ウェブで政治を動かす! (朝日新書) [Kindle]

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  • 朝日新聞出版
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  • 初Kindle本。
    「Twitter社会論」の発展版。
    デモの考え方やオープンガバメントの事例が興味深い。
    ウェブによる「政治の日常化」はできると思う。というかすでに始まっている。
    ネットがもたらす多様性が、これまで政治に関わる事に近寄り難さを感じていた人たちの受け皿として機能するはず。

  • 【政策とはなにか?】
    選挙を前に、「政策」が話題になっている。「政策を示せ!!」「政策の一致が前提だ!!」「政策がない!!!」「政策の前に、大同すべきだ!!」などなどいろいろな、「政策」が飛び交っている。

    しかし、政策とはいったいなにか?僕は、いまいち分からない。こんかい(H24年末)の選挙で話題の政策といえば、原発や消費税だ。しかし、石原慎太郎氏は、原発や消費税を小さな問題といった。どうやら政策にも大きいものや小さいものがあるらしい。ちいさい政策、大きい政策、、、、政策ってなんだろう。

    本書で、その答えが分かればと思って読み始めた。


    【概要】
    著者は、ITジャーナリストとして、2004年、レコード輸入権騒動の中で、政策決定プロセスに疑問を持った。著者が参加した審議会では、利害関係者が雑談のようなものを行い、熟議なきまま決定した法案が、国会に提出され法律となっていた。

    このような政策決定プロセスに対して、市民が何をできるのか。
    WEBを使うことで、新たな方法があるのではないかというのが本書で描かれていることだ。デモ、ネット選挙、ネット世論、マスメディア、ソーシャルメディア、政治家側のネットの課題どなど。情報の受け手である政治家への多くのインタビュー、日本や世界中の最新事例も交えて、政治参加方法を多数、提案している。





    【①政策の意味~まえがきより~】
    「政局ではない政治の一側面-それが政策だ」
    「ある局面での政治動向や政党内、政党間の勢力争いは「政局」と呼ばれる」
    「ざっくりと言えば、それは政府や自治体がわれわれの生活をよりよくするために、つくったり定めたりする方針のこと」

    本書では、政策は、ざっくりと言うと方針のことであると定義している。方針とは何か。ググってみると「めざす方向。物事や計画を実行するうえの、およその方向(goo辞書)」のことと分かる。あえて”ざっくり”と言っている点に注目して、「政策とは、方針である」と仮定して、以下に進む。



    【②政策の事例】
    「レコード輸入権問題」「違法ダウンロード刑罰化」「消費増税」「TPP」、、、



    【③政策は、どのように作られるか~第一章から】
    「自民党時代は、役所が中心となり(略)官僚が役所関係に根回しをして政策の賛同を取り付ける」「有力な政治家への根回し」
    「党の政務調査会に持ち込み(略)部会で了承を取り、(略)審議会、総務会を経て、内閣で決定」「法案を国会に提出」


    自民党政権下では、政策は、主に役所が作っていた。政策案は、有力政治家→自民党の部会→審議会→総務会→内閣→国会の承認を得て、法律となっていく。政策は、最終的に、法律になる。


    【④政策は、だれが作るべきか~第5、8章から】
    「政策を実現するのは、政党であり議員個人ではない-それが最終的に多数決できまる。」
    「政党が財務的な裏づけや国内外関係各所との調整を行い、具体的な政策に落とし込む」(橋本前議員)


    過去の例では、役所が政策を作っていたが、本来は、政党が作るべきである。政策は、最終的には国会の多数決で決定され法律となって実現する。だから、政策を実現するのは政党である。そもそも国会は、立法府なのだから、法律を作ることが仕事という基本的なことを、僕は忘れていた。



    【⑤政策は、いつ決めるのか】
    「採るべき政策は、状況によってかわるものです」
    「個別の政治家にとっての政策は、『現時点ではこうしたいと考えている』という程度で構わないと思う」(橋本前議員)


    政策は、状況の変化にあわせ方針を転換する必要があるというのは、僕の感覚としても理解できる。数十年前に作られた法律が、まったく現在の状況にあっていなくて不便なことはよくある事だ。一方で、政策を具体的に示さない政治家の方便とも聞こえなくもない。いつ政策をきめるのか。


    「政策以前に、「日本は今後、こうあるべきだ」というビジョンを描く。それがブレなければ、有権者の声を集約し、代弁するメディアとしての信頼性は担保されるというのが、橋本前議員の主張だ」

    政策の前提となる根本思想が、ここで登場した。政策の前にビジョンがあり、そのビジョンを基に、状況に合わせた政策が決定されるということだ。
    この前提では、ビジョンは、簡単には変更できない、ブレないものだと考えられる。




    【政策の意味~①から⑤を踏まえて】
    ・政策は、方針である。最終的には法律となる。
    ・政策は、ビジョンを基に作られる。
    ・状況によって最善の政策は、変化する。
    ・政策は、政党が作る。


    【デモの是非】
    筆者は、デモについて肯定的な見解かと思われるが、僕は否定的だ。しかし、なぜ筆者は肯定的なのか?

    「筆者はデモが盛んなドイツ・ベルリンを訪れた。たまたまマンション建設に反対するデモに遭遇したが、第一印象はなんて「楽しそうなんだ」というものだった。」

    この体験が筆者のデモに対する肯定的な態度の原点ではないかと思う。これは、僕がまったく知らない世界の出来事だ。恐らく、多くの日本人のイメージもデモが楽しいものだと思ってない。しかし、筆者は、楽しいデモを実際に見ているから、肯定的に捉えることが出来るのだろう。


    【メディア=媒介者(仲介者)としての政治家】
    上のデモの事例から、政治家はメディアたれ!ということを検討したい。民意をくみあげることが、政治家の役割であるが、民意を聞くだけが本当に政治家の仕事だろうか。

    上のデモの事例を考えれば、デモの楽しさをしらない僕は、恐らく一生デモに参加することはないだろう。僕の民意を聞いているだけでは、変化はない。しかし、”楽しいデモ”を提案された場合は、違った展開になるかもしれない。

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著者プロフィール

1973年、東京都生まれ。ジャーナリスト、メディア・アクティビスト、「ポリタス」編集長/「ポリタスTV」キャスター。著書に『情報戦争を生き抜く』『ウェブで政治を動かす! 』(ともに朝日新聞出版)など。

「2023年 『宗教右派とフェミニズム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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