バイオパンク ―DIY科学者たちのDNAハック! [Kindle]

  • NHK出版
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感想・レビュー・書評

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  • 自宅の一室やガレージなどで趣味の機械や車を弄るように、生命を組み立てたり改造したりする時代が到来しています。
    これまでは大学や企業の研究室でなければ出来なかった遺伝子操作などが、今や個人で行えるようになったのです。
    この動きが活発化した一番の要因として、台所に溢れる調理機械の生物学版が様々開発されたことが大きいでしょう。
    倫理を置き去りにすれば人造生命や新薬の研究・開発が自由に行える土壌が整ったのです。
    本書はガレージサイエンティスト、バイオハッカーなどと呼ばれる日曜科学者のような人々を追った一冊になります。
    一線を越えるとテロリストになってしまうグレーな界隈となりますが、社会が個人の知的好奇心を抑制することはできないでしょう。
    この流れは止められないと読了後に確信したので、それならば科学を嗜む人間自身の内面教化も同時に進めなければならないと考えさせられました。

  • ジャーナリストらしく、バランスがとれた視点からガレージで起こっているバイオ研究のムーヴメントを描いている。やはり大学、企業等の研究機関がメジャーである現実は変わらないようだが、著者の見立てでは「パンク」として既成の権威に反発するDIYの精神が大事とされる。ただ、バイオの研究は試行錯誤に時間・コストがかかるため宝くじ的側面もあるようなので、オープンな環境で多数の研究者が取り組むという形が、イノベーションを加速させる可能性はある気がする。イノベーションが加速するほどに、安全性はどうしても気になるけれどね。



    <blockquote>バイオパンクはいまのところ、大躍進と呼べるような成果は出していない。この先も、おそらくそうした成果は出せないだろう。しかし、彼らはそんなことなど気にもとめずに楽しそうにやっている。彼らは、自分のために科学が何かを実現してくれるのを待つよりも、自分で科学しようと決めた。

    「プログラムは生物の個体発生のほうなんだ」と彼は続ける。「個体発生とは、ゲノムの調節因子と環境の相互作用で受精卵から成体まで分化させていくプログラムで、遺伝子は、その過程で生物種ごとの形質を形成するのに使われるデータにすぎない。

    産業と技術の基礎が土地と太陽光に戻るのだから、農村には雇用と富が生まれる」とダイソンは述べる。「熱帯諸国は現在、大量の人口を抱えて貧困に苦しんでいるが、太陽光が豊富であることが幸いする。また、太陽光は石炭や石油よりも公平に分配されるため、グリーン・テクノロジーは不公平解消の偉大な

    トマスによれば、その目的のために最も効果的な微生物はセルロースを消化する能力を有しているはずだ。セルロースは緑色植物の細胞壁を形成する繊維だ。つまり、地球上のあらゆるところに自生していて実質的に無料の原材料にできるセルロースを微生物によって安価に分解し、燃料に変えれば、金儲け

    合成生物学には、遺伝子パーツを組み入れたあと複雑な生物システムがどうふるまうかを予測するような計算の方法がない。

    大腸菌は原核生物で、核をもつヒト細胞とは根本的な違いがある。ヒトに役立つ蛋白質を生産させたくてもできないことが多い。一方、立襟鞭毛虫はヒト細胞と構造がよく似ているから、ヒトにとって有用な蛋白質をさまざまに生産させられる可能性がある、とシャウは考えている。

    それに、新規にマッピングする生物種のDNA配列をつなぎ合わせる作業は、いまなお人間の理解と直観が頼りだ。

    事実、アメリカのDIYムーブメントは社会に背を向けることではなく、社会のルールや固定観念を考え直そうとする姿勢だ。バイオパンクたちは、現行の体制と完全に別のところで独自のツールをつくろうとしているのではない。それをきっかけに、現行の体制を見直したり、だれのための科学なのかを考える

    ジェンナーと同じくハンターも平民の出で、医師よりも社会的に地位の低い外科医になった。古典教義ではなく実践で医学を身につけ、勉学よりも実験を何より重視した。そして当時の医者の多くがした

    バイオパンクたちに言わせれば、科学者が組み込まれているシステムに問題がある。さらに言えば、バイオテクノロジー業界の「すべてか無か」というビジネスモデル、つまり、つぎなる大ヒット医薬品を求める宝くじのようなビジネスモデルにも問題がある。つぎの大ヒット医薬品を追求するという姿勢は、必

     ジェネンテック社が設立されてから四〇年以上たった二〇〇九年、バイオテクノロジー業界のアナリストたちはこの業界がトータルで利益を上げたのは前年度がはじめてだったと報告した

    スイスの大手製薬会社ロシュがジェネンテック社を二〇〇九年に買収し完全子会社化したとき、ニューヨーク証券取引所でジェネンテック社の価値は八五〇億ドル以上[12]、年間利益は一三〇億ドル以上と評価された。ジェネンテック社はロシュ社へ売却した時点で、製品ポートフォリオに世界的な癌治療薬

     この話は、バイオハッカーが知的財産権の侵害にエールを送っているという話ではない。発明者の利益を守る特許システムは進歩のスピードを遅らせる、というかねてからの主張をグジャラートの農民が証明した点を評価しているのだ
    →このエピソードの種子、不稔化はされていなかったんだな。雑種強勢の効果は?

     DIYのサブカルチャーでは、どんな分野であれ、材料や道具のコスト、作業量をハックすることが、つねに優先順位のトップにある。金銭は、創造力の障壁となる。アイデアを思いついても、それを実現するための道具を買えなければそれまでだ。

    もう一つのトレンドは、カウエルだけでなく主流派の科学者たちも期待しているマイクロ流体工学の進歩だ。マイクロ流体デバイスは、トランジスタに電気を通すように微視的な溝に液体を分流させる。マイクロ流体工学の代表的な産物はインクジェット・プリンターだ。

    最初のトレンドは、サービス産業としてのウェットラボが増えてくることだ。現在すでに、趣味でやっている人でも数百ドルを支払う気さえあれば、キッチン・スポンジから綿棒で採取した試料や、唾液をバイアルに入れた試料をDNA配列読み取り会社に郵送して、その試料のDNA配列のスキャン結果をEメ</blockquote>

  • アメリカのバイオハッカー達のDIYバイオ文化を紹介。この世界全然知らなかったのだが、自分が目指してたものととても近くてすごく面白かった。

    今後の活動の指針となりそうな、とても重要な本です。

    --
    20世紀の航空宇宙がライト兄弟→ISSまで発展したなら
    21世紀の分子生物学はどこまで変わるのか
    危険だとわかっている配列には自動的に警告が出るようなセキュリティ体制
    遺伝子組み換えのテクニックを競うInternational Genetically Engineered Machine competiton: iGEM
    生物学も情報処理システムの別の形にすぎない
    生命科学を自分自身に関係のある身近なものとしてとらえ
    参加者が多いほどイノベーションはたくさん生まれる
    四体液説を墓に葬るのに貢献したのは顕微鏡
    メンデルは有名になるのに博士号など必要としなかった。ギークなだけで十分
    これからのイノベーションは。問題を抱えていてそれを何とかしたいと思ってる人から生まれる
    無法者生物学
    働きながら学位を取る
    IBMは2003年、OSSのLinuxのサポートで20億ドル稼いだ
    オープンソース科学
    自作派バイオロジーの基本は、ほぼ十分なら十分
    Mr. Gene
    生き物の基本建材ブロックを安価で入手
    BIOFAB
    「それって危なくないの?」と問う人は、必ずしも合理的な説明を求めているわけではない
    ゴキブリの脚は、切り離されても単独で神経節にメッセージを送る電気化学的潜在力を保持している

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