三浦綾子 電子全集 氷点(下) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 妻の夏枝が自分の部下に誘惑されている間に娘を殺されてしまい、復讐として、犯人の娘を育てさせる夫、啓造。
    啓造を頼り、離れるつもりはないが、自分の魅力を確かめたく度々誘惑に駆られる夏枝。
    長い時間一緒にいる中で、時には相手を許し、愛情を再確認する事もあるが、その一方で、やはり憎いと思い、相手が辛い思いをすれば良いと考えてしまうような事が起きる。
    平穏な日常を取り戻しそうなのに、その度に何かが起こりうまい具合にはおさまらない。
    読んでいるとヤキモキしてしまい、どういう展開になるのか気になってどんどん読み進めてしまった。

    啓造と夏枝に引き取られた犯人の娘である陽子は、幼少期はその事を知っている啓造に避けられ、育てていた娘が犯人の子であると知った夏枝には掌を返したように冷たく陰険な態度を取られる。兄の徹はいつも優しく接してくれるが、それは兄妹愛ではなく、異性としての愛。
    しかし陽子は家族関係が崩壊している中で、驚くくらい素直で前向きに育つ。
    そんな中、両親の友人である高木や辰子に気にかけてもらいながら、兄の友人である男性と出会い、お互いを好きになり、これで陽子にも幸せな人生が来るのではと思ったところで、また邪魔が入り…。

    例え理不尽に辛く悲しいこと起こっても、自分に恥じることはないからと、自分を肯定し胸を張って生きてきた陽子。
    それは思春期の過大な潔癖さや一途さによるもので、陽子を支えるものでもあったが、最後はそのために打ちひしがれ、取り返しのつかない行動をとる事になってしまう。
    陽子にとって、自分を許すことは人を許すこと以上に難しいのかもしれない。

    • ゆきやままさん
      懐かしい。たしかキリスト教的なテーマがあったように思いますが、それよりメロドラマですよね(何度も映像化されてるし)。すごく気になるところで終...
      懐かしい。たしかキリスト教的なテーマがあったように思いますが、それよりメロドラマですよね(何度も映像化されてるし)。すごく気になるところで終わるので続編も是非!
      2024/01/03
    • 紺さん
      コメントありがとうございました!
      読み終わった後で続編があった事を知り、そちらも読了しました。
      本当にメロドラマですよね。
      それにしても、陽...
      コメントありがとうございました!
      読み終わった後で続編があった事を知り、そちらも読了しました。
      本当にメロドラマですよね。
      それにしても、陽子や同世代の純真さに対して、大人たちのダメさにがっかり。。辰子さんの鯔背っぷりが救いでした。
      2024/01/03
  • 三浦綾子の初読。
    新聞小説だけどドラマを観てるような登場人物のエキセントリックな個性が目立つ。多分40年くらい前に読んでいたなら、そこそこ面白かったんだろうけど、いかにも時代や宗教色を感じさせる内容なので、意識内での修正が必要。ではあるものの、後の付録にあるが、三浦さんの賞を取るまでの努力だったり過程だったりが、あざとさもあってなかなか面白かった。電子書籍が安かったせいもあるけど、陽子の安否が気になり、直接の続編である、「続 氷点」をポチってしまった。読み通すかどうかは考え中(^^)

  • 陽子は誰も責めない選択をする。

  • 夫の嫉妬から殺人犯の娘を育てさせられている事を知った夏枝には同情するが、下巻の我が侭ぶりぶりは酷いというか痛々しい。何度深刻ないい争いをしても次のシーンでは何事もなかったかのように進行していくのは違和感を覚えた。その時点で家庭崩壊だろうよ。結局秘密を知った娘は自殺を図り、娘を佐石の子だと啓造に教えた友人(高木)も啓造への嫉妬の一方で啓造を買いかぶり啓造が汝の敵を愛し育て上げる事を勝手に信じて佐石の子と告げて啓造を苦しめようとしていた事が判る。結局は嫉妬と誤解が全員を不幸にした。陽子が一命を取り留めたかどうかについては希望的表現で終えているが、それが読者にとっての救いを与えた積りなのかもしれない。

  • 原罪がテーマなので、宗教色が少し強いが最後まで面白い小説だった。続編も是非読みたい。もう少し安くなってくれると良いのだが。

    最後の高木の解説を理解するのは難しい。夏枝は現代で言う所の美魔女なのかもしれないが、はっきり言ってきもい。個人的にはキレイな美魔女より迷わず若い子を選ぶ。啓造の変態趣味もきもい。娘に対する視線もきもい。娘のいる親はそんな感情を持つものだろうか。何度もドラマ化されているようなので、配役が少し気になった。

  • このシリーズの良いのは三浦綾子と夫へのインタビュー記事が読めること。氷点発表時三浦はプロの作家ではなく雑貨屋のおかみさんだったのだ。氷点発表は朝日新聞社の1000万円懸賞がきっかけ。正に爪に火を灯すような努力のもと、夫の批評や清書という助力を経て完成させたらしい。最初に書いたのが最後の場面というのが面白い。
    内容に関して言えば本書を貫くテーマは「原罪」であるという。三浦がクリスチャンであるからこそというテーマだが、人間が生まれながらにして持っている逃れらない罪ということだと思うが。その原罪を、陽子は殺人犯の子として生まれた自分、に置く。親の犯した責任を子が負うということは現代では基本的に正当化されないと私は考えているが、とはいえさすがに我が子を殺した人間の子に対してどのような気持ちを持ちうるかはその立場にならないとわからないか。本作を読み進めるとどうしても自分の倫理観の拠って立つ根幹を考えざるを得ない。三浦はそれがキリスト教だからある意味いいが、無宗教なる身としては常に揺らぐ可能性を有しており、いかに脆いかを感じてしまう。

  • 人間の愚かしさを,これでもかとたたみかけて描写してくる作品。それにしても,お母さんの意地悪ぶりはギャグ漫画の域に達しているかも。最後の展開は,なかなか衝撃的。ラストで一筋の光明がもたらされた,と思いきや『続・氷点』でも,昼メロ的展開が続く・・・。

  • 感想書いたのに消えてしまった。。

  • 作品自体が古いのだから仕方ないけれど、昭和を舞台にした昼ドラのような展開、古くさい登場人物の振るまい、ファッション、会話に違和感がありまくりで読んでいてつらい。
    それでも、自分の子供を殺した殺人犯の子供を育ててきた夫婦にどんな結末が待っているのか、期待して読んだ。
    啓造は健気でかわいい陽子にメロメロだからどうせ許すだろう。
    でも夏枝は陽子を受け入れることができるのか。

    実は殺人犯の子供ではありませんでした、というラストに愕然。
    なんじゃそりゃ。

  • 「陽子」を斡旋した「高木」は、どこかの時点で本当のことを言うべきだったのでしょうね。良いことも悪いことも、ウソは必ず発覚します!

  • 体調が悪くて一日自宅警備員をした昨日、一日で上下巻読んでしまった。

    時代も背景も違うけれど、それでもなんとなく、湊かなえの「贖罪」と通ずるところがあると思った。
    無神経と、想像力の欠如と、自己愛から生まれる不幸の種。湊かなえの作品に出てくる「エミリちゃんのママ」も、氷点の「夏枝さん」(美しい名前だと思った)も、なんていうか、全く悪気無く不幸の種を蒔く人だ、と思った。

    そして、愛憎や喜怒哀楽は、押しては引き、押しては引き、波のようにいろいろな人の心の中を漂って、それでも人は時にくさいものに蓋をして、時に蓋を開けて、生きていくんだなあ。なんてね。

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著者プロフィール

1922年4月、北海道旭川市生まれ。1959年、三浦光世と結婚。1964年、朝日新聞の1000万円懸賞小説に『氷点』で入選し作家活動に入る。その後も『塩狩峠』『道ありき』『泥流地帯』『母』『銃口』など数多くの小説、エッセイ等を発表した。1998年、旭川市に三浦綾子記念文学館が開館。1999年10月、逝去。

「2023年 『横書き・総ルビ 氷点(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

三浦綾子の作品

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