鏡の中にローラ・スメットが現れるところが、映画的なクライマックス。後は、ああでもない、こうでもないと、夢と現実が入り交じって、ガレル節が炸裂し、映画は終わる。
【ストーリー】
パリ。若き写真家フランソワ(ルイ・ガレル)は、女優キャロル(ローラ・スメット)のアパルトマンを訪れ、バルコニーで撮影を始める。急にキャロルの体調が悪くなり中断するも、翌日に改めてホテルの一室で撮影を再開する。
ベッドに横たわり、フランソワを見つめるキャロル。キャロルの表情を撮り続けるフランソワ。その瞬間にふたりは激しい恋に落ちた。
ある日の早朝。キャロルの部屋で2人が寝ていると、突然、呼び鈴が鳴り、キャロルの夫が帰ってきた。フランソワは洋服を持ちリビングに隠れ、キャロルが夫を寝室に迎えいれると、急いでその場から逃げ去った。
街角で男友達と偶然に出会ったフランソワは、キャロルが自宅へ火を放ち、精神病院に入院していることを知らされる。後日。退院したキャロルとカフェで落ち合ったフランソワは、他につき合っている人がいることをキャロルに伝える。
キャロルは悲しみを抑えきれず、真夜中、酒を浴びるようにひとりで飲んでいる。バスルームに行き、棚にある薬を手当たり次第に飲み干す。よろめきながらもフランソワのもとへ向かおうと玄関へと歩く。
墓地。墓石には「キャロル・ヴァイスマン1982―2007」と刻まれている。フランソワは、墓石の写真を撮り、その場にしゃがみ込む。
1年後。エヴ(クレマンティーヌ・ポワダツ)から妊娠を告げられるフランソワ。動揺するフランソワの姿に不安を覚え、エヴは思わず泣きだす。メトロの入り口で、ベビーカーを押す母親に手を貸し、捨てられた子猫を撫でるフランソワ。何かが彼の中で変わり始めていた。
そんなある日、部屋でフランソワが鏡を覗いていると、そこにキャロルの姿が現れる。
生と死、夢と現実を超越する激しい愛をモノクロームの映像で紡ぎ出す「恋人たちの失われた革命」のフィリップ・ガレル監督作。撮影は「ランジェ公爵夫人」のウィリアム・ルプシャンスキー。出演は「恋人たちの失われた革命」のルイ・ガレル、「ゼロ時間の謎」のローラ・スメット、「マリー・アントワネット」のクレマンティーヌ・ポワダツ。