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本 ・電子書籍 (141ページ)
感想・レビュー・書評
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高校生時代の愛読書。
一時、書く文章がみんな薫くん文体になって「ちょっと相当猛烈に」困った。
都立高校の生徒として、知的「脅かしっこ」をして、知識を高めていく日比谷高校の生徒、「薫くん」に大いに刺激を受けたものだ。
その刺激は、実は知的スノビズム以外のなにものでもなく、今思うと「ギャッ!」と叫びたくなるところだが、それが現在クイズに秀でた<東大王>が持て囃されるように、格好良いと思われた時代が確かにあったのだ。
「知らないことは恥」という共同幻想のあった時代。
痩せ我慢を美徳とし、清く正しく美しく生きようとして悩む高校生はもう絶滅危惧種化してしまったのかもしれない。
ほとんど滅んでしまったのは、旧制高校からの伝統だ。
戦後生まれの薫くんにそこはかとなく、旧制高校生原口統三の香りが残り香のように残っている。
薫くんが話題にする、カフカ、デュマ、シェイクスピアをすぐさま読み、大学ではシェイクスピアについて学んだ。
つまり、「薫くんシリーズ」を、知的好奇心を掻き立ててくれるものとして読んだということだ。
全共闘運動の1969年の青春を描いた小説には、村上春樹の「ノルウェイの森」がある。
これは運動の当事者世代による、死んでいった者たちへの鎮魂歌だが、薫くんは上の世代が運動の渦中にあるのを、羨望の目を持って眺めている、ちょっと遅れた世代に当たる。
その意味で薫くんは、遅れてきた我々と視線と心情を共有しているので、より一層、共感を呼ぶ。
村上春樹は、実際は、庄司薫より12歳若い。
庄司薫は、年齢を14歳偽り、村上春樹より2歳若い高校生として、「薫くん」に、学生運動時代を体験させているのだ。
薫くんシリーズは間違いなく「ノルウェイの森」の骨格を形作っている。
薫くんの兄貴世代は全共闘世代だ。
会社に入って、団塊世代、全共闘世代の人たちと知り合う機会を持ったが、感想は薫くんの口癖—「ヤレヤレ」だった。
会社の読者会には「薫くん」四部作のファンが何人もいた。
どれが好きか、という問いに対して、一番人気は「白鳥の歌なんて聞こえない」。
二番は「赤頭巾ちゃん」。
私としては、「僕の大好きな青髭」一押しだが、それぞれ好みから、読書の好みを知ることが出来て面白かった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ずっと読みたいと思っていて、やっと手に取る。
僕が生まれる数年前に直木賞受賞をした作品。
1960年代、学生紛争まっただ中の青春を描く。
同じ時代を描いた三田誠広「僕って何」や、
柴田翔「されどわれらが日々」を愛する僕としては、
センチメンタルな気分を期待する。
結果として読後感は上記2作とちょっと違う。
時代が醸し出す空虚な雰囲気を持ちながら、
もっと威勢がいい。
やってやるぞという気概に満ちている。
大きな世界に押しつぶされ、
世の中の情勢に振り回されながらも、
マイペースに自分の道を切り拓き、
自分の足で歩いていく。
恋愛小説ともいえる。
惚れた腫れた、愛だ恋だと大声で叫ぶのでも、
ドラマチックな大事件が起きるのでもない。
それでいて確かな愛情を感じさせる。
ああ彼は相手を好きだなあと思わせる。
いいな、こんな恋をしてみたい。
こんな人と出会いたいな。
そんな恋心を乱す翻弄する年上の女医が、
とてもリアルで魅力的でもある。
物語に鮮やかな変化をもたらし、
カラフルで立体的なものにしている。
四部作で、赤・白・黒・青とめぐるようだ。 -
エンペドクレスって、世界で一番最初に、純粋に形而上的な悩みから自殺したんですって
こんな話する高校生って。
昔の日比谷高校はどんな学生がいたんだ -
オールタイムベスト。
エリートのナイーブな語り大好き。
なぜ私が高校生のときに絶版状態だったのか。
若い頃読みたかった。 -
学生運動で東大受験がなくなったときの日比谷高校3年生かおる君の色々煩悶?青春?話。この時代の日比谷って超絶進学校だったのね、今でも十二分に進学校だけど、さらに凄かったみたいで。
庄司薫の作品





