東京八景 (苦難の或人に贈る) [Kindle]

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  • 2012年9月27日発売
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感想・レビュー・書評

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  • ⚫︎感想
    大学生上京〜10年間(昭和5年〜昭和15年)を東京の風景と共に自身を振り返り綴った作品。
    勉強せずに金の無心を兄にし、女と入水したり、酒や薬に溺れたり、浮気をするのにされているのを知るとショックだったりと、おおよそ太宰のしられている通りの人となりが描かれている。反面、執筆に対しては真摯な姿勢が垣間見られるため、太宰に天賦の文才があって良かったと、家族にめぐまれていてよかったと思わないではいられない。
    あまりにも自堕落すぎて、周りの人のことも考えられない。「なんだこの人」と思う。生きるのがあまりに下手で弱い。人間はみんな弱い。強そうに見える人もきっと頑張って弱さを見せないように生きているだけだ。だから弱さを全面に素直に曝け出し綴り、語る太宰に共感する人が多いのだと思った。

    ⚫︎あらすじ(本概要より転載)
    「無頼派」「新戯作派」の破滅型作家を代表する昭和初期の小説家、太宰治の短編小説。初出は「文學界」[1941(昭和16)年]。東京帝大入学の時から本作執筆時点までの東京生活を題材とした作品で、「私」による青春への決別への辞。二景の明るい風景としての現在と、それ以前の「思ひ出の暗い花」としての過去と、二つの対照的な時間軸が描かれている。

  • 桜桃忌。すぐに読めそうな本作を選択。若かりし頃が書かれた自伝的作品。自堕落ゆえに都内を転々とし実家や女性と揉め、大学は卒業できそうにもなく入院をきっかけに麻痺剤に溺れる。これは親兄弟は大変だったでしょうね。

    ダメダメな青年から大人になった。でも大切な何かを失ったようで寂しくもある。しかし、

    「朱麟堂しゅりんどうと号して俳句に凝ったりしていた。老人である。」

    令和に生きてても炎上から延焼に次ぐ延焼で永遠に鎮火しなさそうだなぁ。

    太宰作品は『人間失格』と短篇しか読んでないです。もうちょっとしっかり読んでみたいんですけど手が回らない(-_-;)

  • 太宰治の、自身の結婚までの色々を語った本。今まで何度も読んできた本だけど、登録してなかった。

    太宰が東京に出てきていろいろあったりやったりしたことを赤裸々に書いてあるんだけど、いわゆる破天荒な生活っぷりに関わらず、その本心は切なくて、自分もなんとか頑張ろうと思ってるのにできなくて、そんな自分が嫌になって自己嫌悪…みたいな感じが痛いほど共感できて、やっぱり太宰ってすごいな…と思う。

  • 三鷹に太宰巡りに行くことにしたので読んでみた。
    フィクション含めて自伝要素のある作品も多いが、本書で初めて知ったエピソードもあり、改めてとんでもない人生だなと感じた。身近にいたら大変そう。

  • 怠惰な自身を諌める文章が多く、その文章が素晴らしく、まことおもしろき小説。そして、自己を否定し諌めつつも、自己肯定感を最後にはぐっと強めて終わる、歳をとってから読むとよりグッときます。
    山梨時代の妻の妹の旦那さんTを増上寺山門で見送るときのお互いに尊敬している様子、太宰が立派な青年T
    を、自身のみすぼらしさに引け目を感じずに堂々と見送る姿勢に感涙です。そして何故かくすっと笑えます。

  • こんな人生の人がいるんだなぁと驚いた

  • 都内を中心にあちこち転々とした自伝作品。
    自堕落な自分をかなり正直に書いている。
    鎌倉海岸と水上温泉での心中事件、首吊り自殺を図って生還したことなど実にあっさり描かれている。
    薬に中毒に至る経過も淡々と書かれている。
    太宰の20から30歳頃に至る私生活のダイジェスト版みたいなもので、彼を知るうえで大きな手がかりとなる。

    だけどなぁ~
    自分の過去を切り売りするだけで、作品になってしまうんだもんなぁ~
    ぼくの場合、全人生の自伝を書いてもとても作品になんかならない。
    たいていの人の人生なんてそんなものかも知れない。

    太宰は特殊だったのだろうか?

    面白いことに、実家が裕福だったため、その裕福こそが彼が自堕落になった原因なのである。
    自堕落で生きるにはそれなりの幸運が必要なのだ。

    ここで疑問である。
    太宰は作品を生み出したいがために、自堕落な生活を選んだのだろうか?

    ぼくには、そうだと思えて仕方がない。

  • 自分への不信が他人への不誠実をよび、後ろめたさが更に不誠実をさせ、にっちもさっちもいかなくなると死んで詫びようと思う、負のループ。とても他人事とは思えない。

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著者プロフィール

1909年〈明治42年〉6月19日-1948年〈昭和23年〉6月13日)は、日本の小説家。本名は津島 修治。1930年東京大学仏文科に入学、中退。
自殺未遂や薬物中毒を繰り返しながらも、戦前から戦後にかけて作品を次々に発表した。主な作品に「走れメロス」「お伽草子」「人間失格」がある。没落した華族の女性を主人公にした「斜陽」はベストセラーとなる。典型的な自己破滅型の私小説作家であった。1948年6月13日に愛人であった山崎富栄と玉川上水で入水自殺。

「2022年 『太宰治大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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