千年の愉楽 (河出文庫) [Kindle]

著者 :
  • 河出書房新社
3.80
  • (1)
  • (3)
  • (0)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 12
レビュー : 1
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (203ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 路地=被差別部落の人々の生き様を、文盲の産婆オリュウノオバの視点からは捉える短編集。
    「岬」「枯木灘」と読んでこれで3冊目だが、中上健次の凄さがだんだんとわかってきたように思う。
    日本の近現代文学において伝統的であった私小説の形式とは一線を画していて、どちらかといえば海外文学に近い。中上健次といえばフォークナーを無視することはできないが(正直なところそちらは未読なのでよくわからない)、今作についてはそれにくわえてガルシア・マルケス的な要素も色濃く、3話目くらいからはマジック・リアリズムのような展開を見せる。そういう個人の内面的ありようをひたすら掘り下げていくことを志向する私小説と異なる方向性。
    その一方で、日本的でローカルな描写が執拗になされる。日本の近現代の歩みの中で重要な位置を占めながらしばしばタブー視されてきた路地というものをひとつの舞台設定として選択し、そしてそれを生き生きとそしてどこまでも陰鬱に活写している。そして、そこで伏流水のように脈々と流れる血の因縁と束縛。極めて日本的な世界観が描写される。
    海外文学的であり純日本的でもあるという両者が高い水準で統合されていること、これは他の作品とは決定的に異なる点だと思う。

全1件中 1 - 1件を表示

プロフィール

1946年和歌山県生まれ。74年『十九歳の地図』でデビュー。76年『岬』で芥川賞、77年『枯木灘』で毎日出版文化賞、芸術選奨新人賞を受賞。他の作品に『千年の愉楽』『地の果て 至上の時』『日輪の翼』等。

千年の愉楽 (河出文庫)のその他の作品

中上健次の作品

外部サイトの商品情報・レビュー

ツイートする