危険なメソッド [DVD]

監督 : デヴィッド・クローネンバーグ 
出演 : キーラ・ナイトレイ  ヴィゴ・モーテンセン  マイケル・ファスベンダー  ヴァンサン・カッセル  サラ・ガドン 
  • TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)
3.06
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感想 : 34
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4988101170524

感想・レビュー・書評

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  • A DANGEROUS METHOD
    2011年 イギリス+ドイツ+カナダ+スイス+アメリカ 99分
    監督:デヴィッド・クローネンバーグ
    原作:クリストファー・ハンプトン『The Talking Cure』
    出演:キーラ・ナイトレイ/ヴィゴ・モーテンセン/マイケル・ファスベンダー/ヴァンサン・カッセル/サラ・ガドン

    1904年、スイスのチューリッヒにある精神病院に勤める若きドイツ人精神科医ユング(マイケル・ファスベンダー)は、裕福なユダヤ系ロシア人の娘ザビーナ(キーラ・ナイトレイ)という患者を担当することになる。当時すでに高名な精神分析医であったフロイト(ヴィゴ・モーテンセン)が提唱していた談話療法を実践したユングは、それによりザビーナの幼少時に遡る性的トラウマを突き止め、彼女の治療に成功するが、転移による恋愛関係に陥ってしまい…。

    ご存知精神分析学の二代巨頭フロイトとユング、そしてやはり実在の、ユングの患者から愛人となりのち自身も精神分析の分野で活躍した女性ザビーナ・シュピールラインとの実話ベースの物語。フロイトの本は何冊か読んだけれど、それ以外のことはあまり知らなかったので、二人の確執、そしてザビーナという女性のことはとても興味深く見れた。

    ザビーナを演じるキーラ・ナイトレイの狂気の演技が凄い。序盤、明らかに病んでる人の発狂っぷりは、これホントに治せるの?と怖くなるほど。やがて彼女は幼い頃、父親にお尻を打って折檻されたときに興奮して失禁、以来マゾヒストである自分の性癖に葛藤していたことがわかる。ユングは最初のうちこそ患者として彼女に接していたが、精神分析用語でいうところの「転移」(患者が医師に対する信頼を恋愛感情に変化させてしまう)が起こったのか、ザビーナはユングを誘惑。結局ユングは妻を裏切り、ザビーナのお尻を打って大興奮(…)。

    このユングの貞淑な妻エマ(サラ・ガドン)もなかなかの存在感。いつも真っ白いドレスを着ていて上品で美しく、しかも裕福な家の出でそのおかげでユングは贅沢な暮らしをしていられるのだけど、妻は夫の愛人の存在を察し、いろいろと手をまわしてくる。でも意地悪な感じじゃなくて、ヤリ手だなあという印象。したたかで素敵だ。

    一方でフロイトとユングの関係性は、厳格な父(フロイト)と、期待に応えたいが反発もしたい息子(ユング)みたいな感じ。人種について言及するセリフが多々出てくるが、フロイトはユダヤ人で、当時のウィーンの精神分析学会はユダヤ人が多かったらしい。派閥などの問題もあり、生粋のアーリア人であるユングが自分の傘下に入ることを当初フロイトは歓迎していたようだ。しかしユングは次第に、神秘学等に系統していき、フロイトとは意見を違えるようになってくる。そこに患者だったザビーナを愛人にした醜聞があり、二人は完全に袂を分かつことに。

    二人が学会でアメリカに渡るときに、裕福なユングは妻の手配で自分だけ一等船室に乗り込むという描写があり、子沢山で経済的に苦しかったフロイトは憮然とした顔をする。こういう場面から察するに、ユングには人種的、経済的有利さから、フロイトに対して無神経なところも多々あったのだろうと。反面、私自身もフロイトを読んで感じた「なんでも性的なことに結び付けすぎ」という違和感は、当時から多くの人が抱いていたようで、ユングやザビーナもそこは批判的だったりして。

    もう一人、印象的な人物として、オットー・グロス(ヴァンサン・カッセル)というこれまた実在の精神科医が登場する。患者を愛人にしまくる快楽主義者の彼を、父親は精神病院へ送り込もうとし、フロイトは彼をユングに紹介する。ユングはこのグロスを治療するどころか、彼の破天荒な哲学にむしろ影響されてしまい、ザビーナを愛人にすることに踏み切ってしまう。

    このグロスという人物を見ていると、「狂気」というか「精神病」って何を指すのかなあと考えこんでしまう。彼に関してはあくまで生き方の問題であり、分析して治せるような病ではないわけで。ザビーナもマゾヒストなこと自体は病気ではなく、それを肯定できるか、抑圧しすぎて破綻をきたすかが発狂の分かれ目にすぎない。ユング自身も、のちに神経衰弱になってしまう。

    フロイトを演じたヴィゴと、ユングを演じたマイケル・ファスベンダーは見た目も実在の二人に寄せていて、とくにヴィゴはなかなかの貫録。実在の人物ゆえエンドロールで彼らの行く末がクレジットされるが、その後のナチスの台頭で、ユダヤ人であるザビーナは二人の娘ともども虐殺されたらしい。フロイトはナチスからは無事逃げおおせ、ガンで病死(83歳)、ユングも85歳で天寿を全う。

    映画は、ザビーナは優しい男性と出会い結婚するも、ユングは新しい愛人を作り…というところで終わる。真面目で誠実な医師であり夫であったユングが、どんどん人として堕落していく物語だったように思える。ザビーナは前半はいかにもヤバい人ぽかったが、ユングを利用してどんどん立ち直り、最終的にはユングのほうが病んでる人のようになってしまった。皮肉。

  • キーラナイトレイの演技が強烈ですね。彼女は歳を重ねるほどに綺麗になっていくなぁ〜本作では精神を患う患者の役だけど、その突拍子のないキレっぷり目の動き震える唇などで観ていて驚かされますが、とても綺麗です。
    面白いです。フロイトとユングの夢や深層心理に関するディスカッションが非常に興味深い!
    彼女が使っているノート、モレスキンですね〜1900初頭にはすでに使われてたんですね。こういう発見も映画の醍醐味です。面白いなぁ〜
    学術的な探求心と社会的な倫理や正義という抑制と動物的な本能としての快楽追求。二律背反する行動原理を紐解く為に葛藤する。
    こう言葉の掛け合いが面白い作品は滅多にありません。非常に知的好奇心を刺激する物語もなかなか出会えません。面白いです!
    精神的な相互理解と肉体的な相互理解。その双方が重なり合う相手と出会いながらも世間がそれを許さない…こんな不幸は有りませんね。胸が痛みます。

  •  ユングとフロイトとザビーナ・シュピールラインの三角関係。
     私はザビーナ・シュピールラインを知らなかったのでフィクションなのかと思いながら見ていましたが、実話に基づくようです。
     葉巻派のフロイト、パイプ派のユング、紙巻タバコ派のオットー・グロース。
     タバコに対する姿勢も三者三様。
     ついでにザビーナは水煙草でも吸ったらよかったのに。それともザビーナは嫌煙家?
     衣装やインテリアや風景がレトロで美しい。
    「三丁目の夕日」でも「漂白された過去」と批判があったように、当時のスイスやウィーンもそんな綺麗ごとだけではなかったでしょうが。
      https://diletanto.hateblo.jp/entry/2019/10/11/064353

  • 冒頭のキーラ・ナイトレイの演技に引っ張られ、その後はユング、フロイト、ザビーナ、それぞれの考え方、生き方に夢中になった。
    フロイトは自分の唱えている説に少しでも弱さを入れれば、時代的にも、一気に叩かれ、自分の地位と名声が失われるのを恐れて、あまりにも極端な説を唱えていたのかなと思った。
    その反面ユングは妻がお金持ちだから、多様な考え方を取り入れてもお金に困ることはなく、自由な考え方ができたのかも。そんなユングをフロイトは羨ましく、腹立だしく思ったのかもしれない。
    ヴィゴモーテンセンがよく演じてたハードボイルドキャラから抜けて、貫禄あり自信に満ちた役で、ゆっくりと老人のように喋っていて味が出ていた。

    性と死の考え方は、ザビーナのほうに近い考えを持った。宗教学が入るのは、時代背景だったのだろうか。
    この当時って宗教が医学にかなり関与していたのかな…?
    ザビーナのようなマゾヒズムは生まれつき、あるいは4歳までの両親の生活を無意識に観ていて影響されていたのか。。

    フロイトが言ったように100年後の今も、別の方向でよく批判されるフロイトですが、やっぱりすごい人でした。
    この映画はユングのお話ですが、それぞれに面白いです。

    少しゆっくりと会話の内容を飲み込めば楽しめると思う。私は心理学をかじった程度にしか知識がなかったので、あまり事実関係や背景は知らないのですが、楽しめました。
    精神疾患や性表現が苦手な人には全く面白くない映画だと思います。
    あと、キーラのは噂通り小さかったです。パイレーツで着てたコルセット、相当痛かったんだろうなあと思いました。
    それと、字幕は難しかったんだろうけど、分かりづらすぎると思いました。英語と比較して内容飲み込むのに必死でした。

  •  あまりに有名な心理学者フロイトとユング。元患者の研究者ザビーナ・シュピールラインとユングの禁断の恋を中心に二人の確執を描く。

     なんというか俗っぽい感じになってしまってる印象を受ける。
     ただ、事実は小説よりも奇なりで、映画ではフロイトが治療を依頼した元医師の患者に性に自由に生きることを説かれて、ユングがザビーナと一線を超えてしまうのだが、「ザビーナ・シュピールラインの悲劇」によれば、ユングはこの元医師に会う前からザビーナと愛人関係にあり、元医師の言葉で一夫多妻制を主張し妻にザビーナとの共同生活を提案したというのだから、映画より事実の方がすごい。
     
     全体的に一般にはとっつきにくく、専門の人には浅いような印象を受けた。「ザビーナ・シュピールラインの悲劇」を読むきっかけにはなった。

  • 意外と好きな作品、かも。
    言い切るのは抵抗ある。

    はじめ、めっちゃ病的だったザビーナが、最後はしっかりした妻、母になって、反対にユングがヘロヘロで可哀想だった。
    会話はすごく難しい。
    ちょっと何言ってんのかわかんない。

    ザビーナの白いブラウスと細いウエストが
    萌えだな、と平和なこと考えてた。

  • 心理学者フロイトとユングの交流、確執を描いたドラマ。この2人の実際を映像化した作品はたぶんないと思うので貴重な作品。クローネンバーグ作品としての期待(特殊メイクなど)はしないほうがよいです。

  • 2011年の映画だが、立花隆がエッセイでくわしく紹介していたのを最近読み、興味を抱いて観てみた。

    主人公は3人。
    ユングとフロイト、そして、ユングの精神分析の最初の症例として知られる女性――ザビーナ・シュピールライン。

    ユングが勤める病院に、ザビーナはヒステリー症患者として担ぎ込まれてくる。ユングは、フロイトが開発した「談話療法」を、本を読んで見よう見まねでやってみる。そして、彼女の心の奥底にあったヒステリーの根本原因を見抜き、治療を果たすのだった。

    そのことを契機に、ユングはフロイトと出会う。そして、一時期はフロイトに後継者として見込まれるほど、深い師弟関係になる。

    だが、ザビーナとユングは不倫関係に陥ってしまう。フロイトも巻き込んでの2人の関係が、ストーリーの核となる。

    フロイトとユングがのちに袂を分かったことはよく知られているが、それは学問上の意見の相違が原因と考えられていた。じつは、ユングとザビーナの不倫関係がもう一つの要因だったのだ。
    それは、1977年にザビーナが遺した手紙(ユングやフロイトとやりとりしたもの)や日記が大量に発見されて、初めてわかった事実だった。
    この映画には、それらの事実がそっくり盛り込まれている。「ユングとフロイトの出会いから決裂まで」という精神分析史に残る物語に、新たな光を当てる映画なのだ。

    序盤のキーラ・ナイトレイ(ザビーナ役)のヒステリー症演技が、強烈な印象を残す。美人が台無しのすさまじい演技で、やりすぎ感も漂うのだが、それも診療記録の忠実な再現なのだという。

    のちに優れた精神分析医になったザビーナは、祖国ロシア(ソ連)に帰り、精神分析を広めた。が、ナチスのソ連侵攻に際して、2人の娘とともに銃殺されたという。なんと数奇な人生を歩んだ女性であろうか。

    映画はエロティックでありながらも美しく、ユングやフロイトに多少なりとも興味があれば面白く観られるだろう。

  • 男と女でどう見えるのか違うんだろう
    最終的には治療終えた様子だけど、
    医者たちが自身をもっと律したなら、彼女もただの患者としてあれたろうに。

    けどそれでも誰もが人

  • ユングとヴィゴ、個人的に"ごちそう"の作品です

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