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感想・レビュー・書評
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田山花袋の最高傑作ということで読了。
心の内を余すことなく独りよがりの葛藤や欲望について詳細に表現。弟子入りした女学生への恋愛に対する嫉妬に駆られた行動、織りなす人間模様なども絡めての心理描写はまるでドラマを見ているように読み進めた。
最後の涙する場面は共感できないけれども、灰色の生活に戻る何とも言えない虚しさは強く伝わった。疎まれてる存在かもと妻子からの視点で見ている自分。 -
還暦近くなって、今更ながら学生時代に全く興味を持てなかった日本近代文学をきちんと読んでおきたい、と思ってたまたま最初に手に取ったのがこちら。
明治の話しだけれど、男は今も昔も変わらずウジウジしていてしょうもないな、と笑ってしまった。
私は妻の立場だから冷めた目で、若い娘の蒲団にくるまって残り香をクンクン嗅いで勝手に妄想してなさいよ、と思う。
作者は作品のイメージから弱々しい貧弱なタイプ、と思って写真を見たら、陽気で豪快そうなおじさんだったのでそれはそれで可笑しい。 -
ほぼ10年ぶりに再読。
言文一致の口語体で読みやすく、情景描写が豊富で映画でも見ているような気分になる。
身近に若い女性が突然現れた中年男性の気持ちのゆらぎを容赦なく綴った、出版当時衝撃的だった小説。
今でも十分インパクトがある。ネタの割に記述は淡々として、読んでいてけっこう笑いそうになる。
もちろん明治という時代性を考えた上で読まなければならない。もちろんだから表現を変えよというのはばかげている。この時代なりに、伝統の呪縛から解き放たれようとしている進歩的な女性を描こうとしている。
芳子が父親の元に引き取られることになったのはその時代のいい悪いではなく、田中との色恋沙汰に嫉妬しブチ切れた時雄の判断の結果。そういった人間臭い言動を飾らず綴っていくところが田山花袋のよさだと思う。
例の蒲団は掻巻といって、袖のある着物に綿を詰めて布団にしたようなもの。肩がつつまれるので暖かい。襟元にびろうどが貼ってあるのも標準的な作り。今の人はなかなかイメージしずらいかと思い補足。 -
今の自分と重なるところがあり、時雄に感情移入して純粋な恋愛小説として読んだ。お互いに惹かれあっているのに、環境や常識がそれを許さないことの辛さや不条理を美しく表現していると思った。読み手の状態によって様々な受け取り方が出来るだろうなと思う。次に読むとき、自分はどんな受け取り方をするんだろう。
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私には、登場人物の声がこんなふうに聴こえました。
芳子「上京したらいろんなことが楽しくなってきた。文学なんてどーでもいいや。オッサンは私に好意を寄せてるから、色目使って誤魔化しときゃチョロいw」
田中「女なんて抱けばチョロい。芳子は世話焼きで甲斐甲斐しく俺のこと世話して気にしてるし、実家も太いし、絶対逃したくない女」
時雄の妻君「うちの亭主ったら、こんなに家事育児で大変なのに、若い女性なんか弟子にして。芳子さんの食事の準備も私がしてるのに。子どもの面倒もろくに見ないで、芳子さんにお熱でわけわかんない行動するし。あんな若い女性に自分が相手にされるとでも思ってるのかしら。アホくさ。経済的に不安だから離婚しないけど、離婚案件だわ。」
時雄「妻君は子どもの相手ばっかり。なんか飽き飽きしてきた。俺の孤独なんて誰もわかっちゃくれない!あー不倫でもしてぇ…。とか思ってたら都合よく若い娘来た!こんなトキメキはいつぶりだろう!!向こうも絶対に俺のこと好きだしな?」
最初は、勘違いして若い2人の恋愛を邪魔するキモいおっさん、と思って読んでいましたが、なんか時雄が哀れというか、悲しいなという気持ちになりました。(間違いなく、一番の被害者は時雄の妻君ですが)
アレコレキモいことを考えてはいるのですが、結局行動には移せないのです。処女でないとはじめからわかっていたたとしても、時雄は行動できなかったと思います。なぜなら、何回も芳子に絆されたり、同情しているからです。
若い男女の狡猾さ、中年男性の浅はかさなど、誰でも持っている、誰もが経験したことのあるものが見え隠れして、現代の価値観には合わないものの、当時衝撃を与えたというのが何となく合点がいきました。
その後、芳子のモデルとなった岡田美知代さんについて調べたら、結局田中(モデルとなった人物は静雄)との結婚はうまくいかず…
おっさんがキモいのはさておき、やっぱり周りの忠告聞いておいたほうが良かったのでは。と思いつつ、それも人生也。 -
ストーリーは面白く、ついつい先が気になってしまいました。ただ、気持ち悪いクズ男が主人公で、現代の感覚からすると女性蔑視もひどいので、昔の本と知りつつも嫌な気分になりました。
蒲団というタイトルや、著者の名前から、もっとあたたかく優しい話を想像していたのですが、、、。 -
よく蒲団で検索すると、気持ち悪いってサジェストで出るんだけど、読んでる途中はそこまででもないよな???と思ってたんだよね
最後だわ。最後の数行がその気持ち悪さの凝縮された部分だわ
まぁそれはそれ
情景が浮かぶ部分が多いから読み物としては面白かった -
花の袋なんて素敵な名前の方が書く文章ってどんな華やかな物なんだろう!と思って読んで苦しくなりました。いい年した男の人が、同じところを行ったり来たりしていて、なんというか、くどい。嫌と言うほどに「性」を描いています。
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男性(むしろ男女全ての成人か)の本質を抉り出している傑作。人間、他に言わないだけで所詮こんなものだ。人に言えない、キモいエゴの塊。ここまで人間というものの深奥に土足で踏み込んだ文学が、かつてあっただろうか。「人間のクズ」ではない、「人間はクズ」と言いたいのだ。この作者は、誰もが思っているけど言えなかったことをハッキリと言ったわけだ。私は粗筋だけは中学生の頃から知ってたが、気持ち悪いと思ったきりだった。しかし、大人になって読んだ今、なぜ歴史に名を残す書となったか良く分かった。もちろん文体も素晴らしい。読みやすい、伝わりやすい、でも格調高い。表現されたもの全てが細部まで、肌に触れるように、恐ろしいほど眼前に迫って伝わってくる。だが何より、その文体という器に盛り込まれた強烈な意志こそが、本書を至高の芸術たらしめている。
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今もこういうおじさんがたくさん存在しているからすごい!!!このキモさが癖になる
若い女が自分を好いてくれるという謎の希望を疑わずに持っていて、それで自分のその女の道が怪しくなれば激昂する。処女であろうとなかろうと女(というか人間)の本質は変わらないのに、処女に執着するのはこの時代故なんだろうな。
終盤の、こんなんだったら自分が処女もらっとけばよかったよ!!みたいなこと言い出した部分きしょすぎて楽しかった。しかもこれが実話を元にしていて私小説というジャンルが誕生する黎明期の作品らしい。ここまで自分のことをさらけ出せるのはかっこいいな。面白かった。わたしがいま22才の女だから田中と芳子のちょうど中間にいる気がして、だからずっと2人にばかり感情移入してたから、語り手の先生が布団で泣いて終わり、ではなくて、芳子のその後が気になっちゃった。
ちょっと話が変わりますが、ダ・ヴィンチのレビューで触れていた、「南風に乗る」の記事読みました!見逃しており、ご指摘感謝しております。沖縄出身としては読まなくちゃです!沖縄のことも気にかけてくださりありがとうございます!
ちょっとコメントし忘れていました。
先ずは、数少ない私の沖縄関係レビューへのいいね、ありがとうございました♪今調べたら...
ちょっとコメントし忘れていました。
先ずは、数少ない私の沖縄関係レビューへのいいね、ありがとうございました♪今調べたら8つのレビューのうち5つもいいねしてくれていました。読んで頂き大変嬉しいです。沖縄出身とは知りませんでした。現在南西諸島は今頃になって市長が「こんなはずではなかった」と、島が標的になるようなミサイル基地への懸念を表明しています。あんた、そこらを歩いている農民じゃないんだから今更何を言ってんだ、とは思いますが、今からでも抵抗して欲しいとは思います。微力ですが、本土からも応援します。
田山花袋は、偏愛というか、変態というか、その辺りの評価を深掘りしたい気持ちはなくもないですが、墓穴を掘りそうな気もするので、自重します(^_^;)。
日本を守るという任務からも場所からも南西諸島の基地設置はやむなしというお上の通達圧...
日本を守るという任務からも場所からも南西諸島の基地設置はやむなしというお上の通達圧力強いでしょうね。市長レベルでどうにもしがたいと歯がゆいです。県知事レベルでも相手にされませんし。米軍に湯水のように補助金渡すのではなく古い武器しかない自衛隊の充実をさせてほしいと自衛隊関係者からの話を聞くと切なくもなります。
倉敷大原美術館巡りを検討しています。kuma0504さん旅紀行を参考にしたいと思ってます。楽しみです♪