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感想・レビュー・書評
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摂州の浪人であった伊右衛門(31歳)は、三十俵二人扶持の身分に惹かれ、江戸四谷左門町にある田宮家の婿養子として、容姿に難があったお岩(21歳)と夫婦になるのですが・・・。『四谷怪談』には、いろいろとバリエーションがあるようで、著者の語る本編では、化けて出てくる幽霊の怖さよりも、人間の欲と陰謀にまみれた俗世間の恐ろしさに、現実味を感じさせられました。
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『東海道四谷怪談』の元になった伝説の1つである。元禄年間の話とされている。*於岩稲荷(東京都新宿区)には、お岩は働き者の貞女であり、夫婦仲もよかったという伝承が伝わっているようだ。
田宮の娘、お岩は、娘時代に、疱瘡に罹り、容貌が崩れてしまった。何とか娘を誰かに娶せようとする田宮の家は、素浪人・伊右衛門に縁談を持ちかける。伊右衛門は、娘の器量について聞きはしたものの、金目当てで田宮家に婿入りすることを決め、お岩の顔をしかと見ることもなく、祝言を挙げる。
近所に住む悪人、伊藤喜兵衛は自分の妾を伊右衛門に譲って厄介払いをしようと考え、策を弄する。田宮の婿に収まったものの、妻が不器量であることを不満に思っていた伊右衛門は、この策に乗る。
夫の企みを知ったお岩は、怒りに駆られて家を飛び出し、どこへとも行方が知れなくなる。
その後、伊右衛門や喜兵衛の周囲にさまざま怪異が起こり、謎の死が頻発する。
だが、この物語では、お岩がとり殺した証拠はない。酷い仕打ちをした相手がいなくなり、その後、怪しい出来事が起こった、というに過ぎない。
祟ったのかもしれないが、そうではないかもしれない。ただ何となくぞわりと怖い。
お岩の怒りの描写は怨霊を連想させるが、怨霊を作り出すのは、悪事を犯した側の「後ろめたさ」なのではないかと思わせる伝説である。
*田中貢太郎は他に、南北の東海道四谷怪談もリライトしている(青空文庫・南北の東海道四谷怪談(田中貢太郎))。
あっさりした印象だが、まぁだいたいこんな話だ。
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