- 本 ・雑誌 (92ページ)
- / ISBN・EAN: 4910075110336
感想・レビュー・書評
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これだけ、一冊の雑誌をこと細かく読んだのは、生まれて初めてかもしれない(そもそも毎月コンスタントに発売する雑誌を私は買わないので)。
それくらい内容は、多種多様に富んでいながらも共通点があって、考えさせられる事が多く、とても充実した読書になりました。111108さん、ありがとうございます(^^)
そんなわけで、「母の友」、初めて読みました。
こんな素晴らしい雑誌があったのですね。
まずは何と言っても、表紙に書かれている
『子どもは大事、わたしも大事』
これ、いい言葉だなあと思って、もしかしたら、今の世の中でこうした思いを抱いてはいけないのではなんて、感じている方もいらっしゃるのかもと思うと、こうした表記ひとつだけでも、とても大きな勇気を貰えますよね。
早速、見返しを見ると、あっ、工藤直子さんだ。
なんでも、十五年間に渡って、「こどものひろば」の選者を担当されていたとの事で、途中にある、「これからも たのしみ たのしみ!」において、亀村五郎さんから選者をバトンタッチする話を聞いたときの、ピョンと飛び上がったエピソード、彼女らしい天真爛漫さだなと感じました。
次に印象的だったのは、植物観察家の鈴木純さんのコーナーで、あれっ? これどこかで見たことあるなと思ったら・・以前読んだ『まちの植物のせかい』と同じ方だと気付いて、しかも、写真と台詞で紹介する構成も一緒だし、これは何か得した気分♪それから、「オオイヌノフグリ」。これは庭で見たことあると思い、早速見つけたのはいいが、私の視力では雌しべまで細かく見ることが出来ず、ルーペ買わないといけないな。
そして特集は、『守れているかな 子どもの権利』で、これが私にはとても考えさせられる事が多く、私自身も救われた気持ちになれた事は、これからを生きていく上で、とても大きな励みになったと実感しております。
弁護士の間宮静香さんによると、まずは概念を理解することが大事ということで、それは
『子どもは、親とは独立した別の人格である』
ということであり、そこには、親は子どもの将来ばかり心配しがちだが、今を生きる権利が子どもにはあることや(子どもの力を信じることが大事)、自分では気付かずに親の欲望を叶えようと頑張っていて、そのことに親も気付いていない、いびつな状態等が(『コントロール欲求』といって、子どもに良かれと思って先回りするのはほとんど自分の為だそうです)、該当します。
しかし、そもそも私は、「子どもの権利条約」なるものも知らなくて(日本は1994年に批准)、その中でも特に重要なのが、『子どもの意見表明権の保障』と、『子どもの最善の利益』であり、前者は、親や教師に意見を言っても良いということで、後者は、大人は子どもにとって最も良いことを考えるということで、それらには、親は自分に権力があるということを自覚することが大切であるとの事だが、これは、もっと広く知られるべき大切なことだと感じまして、私の学生時代には思いつきもしないというか、そもそも、あり得ないことだと勝手に解釈していたのがね・・ま、今となってはいいんだけどさ(そもそもまだ批准してなかった)。それでも、これからの人達には是非知っておいて欲しいし、子どもらしく健やかに生きていけるように願いたい。
また、子どもの権利を知っていると、育児が楽になるということも書かれており、これは何をすべきか指針が明確だからだと思われます。
それから、もう一つ重要な事は、
『家庭や学校以外に、もう一つ子どもに居場所を作ること』
だそうで、これは、親からも学校からも離れて、その子がありのままでいられるような場所が必要で、学校の問題は、ときに親に大きな動揺を与えてしまうこともあるからだそうです。なるほど、そう言われてみると、確かに私も高校早退した時、そういう場所が欲しいと思ったこともあったな(実際に公園とか行ってました)。
更に、私の過去の体験にも該当したことの一つに、『子どもにレッテル貼りをすること』があり、子どもは自分で変わっていく力があるのに、そうすると
、そこから身動きが取れなくなってしまうそうで、その結果、『親の不安が子どもの未来の可能性を奪ってしまう』ことにもなりかねず、これは、親が子どもの変化や成長を待てないことが原因だそうです。
それともう一つ、気になった事は、親が不満を言わなければ子どもは気にしていないことが多いのに、親の言葉を聞いて、子どもは不安になるということには、私も心当たりがあり、何か大人の中での決めつけた事と、私の気持ちが一致していない感じというか、そもそも私の事、信用してないんでしょ? と感じることは多かったですね。まあ、とはいっても、全ての事が該当するとは思いませんし、そこには、親の言葉の選択や伝え方と子ども自身の性格もあるとは思います。
そして、そんな中から様々な形で発生する悩みや、問題自体は、必ずしも結論を出すことにこだわる必要はなく、一緒に考えた手応え自体が子どもの財産になるそうで、これは私も嬉しいだろうなと思いました。
ここからは、その後のコーナーで印象的だったことを書いていきます。
ツルリンゴスターさんの「うまくやりたいとは思いつつ」の、『子どもの話は夫婦で共有していいか、本人に確認してからする』には、子どもの事、とても親身に思ってくれていて、良いと思った!
「山脇百合子さんと母の友」は、60年にわたり「母の友」と関わってきた、彼女の『自然な謙虚さ』や、姉の中川李枝子さんの、『百合子の絵は人柄そのままかもしれない』が印象的。
沖永良部島の昔話、「山の神とこども」は、試されているような感じがどうもと思いつつ、どんな状況においても、自分を持ち続けることの大切さ(プラス人の好さ)を教えてくれて、これは読み聞かせした時の子どもの反応が楽しそうな作品なので、お子さんがいらっしゃる方は是非。
まるやまあやこさんの「絵本作家の自由帳」、素敵!
星の光とタンポポの種が同じくらいの神々しさに思われるし、あるいは、星の光を取り入れているから、キリンが心地良く寝られるような綿毛の布団になってるのかなとも感じさせる、これが自由帳なのだから、やはりプロは凄い。
「絵本のひみつ」は、表紙の「きんぎょが にげた」の五味太郎さん。初めて、こどものとも単行本シリーズに於いて、背表紙を白一色ではなく、緑色にしたそうで、その固定観念から軽く逸脱できる発想力と子どもを思う気持ちは、絵本作家さんなのだなと。
岡田千晶さんの絵も嬉しかった、「園の子どもたち」の勝浦いづみさん。一歳児クラスの子どもたちは、言葉無き世界から、言葉を通して意思疎通する世界へと歩みを進めていくって、もう一歳児からなんだって、私には改めて新鮮な情報だった。
「かずをはぐくむ」の森田真生さん。夫の出張のように、妻にも定期的に『旅』に出かけてもらうことで、互いに支え合う喜びを分かち合えることが、ともに生きていく上での支えだったことに加えて、自分が誰かの役に立てていると感じることの喜びを知ったことには、旦那さんも辛かったんだなと。でも、こうしたコミュニケーションから始まる新しい発想は大事にしたい。
「Books」で紹介されていた「ふたりたち」の、『自分はひとりだなあ、という人が、さみしくならないような本を作りたかった』を読み、思わず涙腺が緩くなりそうに。読もう。
「この一年、この言葉」より
東直子さんのエッセイ、「一緒に生きる 親子の風景」より。
『子育ては実は本能ではなく、理性と知性でコントロールするものです』に心動かされた。
本能でできるもんだと思い込むとうまくいかない、確かに説得力のあるお言葉だと感じ、これに救われた子育て中の方も多いのでは。
東畑開人さんの「幼い子と共に生きるヒント」より。
『誰かが「それは苦しかったね」と言ってくれるから、ああ、自分は苦しい目にあっていたんだと感じられる。「自己肯定感」というのも本来はそういうものです』には、目から鱗の思いだし、おそらく、とても救われた気持ちになる。
ryuchellさんの「気になるみんなの24時間」より。
『お互いの肩書きとか性別とかを見て判断するのではなく、目の前のその人を見ることが大切だなって思います。でも、例えそれがうまくいかなくても、その人のせいじゃない。それって、社会の植え付けだと思うんです』。こういうこと言ってくれる人が、もっと増えてくれればいいのになって思う。
本田秀夫さんの「幼い子と共に生きるヒント」より。
『私は発達障害とは、病気というよりも、単に少数派である、ということだと思っています。障害が生まれるのは、多数派に合わせようと無理をしたときなんですよ。もしその子がその子の個性のままで生きていけるのであれば、それは発達“障害”とは言えないのではないかと私は思っています』
こうした気持ちを私も持ち続けていたいと思う。
最後に「編集だより」にて。
「母の友」と「こどものとも」の創刊編集長であられた、松居直さんは、戦争中に三人の兄を亡くし、学校では『男の子はお国のために死ぬものだ』とずっと教えられていたが、戦争は終わって、生きることになったけれど、その方法を習ったことがないから困ってしまい、『生きるってどういうこと?』が松居さんの生涯のテーマとなり、その思いは、創刊したそれぞれの本にも投影していたことを知り、それらを通して、『生きるということをみなさんとともに考えたい』という気持ちがあったから、こうして2022年で創刊70周年を迎えた「母の友」も、これだけ長く愛読され続けてきたんだなと実感し、更に、
『生きることは平和と関係がある。戦争とは関係がありません』
のお言葉は、決して忘れることなく、一生考え続けるべきテーマだと感じ、これからも「母の友」を読み続けようと、心に誓いました。 -
図書館で借りては読めずに再貸出を繰り返していたけど、通勤のお供にちょうどいいサイズ。次の返却期限までに読んで返そう!と軽い気持ちで満員電車で読み始めたら、あっという間にふせん貼りたいところだらけになって困った!!
雑誌は飛ばし読みすることも多い中で、「母の友」は私にとって読み飛ばせるページが毎号全然ない。
コウケンテツの「家事の棲み分け」という内容のエッセイがフワッとしていてステキだった(私の夫もこんな感じにマイルドだったら…と思わずにはいられない)
なにより、特集の「子どもの権利」はとても勉強になった。弁護士による子どもの権利の解説やポイントも参考になったし、児相職員の「子どもの前で夫婦喧嘩もDV」はわかっていても私もやりがちでホントに反省。
帰りの電車で座れて、スマホでひたすらメモしたけど、子どもの権利のところは常におさらいが必要だし、子どもたちが小学生になったら今よりもっと気をつけたいところで、バックナンバー買いたいくらい。
買うことを意識してはじめて気づいたけど、この内容で580円とかコスパよすぎで(値上がり前だから余計にそう感じて)「なんでこれをもっと早く読まなかったのよ…」とめちゃくちゃ後悔している…。
そして編集後記を読んで、福音館で働いている方々は好きなことを仕事にできてるんだろうな…楽しそうでいいな…と思っている。 -
特集は「守れているかな 子どもの権利」
コドモエのほうでも付録絵本がこのテーマだったし、いよいよ一般(といってもこういう雑誌を手に取るのは意識高めで気持ちに余裕がある人だろうからほんとうに届いてほしいところまではまだ遠いのだろうけど)に広まってきたなと感じる。
わがやはもう末っ子も高校生なので、子どもと自分は別の人間ということも、こどもの意見の尊重も「そりゃそうだよね」と思えるけれど、口がまわらない年頃の子とも同じ感覚で接するというのは簡単ではなく、はじめは大人の「よかれ」頼みになってしまうものだろうとは思う。そこから18年かけてどのように子どもを対等の存在に引き上げていくかはそれこそ十人十色だろうけど、大人には権力があって支配しがちだという自覚が大事だというのはその通りだと思った。
山脇百合子さんの追悼で中川李枝子さんの談話、中川さんご自身もちょっと小さくなられたような・・・保育の世界が大変なとき、いつまでもお元気で見守り励ましてくださることを祈るばかり。
連載、森田真生さんの「かずをはぐくむ」支え合う喜びの話は身につまされながら読んだ。
関根美有さんの「答えがほしいわけじゃないの」は55回で最終回、他にもいくつかの連載が終了でさみしくなる。
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10年経った雑誌IDの使い回しにつき、登録済みのものをいったん削除して再登録した。
前の登録情報は以下の通り。
「母の友」(2013年3月号)
2013年2月2日登録 2月8日読了
連載「今月の園景色(24回)」「季節の野菜(36回)」「宙のうた」「ないものがある世界(22回)」「草花はともだち!(22回)」「ことも医者の健康メモ(110回)」など今号をもって終了するもの多数。 -
子育てにおいて、根底にあって、むしろこれだけで良いんじゃないかと思えるほど大切なことが『子どもの権利』だと感じた。
すごーく濃いレビュー楽しく読ませてもらいました(^^)この3月号だけで私の3年分くらい、いやそれ以上に読み込んでレビ...
すごーく濃いレビュー楽しく読ませてもらいました(^^)この3月号だけで私の3年分くらい、いやそれ以上に読み込んでレビュー書いてて素晴らしいです!絵本界隈の知り合い?いっぱい登場して嬉しいですよね♪
今回は特集が特にささったのですね。私もいつも何かしらの養分みたいなのを得てます。人を煽ったり説教垂れたりしないフラットな感じと、新たな視点を教えてくれるから『母の友』好きです。
コメントありがとうございます(^^)
私の中で、雑誌は一部の内容には共感できても、それ以外のほとんどの内容...
コメントありがとうございます(^^)
私の中で、雑誌は一部の内容には共感できても、それ以外のほとんどの内容は合わずに読み飛ばすイメージだったので、こんなに隅から隅まで読めて、しかも何かしらの共感や前向きな気持ちを得られて、しかも、絵本好きにも魅力的な「母の友」って、凄いと思いました(^o^)
本当は4月号を読むつもりだったのですが、貸し出し中で、それならば、1つ前にしようと借りてみたら、ちょうど2022年度の最後の号で、しかも創刊70周年というメモリアルイヤーに立ち会えて、これは運命的なものを感じましたし(総集編的な「この一年、この言葉」はお得感満載でした)、しかも、母の友も松居直さんが創刊編集長だったと知り、尚更、嬉しくなりました。
それから、『人を煽ったり説教垂れたりしないフラットな感じ』、大事ですよね。
それは本書にある、たくさんのコーナーの執筆者を選ぶ、編集者の視点の素晴らしさもあるのでしょうし、マニュアル的にこうだと断言するのではなくて、こう思うのです的な書き方も、読者と一緒に考えていきたい思いが含まれているようで、まさに「生きるってどういうこと?」ですよね。
4月号から、早速表紙のデザインが変わるようで、私的には知ったばかりだから、ちょっと違和感もあったのですが、その内、馴染んでいきますよね♪
111108さんには、本当に感謝しかありません。雑誌にも色々あることを教えて下さり、ありがとうございます(*^_^*)
そうでした、昨年度はメモリアルイヤーで福音館書店創業のあゆみなどのページもありましたね。ちょうど良いタイミングでたださんに伝えられ...
そうでした、昨年度はメモリアルイヤーで福音館書店創業のあゆみなどのページもありましたね。ちょうど良いタイミングでたださんに伝えられてよかったです♪