音の世界に生きる [Kindle]

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  • 2012年10月4日発売
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  • 作曲家・箏曲家、宮城道雄のエッセイ。宮城は「春の海」の作曲・演奏などで知られるが、文筆家としても名高かったそうである。内田百閒と親しく、互いの随筆にしばしば言及があるという。

    「幸ありて」「声を見る」「騒音もまた愉し」「音に生きる」の4編。
    宮城は生まれついての盲人ではなく、7歳の頃から徐々に見えなくなり、9歳で失明した。その年から筝を始める。元々音楽好きだったこともあり、ずっと筝に向かっていたという。
    目の悪い人は往々にして他の感覚が研ぎ澄まされるというが、宮城も大抵のことは不便がなく、また周りの様子も相当にわかるという。
    おもしろいのは声の様子から、相手の身体つきや職業、気分もわかるというあたり。お医者さん、先生、坊さん、弁護士などというのはわかるものらしい。「頭を使う人の声は濁るようである。」とも言っているが、そんなものなのかな・・・?
    声だけではなく、足音でもわかるという。家のものか、客か、弟子か。外を歩いていてもこれは芸者だな、等とわかる。とはいえ、外れることもあり、お巡りさんかと思ったら、女学生だったなどということもある。「この頃の女学生は活発な歩き方をするので、私の耳も判断に迷うことがある。」というのが半分負け惜しみに聞こえてちょっとおかしい。
    その他、遠くの音が妙によく聞こえるときには、2,3日して天気が崩れるというのは確かにありそうなことで、やはり聴覚はかなり鋭敏であったものなのだろう。

    中途失明者であった宮城には、うっすらと色の記憶があったようだ。作曲をする際には、音とともに色も浮かんだものだという。このあたり、少し共感覚のような感じだったのかもしれない。
    代表作「春の海」を弾く際には、どんな色が浮かんでいたものだろう。

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著者プロフィール

宮城道雄(みやぎ みちお 1894‐1956)
名曲《春の海》の作曲者として知られる宮城道雄は、明治27年(1894)4月7日、神戸三宮居留地内で生まれた。8歳で失明の宣告を受けて以後、自らの道を箏曲地歌に定め、やがて西洋音楽の要素を邦楽に導入することによって、新しい音楽世界を開拓。自己の音楽理念に関する叙述も数多く著した。また、親友の随筆家、内田百閒のすすめで、昭和10年(1935)に最初の随筆集『雨の念仏』を出版して以来、生前に7タイトルの随筆集を出版。音楽家の単なる手すさびの域を越え、文学として一つの世界を確立し、川端康成ら各界から高い評価を得た。演奏家としても一世を風靡したが、昭和31年6月25日、《越天楽変奏曲》を関西交響楽団と共演するため大阪へ向かう途次、刈谷駅付近で急行「銀河」より転落、62歳で死去。

「2022年 『宮城道雄著作全集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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