- Amazon.co.jp ・電子書籍 (250ページ)
感想・レビュー・書評
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中学を卒業して田舎の教師となった清三。その若さゆえの悩みは現代にも通じるものがあり、情けなくも愛おしく思えます。
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中学を出て文学を志すも家庭の貧困や自分の才能の不足から夢を果たせず、地方の小学校教諭として生きてゆく主人公。
羽生市に実在した若者をモデルにした小説。今の仕事でも自己実現は可能と悟り、その上でできることをしてゆこうと前向きになる。しかし、明治の時代はそんな若者からも時間を奪っていく…。
利根川を挟んで向かいの館林市出身の著者であるので、風景描写が豊かで情景がよく浮かぶ。方言も実にリアル。
ただ、あまりスペクタクルな展開はないので、読み通すのはそんなには簡単ではない。 -
★2.5かな、やっぱり読んでないな、田山花袋は。
自然主義文学を代表する一人という教科書的知識で満足していた模様、お恥ずかしながら。
さておき内容は一言で言えば素朴。今でも通用する可能性を秘めた地方の若人の焦燥感と現実の冷徹さを描写しているけれども、結末の無暗とも言える飛躍ぶり含めてどこか淡白で奥行きが感じられない。惜しいんだけれども、本作は文学の発展の一つの段階ということかも。
当時の風俗描写など結構興味深い部分もあるし、日本文学の歴史の体感という観点では読むことをお勧めします。 -
この本に出会わなかったと思うとぞっとするくらいハマりました。退屈な話、暗い話と言われがちですが、違う、違うんだと声を大にして抗議したいくらいです。
たしかにドラマチックな出来事は起こらないのですが、主人公の心情と行動を丁寧に描いているため(とても古い小説なのにそのひとつひとつに身に覚えがあるわけですよ!)、そしてその変化のダイナミックであるため、読みすすめることに苦痛を感じることはありませんでした。そういう意味で、主人公の心境を理解できる人のみ読めばいい小説だとも思います。
少なくとも自分の場合、明治を生きた青年と自分の中に通ずるところを感じ、物語にぐいぐい吸い込まれていったばかりか、その後の人生に影響が残りそうな読後感を得るとことなりました。