妖精配給会社(新潮文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 星新一の小説はいつ読んでも新しい。この短編集の初版は昭和39年発行ときいて驚いた。ここで語られている数々の鋭い文明批評は、令和の現代にも通じるものばかりだ。
    新潮文庫版の巻末についている、福田淳による解説もよかった。本編は面白くても、解説はかったるいことが多いが、この「妖精配給会社」に関しては解説も含めて一つの作品になっている。そのあたりも、本書が長きにわたって多くの読者に愛されているゆえんなのだろう。

  • 相変わらずの星新一のショートショート、といえばそれまでですが、敢えて感想を。執筆の時代的にはアポロ宇宙計画のあたりなので世間的にも宇宙への関心が高く、SF作家の腕の見せ所だったのかなぁと。
    この作品に限らず星作品は読んでて最初はウィットとユーモアに富んだ筋書きを純粋に楽しめる。けれど段々、やっぱこの時代は未来志向的というか、明るいなと感じてなんだか逆に虚しい気分になる。
    神様に何でも願いを叶えてやるって言われて不老不死を望む人が今この日本に何人いるか?生きていれさえすればなんとかなるという考え方をこの30年ですっかり失ってしまった。欲深い人類に対する宇宙からの警告という視点の話が多いが、毎日飲み食いさえできれば御の字というこの時代には理解されなくなってしまい、星作品が人々の日常を潤わすエンタメではなく、この時代の歴史的資料としての日本古代文学的な扱いをされるのも遠くないと感じる。

  • SF作家の第一人者である星新一による表題作『妖精配給会社』を含む35編のショートショート集。宇宙、廃工場、マンションの一室と舞台は転々とするが、それぞれの短編に寓意があり大人が読んでも啓発されるだろう。
    表題作では、褒め上手な妖精が人々に配給され弛緩する社会を聾の老社員が1人達観しながら家路に就く。人々の快楽を刺激し続け思考停止させる資本主義への批判の寓意と捉えるのは強ち遠くはないだろう。

  • 表題作は、現代的に言えば「ほめて育てる社会・教育」のあり方批判のようにも受け取れる。他の作品も、バラエティーに富んでいて、楽しめる。いくつか結末が分からないものがある。同時にロアルド・ダールの作品も読んでいたが、星氏とダール氏の最後にオチでしめる落語のような展開は両者に似通っているように感じた。

  • 他の星から流れ着いた《妖精》は従順で遠慮深く、なぐさめ上手でほめ上手、ペットとしては最適だった。半官半民の配給会社もでき、たちまち普及した。しかし、会社がその使命を終え、社史編集の仕事を残すだけとなった時、過去の記録を調べていた老社員の頭を一つの疑念がよぎった……諷刺と戦慄の表題作など、ショート・ショートの傑作35編を収録

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著者プロフィール

1926 - 1997。SF作家。生涯にわたり膨大な量の質の高い掌編小説を書き続けたことから「ショートショートの神様」とも称された。日本SFの草創期から執筆活動を行っており、日本SF作家クラブの初代会長を務めた。1968年に『妄想銀行』で日本推理作家協会賞を受賞。また、1998年には日本SF大賞特別賞を受賞している。

「2023年 『不思議の国の猫たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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