毒婦。 木嶋佳苗100日裁判傍聴記 [Kindle]

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  • 朝日新聞出版
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感想・レビュー・書評

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  • 自身の魅力、というよりも、騙しやすい男性を見分ける能力と詐欺の能力が凄い人なんだ、と思う。美人ではない女性にどうして男たちは騙されるのか?騙されていく過程も少しわかって面白い内容だった。裁判中の被告の様子や弁護士、検察官とのやりとりも著者の目線からリアルに感じることができた。結局は地に堕ちた人間で被害者のことを考えると腹立たしい。

  • 他の人のレビューを読んで少し感想が変わった。

    被害者が命を落としておらず、例えば企業のお金を横領したとかの話であれば良かったのだろう。
    1億横領されても痛くも痒くもないような大企業で。

    それであれば、木嶋佳苗に魅力すら感じてしまうこの本は単純に面白いルポルタージュになるのだろう。

    太った、美人でもない女性の木嶋佳苗に惹かれていく男性の気持ちに添っていく著者の文章で、うっかり木嶋佳苗を好きになってしまうところだった。

    確かになんの罪もない、地味で大人しいだけで女性と縁が得られなかった男性のお金をだまし取ったうえに命まで。
    木嶋佳苗は殺していないと言い切っているが。

    死刑判決を受け、木嶋佳苗はどんな思いでいるんだろう。どんな言葉を遺すんだろう。

  • 当時かなり報道され話題になった事件。木嶋佳苗という人物を裁判の傍聴を通じて知っていく。臨場感がありとても面白かった。事件自体が興味をそそられるし、調べると木嶋佳苗の写真も見られるし彼女に迫ることができた。しかしなんと大胆不敵というか、何様だと思っているのか....

  • ノンフィクション、なのだろうか。
    本書を読む限りでは、著者が木嶋被告と直接コミュニケーションを取った形跡はない。裁判を傍聴し、記録をまとめたように読める。
    著者の主観による印象論が大半だが、一方で(自分が男のため)女性の著者によるフィルターが「補助線」となったことも事実だ。男目線だと被告の行動原理が理解できない。おそらく多くの男性読者も同意見だろう。女性の解釈(フィルター)を通すことで何とかイメージできる部分も多かった。

    被害者として証言する男性陣の発言を読むと、現代日本の中年男性がある種のファンタジーの中で生きていると感じる。女性に対する幻想のようなもの、というか、男が自然の摂理だと思っていることが、女性は人工的で恣意的なものだと感じているようだと朧気ながら分かって来た。男は「愛」が本来は無償のものなのだと信じているのだ。女性ほどは「生きるため」のツールという認識が無い。それほど男はぬるい。

    ノンフィクションを期待すると物足りないが、類まれな毒婦を素材にした女性論だと思えば勉強になる。
    女性心理が理解できなくて悩んでいる男性は、本書を読むと楽になると思う。


    <アンダーライン>
    ★★★「男性が喜びそうな女像」を徹底して演じながらも、「他人にどう思われるか」に、驚くほど無頓着で恐れを持たず、それより「どう見せたいか」にこだわり、相手に畏怖と敬意を求める。それが佳苗だ。

    ★★★人の目を気にしていたら、生きていけない。だけど、人の目を気にしない女に、人は冷たい。

    ★★★★男からは金を得る。その対価として女は「愛」を与える。そんな風に考える女は、いくらだっている。そういう意味で、佳苗は凡庸は毒婦だ。というより、佳苗を、佳苗の愛や男性観故に毒婦というのなら、たいていの女は毒婦であろう。

  • 作者が多少木嶋佳苗に肩入れしているのが気になった。

    この人は人としての魅力で男からお金を引き出したわけではなく弱くて孤独な人たちの心を利用しただけにすぎない。数ある男性リストの中から選んでいたのが小柄で弱そうな男性ばかりだったことからも本人が主張していたような対等な関係を望んでいたとは思えない。見下せる相手を選び傲慢な心でお金と命を奪った全く魅力に欠ける女だと思う。売春を自分に女としての魅力が溢れているとし、人を殺めた直後にウキウキできる心理が全くもって理解できない。あまりに歪んだ価値観に少しの救いも感じない。

  • 刊行当時にも読んだのに、電子版で読み返してしまった。読み返してもまだやはり、木嶋佳苗という人はわからない。ただ、著者が本書で言うように、この事件を通して女の生きづらさが逆に見えてくるのが面白い。

  • だいぶ前の事件ですが、なぜこんなに男に貢がせることができたのか、なぜこんな事件を起こしたのか、が気になって読んでみました。なにより男とは、女とは、が分かるかと思って読みました(笑)
    傍聴録なので真相は分かりませんでしたが、 読めば読むほど、本性がわからなくて怖い人。
    でも著者が思わず引きこまれるところなど、本音がポロッと書かれているところが良かったです。所々、考えさせられました。

  • 軽い気持ちで手に取ったけれど、とても面白かった。
    事件や被告の特異性に加えて筆者の観察眼と筆力、
    男性的ではないフラットな視点が良い本にしていると思いました。

  • 望んでいたのはあの虚構に塗れたブログのような生活のはずなのに、実際には正反対の男たちと関係を結び、金を引きだし命を奪った木嶋佳苗。本人の口から何度も出てくる「介護」という言葉が、彼女の「ビジネス」としての認識なのかもしれないが、それだけでは片づけられない異様さと不気味さを感じてしまう。得体が知らないからこそ彼女の世界を覗いてみたいと下衆の好奇心で思うのだが、何を読んでみたところで彼女の髪や肉体に取り込まれてしまうがごとくやはり何もわからない。わからないながらもどこかでこの事件の被害者たちに同情できないのは私が女だからなのかもしれないし、同世代だからなのかもしれないし、それこそ私も同じような虚を持っているからなのかもしれない。あとがきで北原さんが「男たちは何と安全な場所で生きているのか」と書かれていたが、その一文に尽きる。

  • 木嶋佳苗被告のこの事件に関しては「美人ではない」という報道が多かっただけに、魅力的に感じるという文については意外だった。

    自分の責任でやりたくないことをやらないようにしている人は魅力的な振る舞いの人が多いよなとか、魅力的に感じさせているものというのはおそらくいろいろな啓発本にある内容をかなり確実に実行している程度に簡単な内容で意識的な実行は難しいだろうなとか、ターゲットが小柄な感じの人が多いのは確実に精神的に優位に立てる人を選んだのだろうかとか、本題には関係のないところに興味をもった。

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著者プロフィール

北原 みのり Kitahara Minori
作家、女性のためのプレジャーグッズショップ「ラブピースクラブ」を運営する(有)アジュマ代表。2021年アジュマブックススタート。希望のたね基金理事。著書に『日本のフェミニズム』(河出書房新社刊)など多数。

「2022年 『パパはどこ?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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