斜陽 [Kindle]

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  • 2012年9月27日発売
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感想・レビュー・書評

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  • 太宰治特有の心に共鳴を与える言葉が好きです。
    ・気取るということは、上品と言う事と、ぜんぜん無関係なあさましい虚勢だ
    ・光線が絹ごしされてるみたい
    ・両足の裏に暑いお灸を据え、じっとこらえているような、特殊な気持ちになった
    ・言葉も知恵も思考も社会の秩序も程度は違えど動物には必ずある。信仰も持ってるかもしれない
    ほかの生き物には絶対無くて、人間にあるもの。
    それは、ひめごとというもの
    ・僕に砂を噛ませないで。
    ・芭蕉の葉が散らないで腐るように立ち尽くしたままおのずから腐っていく予感
    この話は戦争によって傾いた貴族まさに斜陽のような家族を現しています。
    面白いシーンは
    蛇は、生命の力の象徴というイメージがありながら父が亡くなる前に蛇を何匹も見たためこの家では蛇は祟りのように感じた。
    しかしながら女蛇は気品のある蛇で美しい象徴のように見えるから母みたいだという矛盾じみた表現が面白いです。
    やはり物事は表裏一体ということなのでしょうか。
    恐れるに足るからこそ、どこか美しさを感じる。その人間模様を表してるなと思いました。

    そして私が驚いたのは急な言葉の転換です。
    「恋、と書いたら、あと、書けなくなった。」

    この一言で後の伏線を張りつつ読者に何も言えなくするようなまさに息の止まる瞬間でした。

    太宰治特有の性格が出た場面は、
    アヘン中毒の弟、直治が「良い作品ほど、取り澄ましてないように見えるのだがなあ」
    ⇒太宰治が目指した小説それか皮肉。はたまたまこの小説を指してるのではないか。
    夢野久作「東京人の堕落時代」も書かれている通り不良がこの時代からできた言葉あるいは顕著に急増してきたからかもしれませんが不良という言葉を沢山使い始めます笑笑
    「不良とは優しさのことでは無いのかしら
    札付きの不良→鈴を首につけている猫のように安全ね
    お前たちは、札のついていない最も危険な不良ではないか?」

    「ちっとも苦しんでない傍観者が、帆を醜くくだらりと休ませながら、この問題を批判するのはナンセンス」

    デカダンという言葉も少し不良らしいなと思ってしまいました。
    デカダン⇒ローマ帝国が爛熟(らんじゅく)から衰退、破滅に向かう過程の病的で享楽主義的文芸の風潮をさすことば。
    ここで1番キーになる言葉が最後辺りに出てきます。

    「人間は恋と革命のために生まれてきたのだ」
    ⇒なぜ恋が悪くて愛がいいのか、私には分からない(かずこ)
    好きな人の変わり果てた姿を見て生々しすぎる表現をしたあと
    【⠀ギロチン、ギロチン、シュルシュルシュ】
    多分この表現は恋に冷めた時の擬音なのでは無いかと思います。
    それでも尚、恋を追い続けたかず子とヤク中になってしまい
    周りは強い草だと比喩しながら自分はその草になりたくて麻薬を使う弟直治が自殺。
    私が思うに革命という意味は、
    直治という清い犠牲者の革命という意味でもあると思います。
    まさにこの時代の犠牲者とも言えるのではないかと。

  • 単に高貴な貴族の堕ちていく様を描写したのではない、一人の女性の「恋」と「道徳革命」を突き詰めた作品だった。第二次世界大戦後、貴族はその役割が終焉し、その高貴さ故に退廃した日本で生きにくくなる。「思想?ウソだ。主義?ウソだ。理想?ウソだ。秩序?ウソだ。誠実?真理?純粋?みなウソだ」かず子の焦り、それは、母親の死、女性としての生命が腐ってしまうことである。かず子は上原二郎への恋を成就させ、子を授かりたいたいと願う。かず子は上原との子どもに恋をしていたのだろうか?堕ち行く女性の脆さとともに強さも見せつけた。

  • 初の太宰作品。終始暗い雰囲気が続き、とにかく救いがない。戦後の華族制廃止の中で落ちぶれる旧貴族という設定はニッチ過ぎないかと思ったが、本作が不朽の名作として語り継がれるのは、栄華を誇った人間が没落していく様子を描いたストーリーがいつの時代も人々の関心ごとだということを示しているのだろうか。ただ、自分もこの類のストーリーは割と好きな方で、没落の中でおかしくなっていくかず子や直治の絶望的なストーリーを飽くことなく読み進めてしまった。終盤でかず子が「革命家」になろうとするのだが、このことは、寄り縋るアイデンティティ(貴族という身分、身分に紐づく財産)が全て無に帰すという、まさに「革命」と呼べるような事態へのアンチテーゼなのだろうか。

  • 四季が感じられる風景描写や共感できる感情表現が多く、読みやすかった。
    美しい文章を読むと不思議と涙が出てくるが、この話を読んでいる最中何度も泣いた。
    ただ、手紙を3回も送っているのに返事がない相手の家によく行けるなと思った。
    しかもあのヤバい内容の手紙を3回も送れるだけでかなりメンタルが強い気がするが、そういう時代だったのか?

  • 太宰治、暗いよー
    まぁーなんて暗いんでしょう!
    暗い、暗すぎる。で、やるせない。
    敗戦後の貧乏貴族になってしまったバツイチ三十路のお嬢様と
    綺麗なお母様と戦地へ行って阿片中毒になった弟と。
    っていう家族構成なんだけど
    働けーーーー!!!!と何度叫んだことか。
    まぁわかるよそれぞれの言い分とかも、まぁわかるよ。
    わかるけども。
    まぁ時代が時代だからってのもあるし。
    貴族が平民を装っても、どこかしらで話が食い違うこともそりゃあるだろう
    好きな男がどうしようもないチャラ男だということもあるだろうし
    なんでも蛇のせいにしたいのも分かる。
    気持ちとか、どうしよーもなくて逃げ場がないから。
    しかし弱い。
    弱いなー人間って。
    あとかっこつけたかったんだろうが
    夢見る夢子と夢男だなって。
    キラキラ生活に憧れるのは結構だが、世の中等価交換。
    働けよ!と思うことしか思い浮かばないけど。

  • 夕顔日記の部分、たまに無性に朗読したくなる。

  • 出だしで度肝を抜かれました。スウプをお口に流し込み。。お母様は左手のお指を。。
    なんとお上品なお言葉なんでしょう。優雅な世界から下世話な世界へ落ちてゆく。落ちてゆくというのとはちょっと違う。生活は落ちてゆくが性分は育ったまま落ちはしないが世の中の見方は変わってゆき、悲しくもあり力強くもあり、生きるということの強さを感じます。
    直治の遺書が素直な気持ちでしょう。
    スガちゃんという名前はだれかと、かず子の離婚はなぜにと気になり重点的に読み直しました。
    読み直すうちに作品に引き込まれました。あっという間に読めてしまう小説の中にたくさんの考えさせられることがつまっている。
    今読むには時代背景が古いけど。

  • 太宰治の著書を初めて読みました。
    太宰治やばいですわ。文学って、中身を人と話したくなる。でもネタバレは死んでもできない笑。直治や主人公、そして母親の思いは、きっと一度読んだだけでは分からない。何度も読み、考え、自分の中に落とし込む作業が必要になる。だから、ビジネス本だけじゃなく、小説、文学も読めよと言われた意味がわかった。
    この本より発せられる、読者への倫理や価値観の問いが、ひしひし伝わってくる。それについて深く考えなければならない。なるほど、文学とは良く言うなと、思った。
    読んで良かった。そんな、戦争に負けた直後の日本人が書いた小説。現在生きている人なんかより、よっぽど生死が身近にある。想いがある。なぜ俺は今まで読んでこなかった。

  • なんでか定期的に読みたくなる

  • 賢い人、でも井の中の蛙、ずっと内側を向いている
    自分の信念、たとえ世間の常識や良心に背いていたとしても、それを貫き通す事に正当性を見出せる人
    似たもの同士が惹かれ合う
    自分が一番長く生活を共にした母という存在と、過去の死産の経験が「好きな人の子供を産む」ことに生きる意味を見出す、という考えに繋がったのかな
    人間失格読み直さなきゃ

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著者プロフィール

1909年〈明治42年〉6月19日-1948年〈昭和23年〉6月13日)は、日本の小説家。本名は津島 修治。1930年東京大学仏文科に入学、中退。
自殺未遂や薬物中毒を繰り返しながらも、戦前から戦後にかけて作品を次々に発表した。主な作品に「走れメロス」「お伽草子」「人間失格」がある。没落した華族の女性を主人公にした「斜陽」はベストセラーとなる。典型的な自己破滅型の私小説作家であった。1948年6月13日に愛人であった山崎富栄と玉川上水で入水自殺。

「2022年 『太宰治大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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