- Amazon.co.jp ・映画
- / ISBN・EAN: 4988105065932
感想・レビュー・書評
-
1963年、松竹。野村芳太郎監督、渥美清、長門裕之、桂小金治、左幸子ら出演。
棟田博の同題の原作小説の映画化。戦後日本映画における天皇表象確認のために視聴したが、戦争映画・日中戦争表象としても興味深い作品。
『分隊長の手記』の棟田自身の経歴に即して、1931年の現役兵としての徴兵、1937年10月の岡山連隊応召、北支戦線での戦闘が描かれる。分量的には決して多くないが、台児荘での戦闘も描かれている。棟田(映画では棟本)が「兵隊作家」として脚光を浴び、九州の炭鉱に講演旅行に出掛けるシーンも描かれている。
長門裕之が行くところどこにでもあらわれる幽霊のような渥美清=山田正吉は、棟田がイメージした「庶民としての兵士」の典型なのだろう。軍隊の中ではじめて文字を学び、社会を知り、一時だけでも経済的・文化的な貧困から免れることができた、人情味溢れる力持ちの男。その山田の人生行路にしたがって、戦後の日光・戦場ヶ原での開拓事業や、華厳の滝での自殺死体を引き上げる仕事などが映像化されていることも重要。日本軍隊の文化人類学的な観察が描き込まれた映画であり、戦後の男たちの軍隊へのノスタルジーを描く作品でもある。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
歴史を勉強してもやはりわからない。
戦時中の雰囲気。
空気。
そして人々の暮らし。
やはり、そこにいた人でなければわからない。
習っている歴史は、誰かによって書かれたものだから奇妙なほど美しすぎるような気がいつもする。
この作品は、喜劇のジャンル。
でも、こういう雰囲気こそ当時の状況の一つであったようにリアルに感じる。
天皇陛下を心から愛する軍人。
こう書くと、なんとなく怖く感じる現代だけれど、
それって本当に純粋で、
自然とわきあがってきていたもののように思う。
若かりし頃の渥美清の主演作品。
一見の価値ありです。