悟浄歎異 —沙門悟浄の手記— [Kindle]

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  • 2012年10月1日発売
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  • 西遊記に登場する沙悟浄による仲間への思いを記した手記のようなもの。特に孫悟空に対する憧れが強い。

  •  くよくよ悩み多き沙悟浄視点が捉えた西遊記パーティー。
     三人称の『悟浄出世』に対し、本作は一人称で書かれている。『わが西遊記』の全体像はどういうものになったのか。『ツァラトゥストラ』に何処まで肉薄したのだろうか。
     余談:孫悟空の武器「金箍棒」の読みは、往年のテレビアニメ『悟空の大冒険』では「きんそうぼう」だった。昨今の訳書のルビだと「きんこぼう」になっている。それが本作では「きんそうぼう」。どちらを採択するべきか。

  • 西遊記の沙悟浄が、三蔵法師・孫悟空・猪八戒について語っている。
    孫悟空の圧倒的な強さと師への畏敬の念。猪八戒の天真爛漫な享楽主義。三蔵法師の生死を超越した悟り。
    それに比べて沙悟浄は自身をこう語っている。

    俺みたいな者は、いつどこの世に生まれても、結局は、調節者、忠告者、観測者にとどまるのだろうか。けっして行動者にはなれないのだろうか?

    それでも、三蔵法師の寝顔を見ているうちに、

    師父は絶えずじっと憐みの眼差しを注いでおられるのではなかろうか。

    と全てを受け入れられたように感じたのだろう。

    この作品を読んでいると、テレビドラマの夏目・堺の「西遊記」のキャスティングが、西遊記のベストキャスティングだと思う。

  • 西遊記の沙悟浄の手記。中島視点が楽しめる。

  • 学はなくとも実務に優れる悟空と、学はあるのに実際の役に立たず、文字による教養の哀れを感じる悟浄。三蔵法師については、外面的な困難に遭遇した際に切り抜ける道を外ではなく内に求める、普段から動揺しない平静な心が作り上げられている、いつどこで窮死してもなお幸福である心をと語り。ある種の天才たちに囲まれ、己の非才を嘆きつつも、どこか親しみを覚えてしまう。

  • 『林修の「今読みたい」日本文学講座』所収

  • 彼は火種。世界は彼のために用意された薪。世界は彼によって燃されるために在る。

  • 面白い。味わい深い。

  • なかなかめんどうなものを書いてくれますな。

  • 三蔵法師、孫悟空、猪八戒と旅する沙悟浄の手記。「悟浄出世」に比べると文章の漢文くささはほとんどなく、読みやすい。それも、人間界でこなれてきた沙悟浄くんぽくてよい。
    それぞれキャラクターの違う旅の仲間たちを、基本的には尊敬し、でも冷静に批判できる視点も持ち合わせ、でも「彼らにくらべて自分なんかまだまだ」と謙虚に考えている沙悟浄くん、好き。

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著者プロフィール

東京都生まれ。1926年、第一高等学校へ入学し、校友会雑誌に「下田の女」他習作を発表。1930年に東京帝国大学国文科に入学。卒業後、横浜高等女学校勤務を経て、南洋庁国語編修書記の職に就き、現地パラオへ赴く。1942年3月に日本へ帰国。その年の『文學界2月号』に「山月記」「文字禍」が掲載。そして、5月号に掲載された「光と風と夢」が芥川賞候補になる。同年、喘息発作が激しくなり、11月入院。12月に逝去。

「2021年 『かめれおん日記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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