この世界の片隅に コミック 全3巻完結セット (アクションコミックス)

著者 :
  • 双葉社
4.34
  • (27)
  • (8)
  • (1)
  • (3)
  • (2)
本棚登録 : 130
感想 : 24
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・マンガ

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 映画「この世界の片隅に」「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」の原作。
    第二次世界大戦に向けて変化していく生活。銃後で過ごす戦争の時代。
    目まぐるしく変わる時代を生きた人々の姿は、今の世の中にも通じるものを、感じさせてくれます。
    特に人と人との繋がりの愛しさを強く思わされました。
    やるせなくて、悲しくて、でも暖かくて、明るい物語。

    映画と合わせて読みたい作品です。

  • こうの史代のヒット作。

    戦時が舞台ではあるが、庶民の暮らしを丁寧に描き、戦争漫画としては異色の作品と言ってよいだろう。
    浦野すずは広島の子。いささかおっとりとした、絵を描くのが大好きな女の子である。
    怖い鬼ィちゃん(兄)と仲良しの妹と、家業の海苔作りを手伝いつつ暮らしている。
    ある時、すずは自身も気づかぬうちに見初められ、望まれて嫁に行く。相手の家は軍港・呉にあった。
    海軍で書記として働く夫の周作、工廠に務める義父、足の悪い義母の北條家。
    その一員となったすずは、慣れぬ土地で、戦時の不自由な生活を工夫しながら切り盛りしていく。やがて夫に死に別れて婚家を出てきた、やや性格のきつい義姉と、おとなしくかわいらしいその娘も加わる。
    代用食がまずかったり、貴重な砂糖を無駄にしてしまったりと、時に失敗がありつつも、口数は少ないが優しい夫の支えもあり、すずの呉での暮らしは順調に進むかにも見えたのだが。

    物語はすずの視点で綴られる。おっとりしたすずは時に、夢と現実の境目を漂うようでもあり、ファンタジックな挿話もある。漫画という手法を用いた表現の豊かなバリエーションにも驚かされる。
    戦時の暮らしは相当に史料の裏付けがあるようで、楠正成ゆかりの楠公飯、小国民カルタ、隣組、千人針といったディテールも読ませる。

    戦時の不自由はありつつも、何気ない日常を送る北條家だが、すずと周作のそれぞれの過去を巡り、ほんわかした夫婦の間にも波風が立つ。
    だが、さらに大きな悲劇がすずを襲う。軍港である呉は、数多くの空襲を受けた街でもあった。すずの妹は痛手を負った姉を見舞い、いっそ広島へ帰ってくるように勧める。その広島もまた大きな惨禍に見舞われる運命にあることをまだ誰も知らなかった。

    それぞれの想い、それぞれの悲劇を抱えながら、物語は呉の北條家で幕を閉じる。
    そこは、世界の片隅に、すずが見つけた「居場所」であったから。

    世は移り変わり、人は来たり、人は去る。
    すずの「居場所」も、私の「居場所」も、あなたの「居場所」も、時を経て、姿を変え、やがては消え去るときも来るだろう。
    それでも世界の片隅に、確かにそれは存在したのだ。

    戦争をこんな風にも描きうるという驚き。
    多くの人を捉えるに足る強さが、確かにこの作品の中にはある。

  • スクリーントーンなどは一切用いず、素描風に柔らかくまとめられた画調の中に戦時期の生活の情報などが挟み込まれていく。戦時を独特なタッチで語る、こういう描き方って、なかったような気がする。作家性がとてもよく出ているところだし、対象に対する誠実さも伝わってきた。
    でも、「はだしのゲン」が暴力性やグロい表現がたくさん出てくるから子供にみせるな、みたいな声が出る一方で、「この世界の片隅に」が戦時を知るマンガとして、アニメ化されたりドラマ化されているのをみると、それもなんだか違うような気がする。こうののマンガは口当たりが良すぎるのだ。作品の良し悪しというよりは、受け止める側の問題なんだけれど、それも込みで星三つ。

  • 映画がとてもよかったので読んでみました。
    何度も泣きそうになりました。
    辛くて悲しいけれど希望も持てる素晴らしい作品。

  • 映画を観たので本の方にもログ。

    こうの史代さんの原作は以前読んだ時から本当に素晴らしいと感じていた。なので、アニメになったらどう動かすのかなぁ、と楽しみにしていた。
    映画を観て、片渕須直監督はさすがだと感じた。『マイマイ新子』や『Blacklagoon』を観て、外さないだろうなとは思っていたけど、自分の予想なんてどうでも良いくらいに良かった。どちらかというと皮肉屋な自分が映画館で純粋にボロボロ涙を流すとは思わなかった。
    すずさんの暮らしの中には、多くの映画で語られる芝居じみた、戦争、広島、原爆が無い。戦争は大きな要素を占めた出来事ではあるけれど、けして全てではないのだ。そういう淡々とした悲しみ喜びが溢れる表現がとても愛おしい。

    映画の感想になってしまうが、いわゆるマンガ原作のアニメ化の悪影響がなく、相乗効果を出している幸せな作品だと感じる。能年玲奈こと、のんさんの演技も悪目立ちせず、なくてはならないピースとしてすずさんを浮き立たせている。
    戦争や広島を伝えていく新たな想像力を与え、長く親しまれていく作品の誕生にただ感謝したい。

  • 映画を見てから購入。
    読んでみると、映画とは少し違う箇所があった。
    優しいタッチが気に入ったので愛読書。

  • 映画を見て購入。絵の優しいタッチ、情景や心情が伝わってくる。映画とはまた違う、漫画でしか伝わらない部分もあり興味深く読むことができた。自分がまだ生まれていない時代に想いを馳せることができる、素晴らしい本だと思う。

  • 詳細は、こちらをご覧ください
    あとりえ「パ・そ・ぼ」の本棚とノート
     → http://pasobo2010.blog.fc2.com/blog-entry-1117.html
    実際には厳しい日常生活が のほほんとしたタッチで描かれています。
     面白い! 全巻読みました。しなやかに生きていく人々。
    そんな状況になったときに、私はどんなふうになってしまうのか?

  • 映画公開時に観に行って、とっても良かった…!と噛みしめた作品でしたが、割り引くクーポンをゲットしたのを機にようやく購入。

    リンちゃんとの関係がほぼカットされている、と見ていたけれど、まさかこんなに綺麗にカットされているとは驚き。
    そしてその関係こそ歯がゆさくて、もう少し突っ込んだところまで見てみたいなぁと思います。

    映画でもそうだったけど、原作もやっぱり子供が亡くなって、絵を描くのが好きなすずさんの利き手がなくなるというのは辛くて泣きます…

  • 言わずと知れた名作。ドラマや映画よりもやはり原作だと思う。ジワジワきます。随所に見られるコラム的なページにかかれた戦時下の細かい生活の記録と挿し絵がとても勉強になる。なにより笑えるし、大袈裟な泣かせもない。ただただ日常と、夢と、記憶と、希望が絶妙なバランスで織り混ざった良書。

全24件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

こうの史代:1995年デビュー。広島市生まれ。代表作は「さんさん録」や、文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞作「夕凪の街 桜の国」、アニメーション映画のヒットも記憶に新しい「この世界の片隅に」など。

「2022年 『ぴっぴら帳【新装版】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

こうの史代の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×