土 [Kindle]

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  • 2012年10月1日発売
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感想・レビュー・書評

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  • ここ一年程少しずつ読み進めているが、登録をしていなかった。確実に暗い未来に突き進んでいて、読んでいて辛い。

  • いきなり「おつう、そんななりでわりや寒かねえか」という完全な茨城弁で始まり、その後も登場人物の会話が茨城弁のみで進む、通称、日本一読みにくい小説。ただただ当時の農家の厳し過ぎる暮らしを懇々と詳細に伝え、読み手の苦痛のどん底に叩き落とす、地獄のような小説。農民文学の先駆けとも呼ばれる。

    舞台は明治後期の茨城県は結城のあたりで、作者自身も主人公のような貧窮した小作農を多く抱える豪農です。小作農という意味ではプロレタリア文学と呼べるかもしれないが、特に搾取者階級の豪農を悪く言うでもないし、そもそも豪農とのやり取りがあまり登場しない。
    夏目漱石をして、「教育も品格も無く、最も貧しい農民の、下卑で、浅薄で、迷信強くて、無邪気で、狡猾で、無欲で、強欲な生活状態をそのまま本書「土」に収め、蓋をした。」

    章の最初には必ずその時期の鬼怒川沿岸の自然の様子を、これでもかというくらい描写する。それは漱石をして「誰も及ばない」と絶賛する一方で、「あまりに精緻すぎて、話の筋を往々にして殺してしまう失敗をしてる」と言わしめるくらい凄いのである(笑)。特に冬の描写は(暑ければ脱げばいい夏と違って着るものが無い当時を状況を踏まえて)またこれでもかというくらい読者の気持ちをどん底まで叩き落とす。

    実は漱石は本書をベタ褒めしており、朝日新聞への連載を斡旋したのも漱石だ(当時の朝日新聞の勇気が凄い)。以下に、その漱石の表現を抜粋する。「これは到底私に書けるものでは無いと思った。(中略)やはり誰にも書けそうにないという結論に達した。」「作としての本書は、むしろ苦しい読み物である。決して面白いから読めとは言い難い。第一に作中の人物の使う言葉が分からない。第二に年代が数年に渡る割に、凄まじいボリュームの割に、細かい周辺説明が多すぎて話が前に進まない。つまり、読者の興味を全くひかないのである。」「子供たちには面白いから読めというのではない、苦しいから読め、と言いたい。」

    全く、褒めていない(笑)

    小説でありながら当時の貧窮する農家を暮らしを切り取り、ありありと伝えてくれる本書を読むことは、きっと貴重な経験となるはずだ。是非とも、勇気を出して読んでもらいたい。

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