赤いろうそくと人魚 [Kindle]

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  • 2012年10月7日発売
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感想・レビュー・書評

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  •  我が子には、寂しい海ではなく優しい人間に育てられて幸せになって欲しいと勝手な期待をした人魚と神社に捧げる蝋燭を売る蝋燭屋に預けられた人魚の子どもの物語。
     人魚の子には容姿を含め人を引き付けることができるような不思議な能力があり、それにより人間の身勝手さにひたすら振り回されていた。ある意味では、生まれる前からさえ元凶を作った母の人魚にも振り回されていたと言えるかもしれない。最終的には、人魚の子の最後に作った赤い蝋燭を母の人魚が使うことで人間に復讐するという形になるのだが、とことん人魚の子が可哀想な話だった。
     結局のところ、誰一人として人魚の子を理解する者はおらず、そうでなくても人魚の子を育てたお爺さんお婆さんが香具師の思惑を見抜けなかったように、また母の人魚が勝手な期待を人間に抱いていたように、どんなに近くに居たり相手のことを思っていたとしてもお互いのことを本当に理解することなんてできないと思い知らされた。
     もしかしたら、人魚の子が絵を描いた蝋燭の燃えさしを持っている船が航海中に安全だったのは母の人魚が守っていたのではないかとも思ったが、それも勝手な期待にすぎないのかもしれない。

  • う、恨んでやるぅぅぅ!

  • 山の上のお宮に灯る赤い蝋燭。

    その蝋燭は、人里で慈しまれ育てられた人魚の娘が、里を離れるとき、その際まで塗っていたもの。

    -------
    人魚の赤ちゃんは、人間の手で育てられるように願った母親により、宮の参道におかれます。
    赤ちゃんを家に連れて帰り、大切に育てたおじいさんおばあさんに、美しく成長した人魚の娘は何か恩返しをしたいと考えます。

    蝋燭を商っているおじいさんおばあさんのため、蝋燭に絵を書くことを思いつく娘。
    しかし蝋燭に書かれた美しい絵が評判を呼び、同じように娘の評判もあがって、世間の人々はこの娘に大変な興味をもつのです。

    やがて人買いが、おじいさんおばあさんの元を訪れて……
    ------------

    人魚の想いが灯す赤い蝋燭。
    人も絶え、うらびれた村の山上に灯り続ける蝋燭が哀しくもあり、恐ろしくもあります。

  • 短いけれど怖い。
    ひたひたとすり寄るような恐怖。

    人間に育てられた人魚の少女。彼女蝋燭に書いた絵が評判になるのだけれど、欲にかられた育ての老夫婦は少女を売り飛ばしてしまう。

    その後、彼女の故郷では赤い蝋燭が供えられると、海が荒れるという災難に見舞われる。

    これはなんと悲しい物語。
    「人間とは良いものだ」と思ってくれた人魚のお母さんに申し訳ない気持ちになった。

  • 人間に大きな希望を抱いている人魚の母に大変申し訳なく思った。きっと人間はそんなにやさしいものではないから…そして滅びるまで怨むことになる。思いの外悲しい物語であった。種族の違いは簡単に相入れるものじゃない。
    月の光、海の暗さ、遠くの蝋燭の灯り、そういった明暗のコントラストが美しく目に映った。波の音を聞くとき、何かが聞こえないか耳をすませてしまいそうだ。

  • 人間ってのは素晴らしい存在らしいよ、という勝手な思い込みで赤ん坊を捨てて、更には人間に育ててもらって、でも思い通りにならないと恨みで町を滅ぼす、という恐るべき人魚。これだから人魚ってのは信用できん。
    にしても最初は可愛いねーとかいって育て始めたのに、金に目がくらんであっさり売り払う年寄り共も、その変節ぶりがナイス。これだから老害共は、ってなるってことか。
    まぁお互いに割とどうしようもないということだった。

  • “人間は、この世界の中で一番やさしいものだと聞いている。そして可哀そうな者や頼りない者は決していじめたり、苦しめたりすることはないと聞いている”

    人魚は、知らない世界や隣の芝生がよく見えたというより、良いものなんだと思い込みたかったんだろう。そんなのは幻想でしかないのに。
    赤く塗りつぶされたろうそくが、人魚の絶望にも、それでも救いを求める気持ちにも、また不穏なことの象徴にも感じられて悲しい。

  • 優しい人間が住む陸地に憧れた、北の冷たい海に棲む人魚が、我が子を産み落としたことから始まる、本当は怖い【小川未明】の童話です。「蝋燭屋」を営む信心深い老夫婦が、捨て子の人魚を育てあげるのですが、欲に目がくらみ不幸に見舞われていきます。人の心の変容ぶりが、大いなる災いを招くことになることを戒めた、大正10年に新聞掲載された作品です。

  • 2019/1のブンゴウメールだと、これが一番好き。
    人魚の身の上を思うと、なんとも悲しい気持ちになる。

  • この作者初めて読んだが、偉人なのだろうか。
    作品の無国籍な感じはなかなかいいかもしれない。

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著者プロフィール

明治・昭和時代の小説家・児童文学作家。新潟県出身。「日本児童文学の父」と呼ばれ、『赤い蝋燭と人魚』『金の輪』などの名作を多数創作。

「2018年 『注文の多い料理店/野ばら』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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