瑠璃の雫 (角川文庫) [Kindle]

著者 :
  • KADOKAWA
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感想・レビュー・書評

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  • 心に深い傷を負った人々、心を病んだ人々の苦悩の物語。

    頑ななまでに心を閉ざし他人を一切信用しない、人差し指を噛んで悲しみや絶望に耐え続ける主人公の少女、美緒。乳児(弟の穣)を窒息死させてしまった無邪気で我が儘な美緒の弟,充。精神が破綻しアル中で入退院を繰り返すばかりの母親、由佳理。美緒や充、由佳理を献身的に支える由佳理の従姉で瑠璃と幼馴染みの薫。娘(瑠璃)を誘拐され失った辛い過去を持つ元検事の丈太郎。物語は、美緒と丈太郎の交流を軸に展開する。瑠璃と穣、それぞれの死の真相を巡るミステリーでもある。

    かなり重たい展開だが、読み出したら最後まで一気に読めてしまう。罪が法的に罰せられない、スッキリしないオチではあったが、美緒を支え続けた薫と丈太郎の温かさ、そして美緒の心の強さが物語の救いになっている。

  • 母と弟の3人で暮らす小学6年生の杉原美緒。母はアルコールに依存し、親類に引き取られた美緒は心を閉ざしていく。そんな折、元検事の永瀬丈太郎という初老の男と出会う。美緒は永瀬の人柄に心を開いていくが、彼はひとり娘を誘拐されており、大きな心の傷を抱えていた。数年後、美緒は事件を調べ始め、余りにも哀しい真実を知る――。家族とは何か。赦しとは何か。今最も注目を受ける気鋭が贈る、感涙のミステリ巨編!

  • kindleにダウンロードしたまま、ずっと読んでなかったのは『感涙のミステリー巨編」などという煽り文句が鼻についたせいなんだが、さっさと読めば良かった。 面白かった。でも重苦しかった。
    充について、穣の件は母親による言い聞かせだろうと思ったし、川の件も美緒の罪悪感が語られなかったことから助かったのだろうと思ってはいた。ただ、最後になってシレッと出てきて『赦す』と言う彼自身の気持ちについて触れられてないことを些か不満に思った。
    丈太郎と初惠の赦しは、引用されているマタイ伝の言葉に尽きるのではなかろうか。

  • 読み手を惹きつけるような
    話の展開方法で、読み応えがあった。
    赦しとは何か。
    かなしい気持ちはあるけど、もやもやは少ない。
    みんな前を向いている。

  • 評価が難しい。
    物語の主軸が主役の女の子美緒の家庭の話なのか、
    瑠璃の家庭の話なのか、最後までよくわからなかった。

  • 弟と共に預けられた親類宅で出会った元検事は誘拐事件で娘を失っていた。やがて心を通わせ成長した少女は一人真相探究の旅に出る。果たして社会正義の実現は必ずや被害者の救済となるのか。そんなことを自問自答しながら読む。罪とは何だね。彼が残した言葉が重く響く。

  • Kindle Unlimited 23-7冊目

    うーん、この作品は評価が分かれるよねー。

    最初は、途中で著者の略歴を調べ、多分美緒みたいな子を描けるだけの経験値や力量がないからかな、と思い(生い立ちで心が歪んだ女の子を描けるちゃんとした育ちのおじさんはなかなかいないと思う)。
    我慢して読み進め、第二章に入ってから、もっかい第一章を読み直して、父性を丈太郎に求めてるってことかーと理屈は納得し、描きたいテーマ設定は理解できるし嫌いじゃないけど、「描きたいことは分かるけど」、少なくともこの頃の著者には力量が足りないのかなと思います。
    読者側で、描きたいことは○○なのね、って補足しつつ読めば、面白いお話だと思います。
    ただ、表現力もそうだけど、構成もぐちゃぐちゃで(これは優秀な担当編集がいればちゃんとできたんじゃって気がしなくもない)、隠すことと見せるタイミングがおかしくて、どういうこと???っていう意味不明なことが多かった。全部読んで並べ直すと分かるので、これは見せ方、隠し方の順番の問題かと…。

    ミステリー置いといて、美緒と丈太郎の交流を中心にして欲しかったなと思う。美緒が丈太郎を「もっとも愛している人」だと言うことに共感ができないんだよぉ。(っていう関係を作った、というお話を描きたかったのは分かるんだってば、だから。)

    という訳で、私自身この作品をどう評価していいか悩んでる…。

  • めちゃめちゃ悲惨な子供たちを作り出して、彼らが救われていく様を描いたらさ、そりゃ感動する話になるよ。それにさ、弟が死んだと思わせておいて、ずっとそこに触れずに読者を沈鬱な気持ちで読み進めさせておいて、最後にどんでん返しジャジャーン、ってのは、トリックでもテクニックでもないよ。ずるいだけ。ドン引きだよ。と、理性はこう捉えたけども、感情は結構揺さぶられて一気に読んでしまったし、そこがこの作家の実力なんだと思う。悔しいけど面白くはあった。ただ、画家と検事が対峙したシーンですべてを話して絵を見せた、って後に画家が述懐するけども、このあたりは読み返しても時系列がおかしいと思うし、気になった。あと同シーンでの人物の呼称が姓から名に変わるのはどういう表現なんだろう?Kindle unlimitedで読んだ。

  • 少し展開が不自然な所を感じたが我慢して読了するとそれも納得できた。これって映像化されてるんかいなぁ?やりようによっては良え作品になるよな。

  • 感想を一言で述べるのが難しいが、とにかく不思議な作品と感じた。

    最後までで明らかになる色々なことの真相含めて、主人公の少女や元検事の老人にいいことは何も起きていないのだが、それでも彼女らが特に怒りに任せた行動に移らず、じっと生きて、事実を受け止めている。

    その生き方が心に残る。

    ミステリー小説のような謎を解く話ではなく、ただ事実が明らかになっていくという話であり、序盤から半分くらいまで、この先にどんな展開が待っているのか全く分からない内容であったが、それでも(それゆえに?)先が気になってしょうがなく一気に読んでしまった。

    伊岡さんの作品の面白さの理由を表現するのはとても難しいのだが、「いつか、虹の向こうへ」や「教室に雨は降らない」も含めて、こういう人の生き方・人生を描いた作品は、その生き方に共感する・しないにかかわらず面白いと思う。

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。2005年『いつか、虹の向こうへ』(『約束』を改題)で、第25回「横溝正史ミステリ大賞」と「テレビ東京賞」をW受賞し、作家デビュー。16年『代償』で「啓文堂書店文庫大賞」を受賞し、50万部超えのベストセラーとなった。19年『悪寒』で、またも「啓文堂書店文庫大賞」を受賞し、30万部超えのベストセラーとなる。その他著書に、『奔流の海』『仮面』『朽ちゆく庭』『白い闇の獣』『残像』等がある。

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