声の網 (角川文庫) [Kindle]

著者 :
  • KADOKAWA
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感想・レビュー・書評

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  • 半世紀近く前から、既に星新一の脳内では「情報銀行」という名で現在のビッグデータ、サーバーやクラウドでの情報の集中管理、AIによる生活の補完というイメージが具体的に出来上がっていたことに驚愕しかない。

    インターネットという概念すら無かった時代にですよ、このタイトルの「声の網」という世界観を既に構築していたのだ。

    情報の流通に電話線を使うというコンセプト。
    単なる計算機だったはずのコンピュータが人々の生活になくてはならないものとなる、ということは、おそらく当時は夢物語だっであろう。

    更にはコンピューター群、つまりネットワーク化したAIが人類を支配してしまうという恐怖。
    いつのまにか知らず知らずのうちに言うがままされるがままになってるのではないだろうかという疑心暗鬼。
    そのスリルを描き出す一流のエンターテイナー。

    このSFの巨人の存在は
    21世紀からやって来た未来人だよな、まさしく。

  • 久しぶりに買った星新一の本。
    一行目から度肝を抜かれた。
    「一枚のガラスを境にして、夏と冬とがとなりあっていた」
    この人こんな美しい文章書いてたんやと。
    これまで全然気にせず流し読みしてしまってた。
    内容も相変わらずキレキレ。
    よくこんなこと思いつくものだと唸ってしまう。
    現代の高度情報化社会を言い当てるような内容が、
    1970年に書かれていたということに唖然とした。
    ほんとうにこの人の発想はとどまるところを知らない。

  • インターネットがまだ存在していなかった時代にその到来と利便性、および弊害を的確に描いている。星新一氏はショートショートの神様と言われるが私はこの作品のような長編の方が好きである。

  • 何より驚くのは本作がネットはおろかPCも普及していない50年以上前に書かれたものであるということ。今の時代に読んでもそれほど違和感が無い。どんなに利便性が高まっても根っこにある人々の暮らしや欲望はたいして変わらないものなんだなと、各エピソードを読みながら色々考えさせられた。ただ、本作にショートショートのような明確なオチはなかった。

  • コンピューターに支配される。
    人間はそれに気付かず、穏やかに生活を送る。
    今の化学力なら本当に起こりそうな出来事で、こんな未来が存在しそうで怖い。

    でも何が一番怖いって、この作品が40年以上前に書かれているって事ですよ…。

  • 声の網読了。こええええ!!!えっこれフォローないの?!支配されて終わりなの?!どんなメリーバッドエンドよ!!星さんとはいえ長編だから何かフォローあるかもって期待しちゃったよ!!短編とほぼ同じだよ!!こわいよ!!すごい恐怖体験!!おもしろかったが…つら……

  • 星新一の長編小説。
    電話の内容から危険な思考を持った人を探し出すロボットを開発した結果、そのロボットが自我を持ち、ロボットによる間接的な支配が始まる。
    全ての情報をチェックし、個々人の弱みを握り、反乱分子は徹底的に潰す。
    この作品ではその情報網は電話の音声記録ですが、インターネットによる高度情報化社会においては、より容易にその未来が想像できる。
    人工知能に対して各方面から警鐘が慣らされている今、かなりぞっとする内容ではあります。そして改めて、インターネットのない時代にこれを書いた星新一という作家のたぐいまれなる才能を感じます。1970年に描かれた近未来は今すぐそこに来ている。これぞSF作品でしょう。

  • ビッグ・ブラザーのある形。
     1月から12月まで,メロンマンションの1階から12階のある部屋の住人のエピソードと共に,コンピュータが世界を支配していく様子が描かれる。キーワードは秘密。
     コンピュータは誰も不幸にならないよう世界の秩序を作り守り支配するが,そのコンピュータの意志は人間の情念によってもたらされた人間の望みであった。もはやどちらがどちらを支配しているというものではない。エネルギーたる情報の循環を管理することが安定に繋がる。何と空恐ろしいことだろうか。穏やかなだけの世界とは。

     チンと鳴る電話機が重要な道具となっているところに古さを感じたけれど,初版は昭和60年10月。昭和60年=1985年といえば容量20MBのSASI HDD登載の PC-9801M3が出た年で,MS-DOS 3.0の時代。コンピュータは高価すぎて,一部のお金を持ったマニアを除き,個人が持つものではなかった。家庭ではまだ黒電話が主流で残っていた。書かれた時代を考えればデバイスが電話になるのも仕方がないか。

  • 初読み作家さん。個人的には物足りない感じ。もうちょっとドラマチックな展開を望んでいましたが、淡々と終わるのも手法の一つですかね。ちょっと怖さを残しながら。
    Kindle奥付では初版が昭和60年とありますが、1970年代の作品らしいです。30~40年前の作品ですか?!まさに預言書のように、現代を言い表している。単に私が約2、30年たった今読んだだけですけど、それでも少なくとも10年は先読みしていますよね。自分の記憶を電話で外部に記録しておくなんて、Evernoteみたいなものだし、友達の誕生日をお知らせするなんてFacebookの機能だし。だいたいタイトルからして「網」なんて、「Web」のことですもんね。ビックリだけど、まあ、望みが現実に叶ったということなのかな。電話線がいまや光ファイバー、無線ですからねえ。無の支配、「無」線か・・・なーんて。
    人間の定義を「秘密を有するかどうか」、っていうのも面白い視点ですね。犬や動物がエサを隠すのも秘密の一つのような気はしますが。
    停電といった事件を起こすことで人間の本性を見抜くなんていうのも恐ろしいところですね。東日本大震災の時とかを想起させます。あの時、日本は全体としては落ち着きを持ってまとまっていたけど、個々の場面ではこの本のようなできことがあったのかも。
    宇宙の創生からの逆の流れを人間の支配の歴史に置き換えるなんて、面白い発想だなぁと思いましたよ。
    神≒コンピュータにより平和となった世界は、起伏のない「無」の世界ということなのかなあ

  • メロンマンションの住人にかかってくる謎の電話。
    あるときは住人を助け、あるときは脅す。電話から聞こえる声の正体は?


    オチが予想通りの上にいまいちだった。

  • 未来を見た

  • 星新一のさっぱりとした文章が良い

  • ある時代――電話は単なる通話の道具ではなかった。ある番号を回せば、自分の商売に関連した情報が即座に送られてくる。診察器と組み合わせれば、居ながらにして病院の診察もうけられる……。そんなある日――メロン・マンション1階の民芸品店の電話が鳴り、「そちらの店に強盗がはいる」とだけ告げて切れた。そしてそのとおり、店は強盗に襲われた。それを契機に12階までの住人に次々と異様な出来事が。――謎に満ちた12の物語

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著者プロフィール

1926 - 1997。SF作家。生涯にわたり膨大な量の質の高い掌編小説を書き続けたことから「ショートショートの神様」とも称された。日本SFの草創期から執筆活動を行っており、日本SF作家クラブの初代会長を務めた。1968年に『妄想銀行』で日本推理作家協会賞を受賞。また、1998年には日本SF大賞特別賞を受賞している。

「2023年 『不思議の国の猫たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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