市馬籠)に生まれる。本名島崎春樹(しまざきはるき)。生家は江戸時代、本陣、庄屋、問屋をかねた旧家。明治学院普通科卒業。卒業後「女学雑誌」に翻訳・エッセイを寄稿しはじめ、明治25年、北村透谷の評論「厭世詩家と女性」に感動し、翌年1月、雑誌「文学界」の創刊に参加。明治女学校、東北学院で教鞭をとるかたわら「文学界」で北村透谷らとともに浪漫派詩人として活躍。明治30年には第一詩集『若菜集』を刊行し、近代日本浪漫主義の代表詩人としてその文学的第一歩を踏み出した。『一葉舟』『夏草』と続刊。第四詩集『落梅集』を刊行。『千曲川旅情のうた』『椰子の実』『惜別のうた』などは一世紀を越えた今も歌い継がれている。詩人として出発した藤村は、徐々に散文に移行。明治38年に上京、翌年『破戒』を自費出版、筆一本の小説家に転身した。日本の自然主義文学を代表する作家となる。

「2023年 『女声合唱とピアノのための 銀の笛 みどりの月影』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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