民芸とは何か [Kindle]

著者 :
  • 2012年10月7日発売
3.58
  • (2)
  • (6)
  • (2)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 42
感想 : 3
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (48ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 〇不断使いにするもの、誰でも日々用いるもの、毎日の衣食住に直接必要な品々。そういうものを民藝品と呼ぶのだ。
    〇民藝品は民間から生れ、主に民間で使われるもの。したがって作者は無名の職人であり、作物にも別に銘はありません。作られる数もはなはだ多く、価格もまた低く、用いられる場所も多くは家族の住む居間やまた台所。いわゆる「手廻り物」とか「勝手道具」とか呼ばれるものが多く、自然姿も質素であり頑丈であり、形も模様もしたがって単純になります。
    〇これに対し貴族的なものは、上等品であり貴重品です。したがって数は多くできず、また金額も高価になります。作る者は多くは名工。それ故、器には在銘のものが多いのです。例えば同じ茶器と云いましても、いわゆる「 井戸」は前者であり、「 楽」は後者なのです。
    〇私達は工藝の美を見るにおいて、まずこれ等の区別をつけることが緊要なのです。
    〇工藝の意義を語らねばならないのであるか。四つの理由を私は挙げたい。
    (1)民藝品の美しさがほとんど全く認められていないから。
    (2)続いてはいわゆる上等の品が余り不当な過信を受けているが故に、それを修正しようとする。
    〇人々は器を見ずに、名を見、技巧を見ているのです。もし銘をけずり取ったら、いかに多くのものが彼等の讃辞から離れるでしょう。
    〇焼物にせよ、織物にせよ、木工品にせよ、真に美しいほとんどすべての作は無銘品なのです。
    〇無駄をはぶいた簡素、作為に傷つかない自然さ、簡単な工程、またはそこに見られる無心の豊かな模様、健実な確かな形、落ち着いた深みある色、全体を包む単純の美、それは民藝品を美しくさせているその同じ原理が働いているからではないでしょうか。
    〇日本の陶工の中で、作からいって一番傑出している一人は穎川です。私は彼の赤絵の素敵な美しさに心を引かれます。
    〇あの光悦が捕えたいと腐心したのも、南方朝鮮の下手な茶碗に潜む美でした。あの木米 が、鋭くねらった煎茶茶碗の美も、明清の下手な蒔絵に宿る風格でした。
    〇「七つの見処」は見る方にあるので、作る方にあるのではないのです。
    〇民衆の手を離れて、あの「大名物」の美はあり得ないのです。あの雅致とか渋さとかは、貧しい質素な世界からの贈物なのです。
    〇今の人々はこぞって在銘のものを愛します。だがそれは「銘」を愛し、「人」を愛し、「極め」を愛しているのであって、美そのものを見つめているのではないのです。
    〇読者よ、もしここに在銘の作と無銘の作とがあったら、躊躇なく後者を選ばれよ。いかに美的鑑賞が進む日が来ても裏切られる場合は決してないでしょう。在銘の作はいつか飽きてきます。これに引きかえて無銘のものは、生涯貴方の友達となるでしょう。
    〇実用を離れて工藝があり得るでしょうか。用途に即さずして工藝の美はあり得ないのです。
    〇もし功利的な義でのみ解するなら、私達は形を選ばず色を用いず模様をも棄てていいでしょう。だがかかるものを真の用と呼ぶことはできないのです。
    〇模様も形も色も皆用のなくてならぬ一部なのです。
    〇民藝品の有つ一つの特色は、多産の品でありかつ廉価だということです。
    〇民藝品の美は生るる美であって、作らるる美ではないのです。
    〇今日の機械生産はさらに安く多く作るではないかと云われるかも知れません。しかしそれは元来用のために作られるよりも利のためでありますから、悲しいかな美と離れてくるのです。
    〇否定できない顕著な事実は、資本制度の勃興と共に、工藝の美は堕落してきました。
    〇個人個人の作ではなく、それは統一ある一時代の作なのです。
    〇彼等は美の背後にいかなる組織の美があったかを見ないで終ったのです。

  • 時々目にする「民芸(民藝)」とはいったい何か?は概ね理解できたように思う。ただ民芸というのは数多の芸術のうちの一形態であって、柳が否定する豪奢な高級品も、また別の価値を持つように思うし、すべての民芸品が商業的価値や利潤追求とは無縁で作られたかのような思想も、正しいとは言えないように思った。

全3件中 1 - 3件を表示

著者プロフィール

柳宗悦(やなぎ・むねよし):1889-1961年。学習院高等科在学中に雑誌「白樺」創刊に参加。主に美術の分野を担当した。東京帝国大学哲学科を卒業後は宗教哲学者として活躍。濱田庄司、河井寛次郎、バーナード・リーチ、富本憲吉らと出会い、「民藝」という新しい美の概念を打ちたてた。眼の人として知られるが、柳のまなざしは、物の美しさだけではなく、物を生み出した人や社会にたえず注がれていた。

「2023年 『新編 民藝四十年』 で使われていた紹介文から引用しています。」

柳宗悦の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×