彼女たちの売春(ワリキリ) (SPA!BOOKS) [Kindle]

著者 :
  • 扶桑社
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感想・レビュー・書評

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  • 出会い喫茶や出会いサイトを中心にして、組織に属さずに個人売春する女性に多数インタビューしてその背景を切り取った力作。愚直とも言える「非効率的な」方法論を取り、2年以上かけてやっと書けた作品。これだけでも立派なエスノグラフィー社会学です。
    現代の個人売春に関して、これだけのものはもう出ないだろうなと思わせるのは、その眼差しによるところが大きいと思う。ウエメセでも、同情でもない、純粋な好奇心(というかプロ根性)で迫った筆者に拍手。
    特に秀逸なのは本書の中核である「出会い喫茶」の創業者である関西のおっさんへのインタビュー。また、このおっさんがけったいな人で、風俗関連で無茶苦茶に悪いことをしてたかと思うと、結構真面目に風俗に来るような女性の居場所を作ろうとしたあとが伺える。
    こんな二律背反もあれば、インタビューを受ける女性の二律背反も甚だしい。やっぱり人間ってそう単純なもんじゃないんだよな、という当たり前のことを再発見したり。
    ただ、著者も書いてるけど、やはりこういう場は必要「悪」なんだよね。こういう仕事が必要とされるホントの原因は、貧困だったり、家族による虐待だったり、非正規労働の不安定さだったり、もっと大きくくくれば、日本という社会の住みにくさ(特に女性にとっての)なんだろうね。
    そういう意味では、一見社会や経済や政治の中核とは無関係に見えて実はびっちりと繋がってるっていうオチを外してないところもさすがですね。
    この本が売れたのもよくわかります。お薦め。

  • 大阪の出会いカフェの原型創業者のインタビューが興味深かった。
    出会い喫茶は、選択肢がなく売春をする女の子に向けてつくられた「今よりマシ」な売春方法で、実際に女の子がそのようなメリットを感じている事。

    「n個の社会問題の数だけn個の処方箋、n個の排除の数だけn個の包摂を。売春男に彼女達を抱かれることをやめたいなら、社会で彼女たちを抱きしめてやれ。そうすれば、事態は幾分、マシになる。彼女達の売春、それは僕たちの問題でもあるのだ」


    ワリキリをする女性たちの言葉。
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    「自分のような人間にでも役立つことのできる『社会奉仕』」
    「それでおこられず、許してもらえるなら」
    「あくまで人脈を広げるための修行」
    「心からありがとうって言われたい」
    「ここしか、居場所がないから」
    「ホント、悪循環です。頑張ってるんですけど、なかなか、空回りな感じで。仕事が見つかれば、すべて解決するのに」
    <<

    「売春、それは僕たちの問題でもあるのだ」と最後に書かれているが、この立ち位置やところどころにあるいたわりのおかげで、「職業としてのAV女優」よりは、読むのが辛くなかった。

著者プロフィール

1981年生まれ。評論家。メディア論を中心に、政治経済、社会問題、文化現象まで幅広く論じる。NPO法人ストップいじめ!ナビ代表理事。ラジオ番組『荻上チキ・Session-22』(TBSラジオ)メインパーソナリティー。同番組にて2015年度、2016年度ギャラクシー賞を受賞(DJパーソナリティー賞およびラジオ部門大賞)。

「2019年 『ネットと差別扇動』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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