- Amazon.co.jp ・電子書籍 (328ページ)
感想・レビュー・書評
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日本の裁判史の中で節目となった案件を12件紹介している本。
法律の専門家ではなく、ミステリー小説家の方が書いているので、事件の経緯の部分は小説を読んでいるかのよう。それでいて、その案件がなぜ当時注目を集めたのか、その後の裁判や司法をどのように変えたのかがしっかり説明されていて勉強にもなった。
最後の被害者権利のために奮闘した岡村弁護士の話が印象的だった。自分は恩恵を預かれないが、これから犯罪被害者とその家族になってしまう人たちのために奮闘する姿には胸を打たれた。 -
何かで紹介されていたか自分で見つけたのか忘れたが、電子書籍を購入し、コツコツ読んでいた。
明治から平成までの100年間の、時代を変えた裁判の歴史である。
ある判決が出るとそれが基準になり、後々の判決はそれを踏襲することが多い。いわゆる判例である。
しかし、その一つの判決も裁判官の意見が割れ、論争になることがある。
また、裁判官の判断も、単に法律を当てはめるだけではない。その時代に合わせて、また個別的な事例に合わせて判断が異なる。
ゆえに裁判官の間で、意見が割れるのである。
最も印象に残ったのは、尊属殺の件である。
明治の封建的な社会の名残で、尊属殺いわゆる親殺しには重い刑が課されていた。
しかし、時代は人間一人ひとりを見る価値観に変わっていた。
その中で、尊属殺の法律は違憲であるという判決が出る。裁判所は、ある法律が憲法に違反しているという判決も出すのだ。
その後、尊属殺の法律は変わっていく。
一つの判決が時代を変えることがある。
また、判決には総合的な思考力、判断力が求められる。
裁判官はよほど賢くないと勤まらない。 -
とてもよかった。日本の裁判の歴史に残る、あるいは歴史を変えた12の事件。ニコライ事件から帝銀事件、永山事件などなど、夏樹静子さんの文章も読みやすい。八海事件などは知らなかったけど、二転三転どころか本当にややこしい。驚いたのは、戦時中に、翼賛選挙に無効の判決を出した裁判官がいたこと。「1票の格差は違憲だが選挙は有効」とか言ってる昨今の裁判官に聞かせたいね。こういう本を教科書にして高校生とかに現代社会の授業をやってみたいとも思う。