はつ恋 [Kindle]

  • 2012年10月7日発売
3.55
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感想・レビュー・書評

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  • 主人公が隣の敷地に越してきた公爵令嬢ジナイーダに恋をする物語。
    彼女に魅せられた取り巻きの男たち、マレーフスキイ伯爵や医者のルーシン、詩人のマイダーノフ、軽騎兵のベロヴゾーロフたちと共に熱を上げる。
    しかし主人公はジナイーダからは特別な恋人としての地位ではなく、そばに仕える「小姓」のように扱われてしまう。
    心理的な距離があり、謎めいた存在である父親の影がちらつく。
    ある日、父親と馬を駆って遠出した主人公は、とつぜん行方をくらました父親を追いかけた先で、ジナイーダとの逢瀬の瞬間を目撃してしまう。
    従順な、頑なな微笑を浮かべるジナイーダが父に向かって手を差し出した瞬間、父親に鞭でぴしりと打たれる。
    その鞭で真っ赤に腫れた腕に接吻するシーンはクライマックス。
    四年後、すでに結婚していたジナイーダを尋ねると、産後の体調が悪く死んでしまったことが明らかになる。

  • 好きか嫌いかと聞かれれば、嫌い。

    叙情的な文体、細かで複雑な人物造形と描写、恋に浮かれた主人公らしい不安定で愚かな視点、恋とは何かという主題。どれをとってもなるほどと思わされるけれど、いかんせん、親父が息子の惚れた若い女性と恋愛するという筋が気持ち悪い。

    振り返れば、思春期に恋愛に対して冷静かつ穏やかな視線を投げかける川原泉漫画と出会ってしまったわたしには、「恋って人を狂わせるよね」「熱く燃える恋こそが恋!」という思想はどうしてもなじまない。
    激情に身を任せて酔いしれる者たちの姿に、お盛んでようございましたねとしか思えないので、自らの人生を筆に託したツルゲーネフ氏にこんな言い方をしてすまないが、たとえそれがいかにリリカルで美しくとも心の距離を置いてしまうのだ。

  • 初読じゃないはずだけどまったく覚えておりませぬ。。。★3.5だがおまけで。
    ともあれ、現在だったらもっと直接的な、性的な描写をするんだろうなぁと思いつつ、それが進歩か、時代の流れと言われると必ずしも肯定的なものではないということがこの作品が証明している。
    分かってますよ、途中から結末は。でもどこまで抑制的描写が色んな想像を読者にもたらすことを現在の作家たちはもうちょい考えてほしい、というのが愚民の戯言的感想であります。

  • 16歳の主人公が21歳のジナイーダという女の子に恋をする物語。
    主人公は初恋のロマンチックな感情に任せ、ジナイーダに自分の情熱全てを注ぐ。他にもジナイーダに恋をしている数人の男がいるが、ジナイーダはわがままな令嬢という感じですべての男をもてあそぶ。
    ただ、そんなジナイーダも初恋のような情熱が湧き上がり、更に自分の感情に翻弄されるようになる。
    恋の結末は初恋から始まり、初恋という純粋なロマンスからかけ離れた、父の不倫という形で終わる。
    そして最後はその情熱が冷めきらないまま死という呆気ない結末。
    感情の描写はロマンチックで臨場感があり面白かったが、ストーリー自体はあまり好きではなかった。
    この強烈な初恋のを経て、物語のあとに主人公がどのような人生を送ったのかが気になる。

  • 16歳。両親も男であり女であるというのはいつ頃気付くんだっけ?人にはいろいろな顔があることを知ることに、傷つき、驚き、悩み、受け入れることを恐らくやってきたんだろうけれど、活き活きとその感覚を思い出させてくれる気がする。生と死を情熱という観点から見ると幸せって結構感情が揺さぶられて大変かも。青空文庫で読んだのであとがきがないと思ったら、神西清「はつ恋」解説で読めました。満足。

  • 13章あたり(ジナイーダは恋をしてるのだ!あたり)で、相手は主人公の父親なのでは?と気づいた私は名探偵だと思う。

    冒頭で父のことを「あんなに取り澄ました自分勝手な男は知らない」と書いていたのに、

    当時を振り返って「あのとき私は父のことを男の中の男だと思っていた」と書いてたりとか、

    その後私と父との間にあったとある出来事のせいで台無しになってしまった、みたいな仄めかしがあったりしたのでフラグをめちゃくちゃ感じた。

    コケティッシュで、自分の崇拝者に「人間のぶつけあい」をして遊んでいたジナイーダが人夫プレイボーイに恋して恐らくは遊ばれたのなんとも言えない。

    ジナイーダ、私が好きなのは私に熱を上げない人、私を弄んでくれる人って言ってたもんな

    恋は人を馬鹿にするんだなあ

    主人公鈍いな、と思ったけどまあまさか自分の父が不倫してるとは思わないだろうし。

    ラストに父は脳溢血で死に、ジナイーダも夫との間の子供を産む時に死んだのは割と驚き。

    思春期の主人公が、愛と恋と生と死を味わって大人になっていく話だったのかも。

    精神的な面での子供時代の終わりを
    「自分の中の何かが臨終を迎えようとしていた」
    って表現してたのが好き

  • 初恋の相手が自分の父親と不倫してたなんて物凄い後にトラウマになりそうですね。取り巻きに囲まれて調子に乗ってる美少女って魅力的じゃありませんか。

  • トルストイと同じくらい人間愛に溢れているなあと感じた。初恋の甘くも酸っぱい、盲目的で情熱的な心の動きと、思春期のバカげた妄想のバランスが絶妙であった。読みながら恥ずかしくも懐かしくもあった。父親に対して抱く畏怖は、その不貞を知ってすらなお揺るがない。そこら辺が、日本人としては理解しがたい感覚であった。ジナイーダの自我の揺らめき、自己実現と自己中心的な自己愛のせめぎ合いも、こちらを作品に引き込んでいく格好の題材だった。ツルゲーネフの底なき人間への好奇心が垣間見える。

  • 読書家の先輩からおすすめしていただいて手に取ったのがはじめまして。昨年三分の一ほど読んで積読していたところ、青空文庫で偶然見つけたので続きを読む。

    はじめは主人公に感情移入もできず、我儘な女の子に報われない恋をして言い成りになってしまう少年をばかっぽいな…と思っていた。やきもきして全然楽しめなかった。ロシア人の名前覚えられないし、ロシア文学っぽい倦怠感が存分に漂っていて重いし。
    でも中盤を過ぎ、ジナイーダ(片思いの相手)が何者かに恋をしていることに主人公が気付いたあたりからようやく一歩引いたところから読めるようになってきて、そこからラストまではすぐだった。

    自分にとって良いと思えるものが周りに沢山あるのにそれでも触れたいと思う手があることとか、もう会わないと決意した矢先に偶然再会してしまう不条理さとか。
    主人公が心のなかで叫ぶように、確かに『これが恋なのだ!』
    端から見ていたらばかっぽく思えてしまうものでさえ全て。

    作者の実体験を元にしていると聞いてから、最後の22章の盛り上がり部分はツルゲーネフの独白のように聞こえた。以下引用です。

    ・ああ、青春よ! 青春よ! お前はどんなことにも、かかずらわない。お前はまるで、この宇宙のあらゆる財宝を、ひとり占めにしているかのようだ。憂愁でさえ、お前にとっては慰めだ。悲哀でさえ、お前には似つかわしい。お前は思い上がって傲慢で、「われは、ひとり生きる──まあ見ているがいい!」などと言うけれど、その言葉のはしから、お前の日々はかけり去って、跡かたもなく帳じりもなく、消えていってしまうのだ。さながら、日なたの蝋のように、雪のように。……ひょっとすると、お前の魅力の秘密はつまるところ、一切を成しうることにあるのではなくて、一切を成しうると考えることができるところに、あるのかもしれない。ありあまる力を、ほかにどうにも使いようがないので、ただ風のまにまに吹き散らしてしまうところに、あるのかもしれない。

    ここがすごく好きだった。読めて良かった!

  • kindlefireHDにて読了。
    やっぱり大きい画面やと読みやすいですね。すぐ語句を調べられるのもよい点でした。

    さてさて今回は必要に迫られて読みました。
    なかなかキツイ話ですね。
    ウラジミールが恋をしているときの心情なんかは胸に刺さる部分が多くあります。

    海外文学は『車輪の下』と『狭き門』くらいしか読んだことがないのですが、その二つよりもさらに読みやすかったきがします。

    一読しても損はないかと。

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